次号から全14回の予定で連載する「確定申告のワンポイントアドバイス」に先立ち、事業者に影響の大きい税務のポイントを解説します。
①今年の10月から事業者登録が始まっていて、2023年10月に開始が予定されている、いわゆる「インボイス制度」について
消費税法でいう「インボイス」というのは、「適格請求書等」のことをいいます。適格請求書等というのは、これまでの請求書に税務署長から指定された登録番号を記載したもので、この「適格請求書等」に該当しない請求書や領収書では「仕入税額控除」ができなくなるというもの。
具体的に何が問題になるかを説明します。
「適格請求書等」は、消費税の課税事業者でなければ発行できません。そのため、支払先の事業者が適格請求書等発行事業者でない場合には、これまで控除できていた消費税相当額が控除できなくなりますから、元請け事業者は「増税」となります。
元請け事業者が今まで通り「仕入税額控除」をするには、下請け事業者に適格請求書発行事業者の登録をしてもらい、適格請求書等を発行してもらわなければなりません。そうすると今度は、年間売り上げ1千万円以下の下請け事業者が消費税を納税しなければならなくなります。
財務省等は、インボイス制度の目的を「適正な税率と税額の把握」としていますから、簡易課税制度についても廃止に追い込まれる恐れがあります。
インボイス制度は、税率をアップすることなく、消費税の仕組みを変えた増税です。今年の10月から事業者登録が始まっていますが、登録申請についてはしばらく情勢を見極めながら、まずは中小事業者の経営を破壊するインボイス制度の実施中止を求めていきましょう。
②22年1月より変更される電子帳簿保存法について
電子帳簿保存法の変更点について説明します。電子帳簿保存については、今までは税務署長等の承認を受けなければ行うことができませんでしたが、変更後は税務署長等の承認なく電子帳簿保存を行うことができるようになります。そして、22年1月からは、電子取引で行われた請求書等については「電子データで保存しなければならない」とされました。
つまり、請求書や領収書が電子データで送られてきた場合には、これらをプリントアウトしたものは、所得税法などでいう「領収書等とはみなさない」という乱暴な制度となりました。国税庁は「青色申告承認取り消しにもなり得る」という見解を示し、一部の専門家もこれを追認しています。
しかし、よく考えてみてください。「千ある取引のうち、10の電子取引が電子保存されていないから、帳簿保存に不備がある」とは到底言えません。過剰な反応はせず、取引相手と十分に相談し対応することが重要です。