〇税額計算について
所得金額と所得控除額の計算ができたら、次は所得税額を計算します。所得税額の計算は超過累進税率による総合課税と、比例税率(単一税率)による分離課税があります。
所得税の基本は総合課税による超過累進税率です。これを応能負担原則といい、租税を納める能力に基づき課税する公平な方法です。課税総所得金額(不動産所得や事業所得、給与所得などの総合課税)には、こちらの税率計算を採用します(表を参照)。総合課税によらず分離課税で計算するものは、土地・建物や株式を譲渡した場合など何種類かあります。
総合課税による所得税額と分離課税による所得税額を合計し、その金額から税額控除額を差し引けば、所得税の年税額が計算できます。
〇税額控除について
税額控除でよく使われているのは、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)と配当控除です。
住宅ローン控除の適用要件は、①住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上が自己の居住用であること②中古住宅の場合は建築日から取得日までが20年(マンションなどは25年)以下であることなどです。借入金についての注意点は、契約から返済までの期間が10年以上あることです。繰り上げ返済により、この期間が10年未満となると、その年から住宅ローン控除は受けられなくなります。
また、住宅資金の贈与があった場合の計算、譲渡所得の特別控除と住宅ローン控除の併用はできないことなど注意点があります。
次に配当控除です。配当等の収入がある場合は、①総合課税による確定申告、②分離課税による確定申告、③申告不要のいずれかの方法となります。
配当控除は①の場合のみ適用を受けることができます。なお、少額配当等や上場株式等の配当等(大口株主等が受けるものを除く)は③を選択することもできますが、①により配当控除の適用を受けることもできます。
注意点は、配当等の収入を含めて確定申告することで、住民税の金額に影響することです。住民税が増えれば、国民健康保険料や医療費の窓口負担割合、シルバーパスの交付などに影響が出ることがあります。住民税への影響も考慮して確定申告をすることが必要です。
(税理士・佐々木淳一)