2025年度政府予算案㊤ 中小対策は1億円増のみ”トリクルダウン”転換こそ|全国商工新聞

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 2025年度政府予算案は4日、自民、公明の与党と日本維新の会が賛成して衆院本会議で可決されました。一般会計総額は過去最大規模の115兆1978億円です。
 予算案では、半導体関連企業に1.3兆円もの補助金を大盤振る舞いする一方で、中小企業対策費は1695億円と、24年度当初予算に比べわずか1億円の増額にとどまり、一般会計歳出に占める割合は0.2%ほどに過ぎません。24年度補正予算で5899億円を措置していますが、企業数の9割、雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者に対する支援としては、あまりにも少な過ぎます。
 政府は、基本的な課題認識と対応の方向性として、①予算・税・制度改正等の政策手段を総動員し、中小企業・小規模事業者等の飛躍的成長、規模拡大、新事業進出・事業転換、生産性向上・省力化等の投資を促すとともに、中小企業・小規模事業者の持続的な賃上げにつなげ、地域経済の好循環と成長型経済への転換を実現する②物価高、エネルギー高、構造的な人手不足等、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者等に対する価格転嫁対策や資金繰り支援、省力化投資の支援等に万全を期し、持続的賃上げの実現に向けた環境整備を図る③小規模事業者支援、事業承継、社会課題解決等を通じて、地域経済の活性化を図る―としています。
 長引く物価高騰の影響に苦しむ中小業者の実態を直視せず、相変わらず新自由主義的な規模の拡大、生産性向上を中心に据えた政策を継続する姿勢です。
 当初予算では、日本政策金融公庫などが行う金利引き下げなどへの対応として223億円を措置しました。認定支援機関が行う経営課題の解決に向けた指導や、事業承継のマッチング支援などの中小企業支援事業に総額263億円などが主な政策となります。
 24年度補正予算では、中小企業生産性革命推進事業に3400億円を充てます。従来から実施されてきた「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「持続化補助金」に加え、新たに”稼ぐ力”を強化し、「売上高100億円をめざす成長志向型の中小企業」に大胆な設備投資を支援する中小企業成長加速化支援事業を実施します。
 「100億円企業」とは24年6月に中小企業庁の研究会が発表したもので、中核となる企業を育成することで、地域全体が潤うだろうという、アベノミクスで失敗済みの”トリクルダウン政策”(大企業や富裕層を優遇すれば、富が低所得層にも滴り落ちるとする説)にほかなりません。
 政府は、小規模企業振興基本法が掲げた「事業の持続的発展」の基本原則に立ち返り、中小・小規模事業者の経営継続のための支援へと根本的に政策を転換することが求められています。

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