今年は、5年に1度の公的年金制度「改正」の年に当たり、政府は関連法案を通常国会に提出します。
厚生労働省は1月24日、2025年度の公的年金の改定率を前年度比1.9%に引き上げると発表しました。しかし、昨今の物価高騰や賃金上昇の水準よりも下回っており、実質的に目減りします。本来ならば、前年の物価の伸びに合わせて改定すべきですが、将来の年金財政の安定を口実に発動される「マクロ経済スライド」により、改定率が低くなります。
全国商工団体連合会は第56回定期総会で決議した「私たちの要求」で、「年金給付の削減を目的とした『マクロ経済スライド』の中止」と「国民年金の支給額を月14万円に引き上げ」るなどを掲げ、安心して老後が暮らせる年金制度を確立することを求めています。
政府は、年収106万円を超えると社会保険の加入義務が生じる「106万円の壁」と従業員数51人以上とする加入要件を撤廃する方針です。そうなれば、週20時間以上働いた場合は、厚生年金に加入しなければなりません。併せて、厚生年金に加入することで生じる労働者の手取り減少分を、企業が任意で肩代わりする仕組みも検討しています。不況による売り上げ減や物価高騰による収益減により、今でも高過ぎて払えないと悩む社会保険料の負担がさらに増えることは、体力の無い中小企業にとって死活問題です。今回の改正では、従業員5人未満の個人事業所への適用拡大は見送られて加入対象となりませんが、5年後の改正で対象とされる危惧は依然として残ります。
2025年度の予算案では、”禁じ手”である国債を乱発させながら軍事費を約8.7兆円まで膨らませ、半導体の大企業への支援は補正予算と合わせて約1.9兆円にも上ります。一方で、社会保障については高齢化などに伴う自然増を1300億円も削減する逆立ちぶりです。安心して老後が暮らせる年金制度を確立させるためにも、アメリカ言いなりの大軍拡や、企業献金の見返りの大企業優遇をやめさせ、社会保障拡充や最低賃金引き上げなどに予算を回すことこそ必要です。国民の暮らしや中小業者の生業を応援する政治に変えましょう。