介護事業者倒産が過去最多 暮らし優先予算で介護報酬戻せ|全国商工新聞

全国商工新聞

 今年は、介護保険制度の開始から25年の節目です。社会保障予算を限界まで縮小するために、家庭内の自助を強力に推し進めた自民党政治の下、限界を迎えた「日本型福祉社会」の矛盾を補い、介護を「家族で担う」から「社会全体で担う」に変える画期の制度と位置付けられて発足しました。しかし「持続可能性」の名の下に、加入者には保険料値上げと負担増、給付減、地域で訪問介護などを担う小規模事業者らには報酬を低く抑えてきました。今や「保険あって介護なし」「国家的詐欺」とも言われ、必要な人に介護が届かないのが現状です。
 2024年の介護事業者の倒産が過去最多の172件(前年比40・9%増)に達しました(東京商工リサーチ調査)。休廃業・解散も、昨年の2割増となる621件で、これも最多です。業種別に見れば、訪問介護、デイサービスなどの倒産が多く、その背景には昨年4月の訪問介護基本報酬の削減(マイナス2~3%)があります。元々、「主婦のパート」を当てに始まった制度は報酬が低く、人手不足に拍車がかかっています。
 深刻なのは個人企業、小・零細事業所など資本金1千万円未満の倒産が143件(全体の83・1%)に上ることです。中小の事業者は清掃、洗濯、調理などの「生活援助」を多く提供し、地域への貢献度も高く、影響が広がっています。
 訪問介護事業者が空白となる自治体が増えていることも重大です。「しんぶん赤旗」の調査によると、訪問介護事業所がゼロの自治体が107町村、残り1事業所の自治体が272市町村です。「団塊の世代」が75歳を迎え、”介護難民”が懸念されます。訪問介護の崩壊は地域の衰退にもつながります。
 5年間で43兆円もの大軍拡予算が、国民生活を圧迫しています。暮らし優先の予算に切り替えて訪問介護報酬を元に戻すことは50億円で可能であり、急いで対応が求められます。
 現在、検討されている介護利用料負担の2割化対象の拡大などを中止し、安心して使える介護保険制度への改善が待ったなしです。国民、中小業者の声を国会に届け、夏の参院選で、暮らし優先の政治を求め、自民党政治に審判を下しましょう。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから