4月から、改正された建築基準法と建築物省エネ法が完全施行されます。2022年に建築物省エネ関連法が改正されたことに伴うもので、原則として、全ての建築物に省エネ基準への適合が義務付けられます。これに伴い、今まで特例で除外されていた小規模木造建築物への建築確認申請も一部を除いて義務付けられます。地域の住環境を支えてきた中小建設事業者への影響も少なくありません。今回の改正のポイントをQ&Aで解説します。
中小建設業者にも影響 Q&A解説
Q1 建築基準法と建築物省エネ法の改正でどう変わるの?
A1 確認申請不要の「4号」が廃止
改正建築基準法では、従来の「4 号建築物」が廃止され、「新2号建築物」と呼ばれる建物が新たに追加。建築基準法に適合しているかどうかを審査する「確認申請」が不要だった建物(いわゆる「木造2階屋」)でも、申請が必要になります(図1)。
改正建築物省エネ法では、全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられます。既存住宅の増改築を行う場合も適合義務の対象になります。
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Q2 建築確認申請が必要なのはどんな建物?
A2 木造2階屋と平屋(延べ面積200㎡超)
これまで、旧4号建築物(階数2階以下で延べ面積500平方㍍以下の木造建築物)を都市計画区域内などに建てる際に、建築士が設計・工事監理を行う場合は建築確認審査が一部、省略されていました。また、都市計画区域外の場合は、建築確認の対象外でした。
改正法で規定する「新2号建築物」は、全ての地域で、階数2階以上の木造建築物は確認申請が必要になります。
確認申請の際には、建築基準法で定められている現行最低限の耐震基準(耐震等級1=震度6強~7程度の地震で倒壊や崩壊しない)を満たす、構造関係規定等の図書の提出が必要になります。
階数2階以下で延べ面積300平方㍍以下の木造建築物の場合、各階床伏図などに代えて、使用表に必要事項を記載することで図書の省略ができます。完了検査の際に、省エネ基準への適合確認が必要となります。
Q3 建築確認や省エネ基準適合が要らない場合はあるの?
A3 「新3号」の建築確認などは不要
「新3号建築物」(平屋かつ延べ面積200平方㍍以下)に限って、建築確認は必要ありません。
省エネ基準は① 10平方㍍以下の新築・増改築②居室を有しない、または高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がないもの③歴史的建造物、文化財等―には適合義務がありません。
Q4 義務付けられる省エネ基準ってどんなもの?
A4 外皮性能と一次エネルギー消費
住宅の省エネ基準は外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準です(図2、3)。外皮性能基準は、室内と外気の熱の出入りのしやすさを表す指標「UA値」と、太陽日射の室内への入りやすさの指標「ηAC値」で構成され、外気温や住宅の使用設備などを基に全国8の地域区分別に規定されている基準値以下になることが必要です。外皮性能の算出には(一社)住宅性能評価・表示協会のホームページ上の計算シートが活用できます。
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一次エネルギー消費性能は住宅の設計上の一次エネルギー消費量を地域や建物の用途・使用条件で定められている基準消費量で除した値である「BEI値」で判定され、1.0 以下になることが必要です。国立研究開発法人建築研究所のホームページ上のWebプログラムで算出が可能です。
Q5 木造戸建てのリフォーム工事の確認申請は?
A5 大規模なリフォームなどは必要
4月以降着工する「フルリフォーム」や、家の骨組みだけ残して行う「スケルトンリフォーム」など、大規模な修繕や模様替えとなる工事に際しては確認申請が必要となります(図4、5)。
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「大規模な修繕」とは、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上を、過半(2分の1超)にわたり修繕することです。修繕とは、経年劣化した建築物の部分を、既存のものと、おおむね同じ位置に、ほぼ同じ材料、形状、寸法のものを用いて原状回復を図ることです。
「大規模な模様替え」とは、模様替えをする建築物の部分のうち、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上を、過半(2分の1超)にわたり模様替えすることです。模様替えとは、建築物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲で改造することで、一般的には、改修工事などで原状回復を目的とせずに性能の向上を図ることを言います。
Q6 改正法で、どんな影響が考えられるの?
A6 業者や施主に負担増、受注減も
新2号建築物の建築確認の流れは①建築主からの建築確認申請・省エネ適合判定申請書の提出②行政庁からの省エネ適合判定通知書の交付③建築主事などによる確認審査④確認済証の発行⑤着工⑥(必要に応じて)中間検査⑦計画変更があった場合は再度、省エネ適合判定を行う⑧竣工⑨建築主事などによる完了検査・省エネ適合の検査⑩検査済証の交付⑪使用開始―です。
これまで建築確認の必要がなかった新築工事やリフォーム工事が、新たに対象に含まれたことで、建築事業者は新たな事務負担を負うことになります。
また、施主にとっても、これまで不要だった図書の準備のため、建築士への依頼などによる費用の増加や、確認検査に要する時間が引き渡し時期を遅らせてしまうことなどが考えられます。
地球温暖化や地震など災害の頻発を考慮すれば、住宅の性能向上は避けて通れないものです。
一方で、空き家問題の解決などにつながる住宅リノベーションや、地域建築市場の中核をなすリフォーム工事に改正法を機械的に適用した場合、施主の工事控えによる中小業者の受注機会の減少につながりかねない面があります。
地域の建築業者の経営はもちろん、地域経済や住民生活の向上のためにも、各自治体で住宅リフォーム助成制度の創設や拡充を図るなどの対応策が求められています。