「物価高で暮らしも、営業も大変!今すぐ消費税を引き下げよ」「基礎控除を抜本的に引き上げ、生活費に課税するな」「消費税のインボイス(適格請求書)制度が廃止されるまで、諦めない」―。中小業者の切実な声が5日、国会周辺に響き渡りました。全国中小業者決起大会が、東京・砂防会館(千代田区)で開かれ、全国から700人が最強寒波や大雪を突いて集結しました。主催は全国中小業者団体連絡会(全中連)。米価高騰と品不足にあえぐ米穀商や、インボイスの負担に苦慮する中小出版社に個人タクシー、マイナ保険証強要で混乱する開業医や歯科医…。中小業者がさまざまな要求を持ち寄り、国会周辺をデモ行進しました。大会に先立ち9省庁などと交渉し、国会議員要請に取り組みました。
全中連決起大会に700人
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「押せ、押すんだ!収受印」―。大阪の参加者はビニール製の自作「収受日付印ハンマー」を振りかざし、国税庁が強行した確定申告書控えなどへの収受日付印の押印廃止に怒りを表明し、デモ行進しました。
決起大会では、壇上からの「インボイスを廃止させよう!」の訴えに「オーッ!」と力強くレスポンス。日本の基礎控除額48万円が欧米の200万円程度と比べて低過ぎることが明かされると「エーッ!?」と驚きの声が、あふれました。「基礎控除額を抜本的に引き上げ、生活費非課税の実現を」の訴えに「そうだ!!」の声が上がりました。
業界超えて団結
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オープニングイベントで歌手の川口真由美さんは6曲を歌い、「生活費も高い、教育費も高い。私も苦しんでいます。集会、デモに、私も心一つ。みんなで、世の中良くしようね」とエールを送りました。
全中連の太田義郎代表幹事(全商連会長)が主催者あいさつ。「生活費に税金をかけないのは、普遍的な原則だ。それなのに、日本の基礎控除額は国際的にも低水準で、さらに消費税が課せられ、中小業者は苦境にあえいでいる。業界を超えて団結し、要求を一歩、一歩実現しよう」と呼び掛けました。
全労連の秋山正臣議長と「インボイス制度を考えるフリーランスの会」(STOP!インボイス)の小泉なつみさんが激励あいさつ。大会に賛同した業界団体から、日本米穀商連合会専務理事の相川英一さん、インボイス制度の廃止を求める税理士の会の湖東京至税理士、日本出版者協議会会長の水野久さん、東京個人タクシー労働組合執行委員長の秋山芳晴さんが、あいさつ。全中連加盟団体から、全国保険医団体連合会副会長の森元主税さん(歯科医)、全国FC加盟店協会の河井章会長が決意表明しました(それぞれ、下の別項に要旨)。
声上げ道開こう
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各地の発言では、石川県の参加者が「輪島の中小業者50人のうち30人がすでに廃業したか、廃業予定だ。地震と豪雨による被災業者に対し、一番即効性のある支援は消費税減税だ。”元気をつけ、元気をため、元気を出せる消費税減税”を実現させましょう」と訴えました。
岩手県の参加者は、達増拓也・民主県政が実現した物価高騰下で賃上げを行う中小企業への直接支援策を紹介。「”国がしないなら、県がする”の気構えで実現した政策だ。岩手ででき、他県でできないわけがない。まさに『たたかってこそ商売繁盛』だ。力を合わせよう」と呼び掛けました。
埼玉県の参加者は、埼玉県議会が昨年12月、自民党の主導で「インボイス廃止を国に求める意見書」を採択したことを紹介し「消費税の廃止を求める埼玉連絡会などがインボイス廃止を求め続けてきたことが、自民党をも動かした。インボイス廃止への扉は開いた。各地で運動を強め、インボイスを廃止させよう」と訴えました。
「次の参議院選挙で衆議院同様に与党が少数になれば、中小業者・国民を苦しめる政治に終止符を打ち、国民の声で動く政治への道を開くことができます」とした大会アピールを、満場の拍手で採択しました。日本共産党の小池晃参院議員が国会情勢を報告。倉林明子、伊藤岳、岩渕友の各参院議員(いずれも共産)も駆け付けました。
決起大会 登壇者の発言(要旨)
地域経済回せ/「楽しい」は文化で
マイナ強要反対/石破政権退陣を
全労連・秋山正臣議長
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新自由主義経済の下で、行政の役割が縮小され、その弊害が大きくなっている。大企業中心の経済ではなく、地域で経済を回す中小企業主体の経済に変えるべきだ。誰もが安心して暮らせる社会をめざし、手を取り合おう。
STOP!インボイス・小泉なつみさん
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昨年の衆院選で、インボイス推進を掲げた政党が議席を大幅に減らした。民意は、確実に私たちにある。私のようなフリーランスや中小業者の尊厳を否定するのがインボイス制度だ。諦めることなく運動を続けていきたい。
