福島原発 生業訴訟など4訴訟 最高裁は国の責任認めず 原告「到底受け入れられない」 不当判決にたたかい決意|全国商工新聞

全国商工新聞

 「国が責任を取らないなら、原発は動かすな」「たたかいは終わりじゃない」―。福島第1原発事故によって受けた被害に対する損害賠償を求める4訴訟(福島〈生業訴訟〉、群馬、千葉、愛媛)の上告審で、最高裁(第二小法廷・菅野博之裁判長)は6月17日、国の賠償責任を認めないとする不当判決を言い渡しました。生業原告代理人の馬奈木厳太郎弁護士が「到底受け入れることはできない」と報告すると、最高裁前で待っていた民主商工会(民商)会員を含む原告団から、怒号と悲鳴が上がりました。

最高裁に入廷する原告団
「たたかいは終わらない」と語る中島孝・原告団長
「被害者の求めに向き合っていない」と批判する馬奈木厳太郎弁護団事務局長

 判決は、原告団が求めてきた最高度の安全性が求められる原発の規制の在り方についての判断を避け、「長期評価」に基づいて国が規制権限を行使したとしても、その対策は防潮堤等の設置が行われる程度で、防潮堤高は東日本大震災で引き起こされた津波高より低い想定だったことを根拠に、事故は防げなかったと結論付けました。
 判決後の会見で、生業原告団の中島孝団長(福島・相双民商)は「今日の判決は、これでもかというくらい無責任だ。放射能に追われ、当てもなく避難したり、地域にとどまらざるを得なかった人たちがいる。生活の苦難は今も続く。それを切り替える判決を期待していた。今日の判決では原発事故を必ず繰り返す」と怒りを表明。「たたかいは終わらない。何度たたきのめされても、立ち上がるのが人間だ。負けたからといって、私たちの暮らしが変わるわけではない」と決意を語りました。
 群馬原告の丹治杉江さん(群馬・前橋民商)は「避難して11年。国と東京電力を追及し、裁判所が事故の原因と責任を明らかにしてくれることが希望でした。本当に残念。原発は、もう動かせない。事故があっても、国は責任を取らないからだ」と訴えました。
 馬奈木弁護士は「判決は結論だけでなく、判断に至る過程も受け入れられない。結果が変わらないから、責任は問えないとするなら、何の教訓も導き出せない。被害者が求めたことに正面から向き合わず、被害の深刻さや規模を踏まえた検討が無いまま判決が出されて悔しい」と述べ、「私たちの社会が、この判決を受け入れるかどうかが問われる」と、今後のたたかいを呼び掛けました。
 東電が「中間指針」に基づいて支払ってきた賠償金は不十分とする最高裁判決は確定しており、今回の判決にかかわらず、政府は中間指針を早急に見直すべきです。原告以外の住民にも賠償範囲を拡大するなど、補償の拡充も求められています。
 生業原告の一人で、郡山民商の七海実会長=建築=は「信じられない、悔しい結果だ。国と東電が一体となって原発を推進してきたのに、国に責任が無いとは、全く納得がいかない。このまま終わらせてはならない。全国の原発で、いつ事故が起きるか分からないし、起きても国は責任を取らないという表明だ。生業訴訟は第2陣の原告を募っており、たたかいは続く。仲間とともに頑張る」と前を向きました。

4訴訟

 「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)、原子力損害賠償群馬訴訟(群馬)、福島第一原発事故損害賠償千葉訴訟(千葉)、福島原発事故避難者裁判・えひめ(愛媛)の4裁判。全ての高裁判決で東電の賠償は不十分と断じましたが、国の責任は判断が分かれていました。

長期評価

 2002年7月、政府の地震調査研究推進本部が公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」のこと。日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの大地震が30年以内に20%程度の確率で発生する可能性があるとしました。

中間指針

 11年8月、原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が原子力損害賠償法(原賠法)に基づいて、「原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針」(同法18条2項2号)として策定。高裁判決で補償対象や補償額などが不十分と断じられました。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから