
「公正取引委員会(公取委)が、損保会社が代理店に対して一方的に定める『手数料ポイント制度(ポイント制度)』を独禁法上の問題があるとして勧告しなかったのは残念だが、独禁法上の問題点は整理できた。健全な損保業界と顧客本位の代理店制度の実現に向け、引き続き声を上げよう」―。損保代理店の主な収入源である手数料が変動するポイント制度が、独禁法の「優越的地位の濫用」に当たるとして、損保代理店経営者らが行った「公取委への申告」結果を報告する集会が2月14日、大阪市内でオンライン併用で開かれ、149人が参加しました。「(株)岩瀬保険サービス」を営む全国商工団体連合会(全商連)の岩瀬晃司副会長をはじめ、損保代理店を営む長野、静岡、岐阜などの民主商工会(民商)会員も参加しました。主催は「損害保険・代理店手数料ポイント制を考える会」。

日本共産党の大門実紀史参院議員があいさつ。「2017年に国会で損保問題を取り上げてから8年がたち、金融庁の対応はかなり改善した。ポイント制度について、公取委が勧告するまでには至らなかったが、無駄なたたかいは一つもない。引き続き不当事例の告発を」と、連帯してたたかう決意を表明しました。
関西合同法律事務所の喜田崇之弁護士が、弁護団を代表して報告。多くの損保代理店が「ポイント制度ノー」と突き付け、独禁法上の問題点(①挙績・増収率を理由としてポイントを減額すること②規定を一方的に変更すること)を整理できたことなど、「申告」の意義を確認。「情勢の変化で公取委の判断が変わることもある」と述べました。
同会世話人で、兵庫県立大学客員研究員の松浦章さんが基調報告。公取委の通知は、手数料ポイント制度を決して正当化したものではないと強調しました。「申告」の第2弾や、民法上の観点からの検討など、次の運動の模索が始まっていることを紹介し、「地域に密着した代理店が将来の展望を失えば、損保会社自身もセーフティーネットの役割を果たせない。引き続き、健全な損保業界を求めるチャレンジを」と呼び掛けました。
岩瀬副会長がフロアから発言。「保険会社の『優越的地位の濫用』を正すために、公取委への申告人の1人として、たたかってきた。今回の結果は残念だが、地域の損保代理店が営業を成り立たせ、顧客本位のサービスを提供してしていくためにも、これからも声を上げ続けたい」と決意を語りました。
手数料ポイント制度
損保代理店の主な収入源である損保会社からの手数料が、損保会社が定める基準によって一方的・大幅に変動する制度。以前は、一定の基準を満たせば一律で約20%だった手数料が、基準手数料にポイントを乗じて手数料額が決まるようになった。ポイントは20~130と大きな格差が生じている。
損保代理店による公取委への「申告」
2023年7月、ポイント制度は、損保会社の代理店に対する「優越的地位の濫用」に当たるとして、損保代理店経営者と従業員、損保会社社員ら264人が合同で公取委に行った申告。追加申告人が相次ぎ、総勢286人となり、「過去に例がない」(公取委担当者)規模の集団申告となった。申告人のうち、6代理店の具体的事例の事件調査となったが、公取委は24年12月、「これまでの情報では、独占禁止法上の問題とすることは困難ですので、措置は採りません」とする通知書を弁護団に送付した。2月、弁護団は公取委に不服申入書を提出した。