日本米穀商連合会・相川英一専務理事
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米屋は、インボイスに加え、HACCP対応の事務も増え「商売を続けられない」との悲鳴が上がる。2千円のコメが4千円になれば、消費税が倍になるような税金は、おかしい。いろんな業種が集まり、声を上げ続けよう。
インボイス廃止を求める税理士の会・湖東京至税理士
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石破首相が「消費税は社会保障の安定財源」というが大うそ。社会保障は切り詰められ、法人税減税などの穴埋めにされたのが真実だ。うそつきは泥棒の始まり。インボイスはつぶさなければいけない。
日本出版者協議会・水野久会長
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出版業界は厳しい。雑誌が売れなくなり、書店がどんどん無くなっている。皆さん、”空気を読まず”に、本を読みましょう。私たちは「楽しい生活」を文化で支える。消費税の減税とインボイス廃止へ、皆さんと連帯します。
東京個人タクシー労働組合・秋山芳晴執行委員長
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”インボイス未登録なら、チケット交換しない”など事業組合が運転手に縛りをかける中で、全商連と出合い、小池晃参院議員(共産)に国会質問していただいた。「インボイスに不安なら、民商に入ったら安心」と勧めている。
全国保険医団体連合会・森元主税副会長
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マイナ保険証の強要に不信が強まっている。「元の保険証に戻せ」の運動を強めたい。高額療養費制度の大改悪に、がん患者らは「治療をやめ、死ねと言うのか」と猛抗議している。私たちの声を聞く政治に変えたい。
全国FC加盟店協会・河井章会長
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トランプ米大統領は自国最優先で保護貿易の政策を掲げ、100年前に先祖返りしたようだ。石破首相は田中角栄譲りの金権政治を脈々と受け継ぎ、米国言いなりに大軍拡をまい進している。一刻も早く石破政権を退陣させたい。
物価高に悲鳴上げる 中小業者に直接支援を 全中連 9省庁などに要求伝え
「2・5全国中小業者決起大会」に先立ち、9省庁などに要請し、全国から61人が参加しました。物価高騰の影響を受ける中小業者への直接支援や消費税の減税とインボイス(適格請求書)廃止、基礎控除や人的控除の抜本引き上げ、確定申告書への収受日付印の押印継続など、緊急・切実な要求実現を求めました。
総務省 滞納者の実情把握を「事務連絡を発出した」
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総務省では、地方税の滞納整理の際に、納税者の事業と生活再建を支援する立場で自治体に相談に応じさせるよう求めました。
省側は「1月22日に自治体に対し、地方税務行政の運営に当たっての留意事項についての事務連絡を発出した。翌日には『滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握し、適正な執行に務め』るよう、都道府県の税務担当課と市町村税担当課、政令市の税制課に連絡した」と述べました。
参加者は「滞納相談で、県の職員から『納税猶予や換価の猶予は一切やっていない』と言われ、差し押さえ時にはビデオカメラで撮影され、警察を呼ばれた」(滋賀)、「『クレジットカードで全額支払え、限度額を超えた分は消費者金融に借りて納税しろ』と言われた」(北海道)など強権的な徴収事例を告発。
省側が「職員対応については、自治体の行政相談窓口や中小企業活性化協議会で相談を」と述べたのに対し、「事務連絡が毎年必要になるのは、不当事例が多数発生しているからだ。省として、滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握するよう強調し、発信してほしい」と重ねて要請しました。
厚労省 紙の保険証復活せよ マイナ保険証に固執
厚生労働省では、診療報酬引き上げや、患者負担を増加させる高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げ中止などを要請しました。
