新型コロナウイルス・オミクロン株の感染爆発が続く中、多くの中小業者が経営危機に直面しています。2月4日に取り組まれた「全国中小業者・国会大行動」(主催は全国中小業者団体連絡会〈全中連〉)には、切実な要求を掲げた中小業者やフリーランス、医療関係者、労働者ら約200人が参加。財務省・経済産業省前の抗議行動を皮切りに、衆院第2議院会館前で集会を開き、中小企業庁など6省庁と交渉し、地元国会議員に要請。「コロナ支援策の抜本拡充を」「消費税を引き下げ、インボイス制度実施は絶対中止に」と迫りました。
「不備ループ解消を」と抗議
岸田政権発足後、初めての通常国会が開かれているさなかの大行動。国会論戦で明らかになった、成り行き任せのオミクロン株対策や、国民・中小業者と医療・介護・保育などへの貧弱な支援策などに怒りが広がっています。
衆院議員会館前の集会には首都圏をはじめ新潟、京都、大阪、広島、宮崎などから200人が駆け付け、「消費税5%減税」「インボイス実施中止」「不備ループ解消せよ」などのプラカードを掲げました。
フリーランスも
各団体の代表がリレートーク。出版関係のフリーランスを組織する「出版ネッツ」執行委員長の樋口聡さんは「インボイス制度の実施は中止」と強く訴えました。全中連の集会参加は初めて。「フリーランスの報酬10%アップを求めた春闘宣言がマスコミでも取り上げられ、国会議員とも懇談し、インボイス制度反対の声を届けることができた。出版ネッツに加盟するフリーランスはほとんどが免税事業者。インボイスが実施されると、課税事業者になるか、免税事業者のままで値引きを受け入れるか、選択をしなければならない。誰もが幸せにならない。反対の声を上げていこう」と呼び掛けました。
「課税事業者になって数十万円の売り上げを失うか、取引から排除されるか。この二つしか選ぶことができないことを、選択とは言わない」と切実に訴えたのは、ライターの小泉なつみさん。「STOP!インボイス市民の会」を立ち上げ、イラストレーターやカメラマンらと一緒に、SNSで「十人十色を守れ!STOP!インボイス」と活動を広げています。
「インボイス制度は、発注元と免税事業者が互いに消費税を押し付け合う制度。免税事業者の私から大手出版社に『消費税分を負担してほしい』とは、口が裂けても言えない。人間関係がギクシャクして売り上げも失い、精神的にも経済的にも追い詰められる未来は想像できない」
一方、トヨタ自動車に1年間で4578億円(2020年)もの消費税の還付金が支払われている事実を紹介し、「おかしいとしか言いようがない。私たちの活動を夏の参院選につなげたい」と決意表明。参加者から「頑張れ」と激励が飛びました。
医療に税金回せ
オミクロン株に日々緊張を強いられる開業医の団体、全国保険医団体連合会(保団連)の工藤光輝事務局次長は「日常の診察に加え、ワクチン接種などの要望にも応えてきたが、コロナ関連を含む医療機関の倒産が33件(21年度)発生し、激震が走った」と告発。「それでも、医療にお金を使わないのが岸田政権の姿勢だ。診療報酬は20年間で10%減らされたのに対し、今回の改定では1%にも満たない微増だった。安心して暮らせる社会をつくるため、まずは消費税減税、インボイス制度実施中止を求めたい」
コンビニなどのフランチャイズ加盟店を組織する「全国FC加盟店協会」副会長の近藤菊郎さんは、「FC契約終了後も店名を変えて営業を続けた元調剤薬局加盟店に対し、本部が違約金を求めた裁判で、2年間の競業を禁じたFC契約そのものが公序良俗に反し無効だと加盟店が勝訴した」と報告。「画期的判決だが、まだまだ理不尽なFC契約の奴隷になっている加盟店が多い。加盟店を保護するFC法の制定を」と訴えました。
大阪・東淀川民主商工会(民商)の西野賀重子さん=金属卸=は「父の後を継ぎ、金属卸を営んでいる。コロナ禍で売り上げが減った人の相談に乗ってきた。コロナ禍で苦しめられ、国の無為無策にも苦しめられている時に、軍事費やカジノですか?税金は苦しむ国民、中小業者に使ってほしい」と切望しました。
全国労働組合総連合(全労連)の秋山正臣事務局次長は「春闘では月額2万5千円以上の賃上げを掲げ、不況打開には、労働者の賃金を引き上げて経済を循環させることが必要」と強調。「“中小企業も労働者も元気”になり、地域の活性化へ、共に頑張りたい」と決意を語りました。
怒りや不安集め
集会では、全中連の太田義郎代表幹事(全商連会長)が主催者あいさつ。「岸田内閣は科学を軽視し、専門家から冬には感染者が増えると言われていたのに、何もやらなかった。予算では軍事費を増やす一方、保健所は減らしたまま。インボイス制度によって161万免税事業者が廃業の危機に立たされる。消費税は減税、インボイス実施は中止。心一つに頑張ろう」と呼び掛けました。
れいわ新選組の舩後靖彦参院議員がオンラインで連帯あいさつし、日本共産党の倉林明子参院議員が激励に駆け付け、提出された消費税減税を求める署名など11万人分を受け止めました。
大行動には、出版関係の団体、京都の料飲組合や商店街振興組合、建設労働組合、山形の豆腐納入組合などから賛同が寄せられました。
初めて参加した大阪府河南町の中祐紀さん=自動車販売=は「一時・月次支援金の『不備ループ』から抜け出せず、頭にきて国会に駆け付けた。給付金事務局の言うことも一人一人違い、分かりにくい回答ばかり。同じ思いの人がいることを知り励まされた。仲間と一緒に乗り越えたい」。
埼玉県熊谷市の杉山正春さん=屋根工事=は「コロナ禍で大変な時期だからこそ、意思表示が必要と参加した。何も行動しなければ、インボイス実施や憲法改悪などが、すんなり通ってしまう。感染の急拡大で人数は限られていたが、同じように怒りや不安を抱えた人が集まり、大きな声になったと感じた」と確信を深めていました。