「診療報酬0・88%の引き上げは、急激な物価高に見合っていない。物価に見合う診療報酬改定を」(保団連)と要望。「高額療養費制度について、石破茂首相も『見直しの検討』と口にした。患者の負担増につながらないよう、国民の声を受け止めてほしい」など切実な声が相次ぎました。国民健康保険(国保)では「国保料水準の県内統一は、地域の医療水準を反映していない。住民負担が急激に増大している」(埼玉)、「国保加入者の多くは低所得だ。国や自治体として、国保加入者の実態を詳細につかむべき」(千葉)など、地域の実情に即した対応を求めました。
従来の紙の健康保険証の復活を求めると、省側は「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)のために必要」と強弁。全中連の住江憲勇代表幹事は「マイナ保険証を巡るトラブルで、医療機関や利用者の混乱を招いている」と、厳しく批判しました。
公取委 不公正な取引を正せ 「法改正で執行力を強化」
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公正取引委員会には、下請法改正による取り締まり強化▽インボイス導入による不公正取引の調査と是正▽フランチャイズ問題の対策強化―などを要請しました。
委員会側は、下請法改正について「発注元(元請け)から受注先(下請け)へとコストが押し付けられ、価格転嫁が進まないことが問題」とし、法改正によって執行力を強化すると説明。協議に応じず価格を据え置くことや、手形払いを禁止し、事業者区分に従業員数を追加し、対象業者を広げる方向性を示しました。コンビニオーナーからは、最低賃金の上昇分が全て加盟店の負担とされている実態を告発。委員会側は「2023年11月に内閣官房と共同で発表した『労務費転嫁指針』で、受注者側からの交渉に応じるだけにとどまらず、発注者からも協議の場を設けることが重要と示した。労務費の上昇分は本部も把握すべき。価格交渉をしてほしい」と応じました。
財務省 消費税を引き下げて 「考えていない」と一蹴
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財務省では、所得税の基礎控除や人的控除を抜本的に引き上げ、生活費非課税に▽物価高対策として消費税率を5%に▽インボイス制度の即時廃止▽少額減価償却資産の取得価額の基準金額の引き上げ―などを求めました。
全中連代表幹事の富塚昇さん=製缶・金属加工=は「『103万円の壁』が話題だが、問題の本質は『基礎控除』の引き上げだ。最低生活を保障する水準まで引き上げてほしい」と要にし請。沖縄県から参加した西中間武海さん=建設=は、「インボイス導入後、元請けが消費税分を引いてくる。生活を守るため、中小業者は必死だ。消費税率は引き下げ、インボイスは廃止を」と訴えました。
省側は、業者の声に一切耳を傾けず、消費税減税やインボイス廃止は「考えていない」と一蹴。少額減価償却資産の取得価額については「次の税制改正でしっかりと議論して結果を得たい」と表明しました。
国税庁 収受日付印の押印を 従来の方針変えず
国税庁では、確定申告書控えなどへの収受日付印の押印復活▽税務運営方針の徹底と横暴な税務行政の是正▽納税緩和制度を積極的に適用する▽法に反する「猶予の申請の手引き」の是正―などを求めました。
参加者は、各地で起きている強権的で横暴な税務行政の実態を告発。北海道の参加者は「税務署から詳細な説明を受けないまま、分割納付する知人の保証人にさせられた」。道内の別の参加者は「税務署に分納相談に行った翌日、差し押さえを受けた。こんなやり方が許されるのか」と声を震わせました。
沖縄の参加者は、納税者の自主的判断であるべき予納を、デタラメな理由で強制された事例を昨年告発しましたが「いまだに納得できる説明がない」と憤りました。県内の別の参加者は「税務調査時に尾行や張り込みなど、納税者を犯罪者扱いする調査がされている」と具体例を示し、税務署の姿勢を批判しました。
庁側は「個別の事案についてはコメントを控える」との回答に終始。「毎回の回答になるが、『税務運営方針』は、研修などで職員に広く周知を図っている」と強弁しました。収受日付印の押印について「押印を行わないことに、ご理解いただきたい」との回答を繰り返しました。
内閣府 「臨交金」抜本拡充を 「前年度補正の2割増に」
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内閣府には、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金(臨交金)の抜本的拡充と、定額減税の調整給付金を受けられなかった住民にも給付が行き届くよう自治体に推奨し、予算措置を別途、講じるよう要請しました。
全商連の三戸部尚一副会長は「物価高が続き、宮城県内の休廃業は過去最大になっている。臨交金をさらに増やし、本予算でも対処するなど、直接支援で中小業者をバックアップしてほしい」と要望。参加者から「1月に懇談した三田市は『思っていたより交付金の額が少ない。支援は難しいかも』と話していた。神戸市は中小業者への直接支援はしないと言っている」(兵庫)、「京都市は支援の対象をレジの更新や従業員増、ベンチャーなどに絞っている」(京都)などの自治体の動きを伝え、「中小業者への幅広い直接支援が必要だ」と訴えました。
府側は「臨交金を前年度補正予算から2割引き上げた。しっかり使ってほしい」「定額減税の実施で確定申告書に記入する欄が増えた。国税庁と連携し、漏れなく減税・給付されるよう周知したい。臨交金の使途について、4月以降、再度締め切りを設けて計画を募る」と回答しました。
経産省・中企庁 賃上げ支援を業者に 「生産性向上」繰り返す
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経済産業省・中小企業庁では、物価高騰対策や賃上げへの直接支援▽「ゼロゼロ融資」の返済に苦しむ中小業者の資金繰り支援▽小規模企業の社会保険料の負担軽減―などを求めました。
庁側は、物価高騰分の価格転嫁について「価格交渉促進月間」の設定や下請けGメンによる調査、「よろず支援拠点」による経営相談などを紹介し、「中小企業が価格交渉しやすい環境整備に取り組んでいる」と回答。直接支援策は示さず「中小企業の生産性向上」を繰り返しました。
熊本県宇城市の坂本英治さん=居酒屋=は「野菜など食材が軒並み値上がりしているが、お客さんの生活も厳しく、値上げは難しい。今の物価高は個人の努力で対応できる範囲を超えており、廃業する人も増えている。ぜひ、直接支援を」と強調。長崎市の徳永隆行さん=電気通信工事=は「長崎県商工団体連合会が取り組んだアンケートでは、物価高騰分を価格に転嫁できていないが8割弱だ。自治体が独自に賃上げ支援を行う例もあり、国が直接支援できない理由はない」と、強く要望しました。
国交省 請負代金を保障せよ 「適正単価を行き渡らせる」
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国土交通省では、資材高騰に苦しむ中小建設業者に、十分な請負代金を保障する▽社会保険料や管理費を上乗せした単価での支払いを保障する▽能登半島地震で被災した中小業者の事業再開を後押しする―など、7項目を要請。
省側は「改正建設業法に基づき、下請け業者が適正な賃金原価を確保する根拠として『標準労務費』が示され、この基準を著しく下回る見積もりは法律違反とされる」と説明。労働者雇用に伴う法定福利費(事業主負担分)、安全衛生経費なども必要経費として見積書に明記して労務費に上乗せし、下請け業者まで行き渡らせる方針を示しました。
石川県からの参加者が「住宅再建に関わる事業者が不足し、需要に供給が追い付いていない」と被災地の現状を説明し、「加賀地域と比較して1・5倍を超える異常な資材高騰で、新築工事が進まない」と訴えました。「公費解体の現場で、下請け代金の未払いが頻発している」と告発し、是正と支援強化を求めました。
資金需要に寄り添え 「金融機関に要請文を発出」
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金融庁では、金融機関に関連して8項目、損害保険業界の課題について2項目を要請しました。
庁側は、中小業者に対する資金繰り支援について「事業者に寄り添った迅速かつ柔軟な対応を継続するよう昨年11月28日、金融機関に対して要請文を発出した」と回答。参加者が「物価高や人件費が上昇している中、中小業者の資金需要に応えるべきだ」と求めると、庁側は「信用保証付き融資の借り換えに活用可能な小規模事業者向けの小口零細企業保証などの活用を促している」と答えました。
参加者は「塗装業だが、原材料が高騰する一方で単価が据え置かれ、経営が厳しい」(大分)、「顧客サービス向上に資するよう、損保業界への指導を改善してほしい」(埼玉)、「消費税の滞納が増えている。金融機関に”消費税は預かり税”という誤った認識の担当者もおり、正すべき」(長崎)など実態を示し、具体的な対応を迫りました。
庁側は、中小企業活性化協議会または金融庁を相談窓口に、昨年6月から運用が始まった「事業再生情報ネットワーク」経由で36件(1月末時点)の相談を受けたと説明。「利用には、事業規模や事業形
インボイス廃止今すぐ 243人が国会議員要請
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5日午前には、衆参国会議員への要請行動が取り組まれました。北海道から沖縄まで、全国から243人の中小業者らが両議員会館に集結。地元選出議員に「消費税減税とインボイス廃止の請願署名の紹介議員に」「物価高騰対策として中小業者に直接支援の創設を」など切実な要求を届けました。
衆院・北海道12区選出の川原田英世議員(立憲)は、請願署名の紹介議員を快諾。「インボイス廃止は、今すぐやらなければならない問題。一緒に頑張りましょう」と参加者を激励しました。
野党議員の事務所では、丁寧に話を聞いてくれ、「紹介議員を引き受けます」(立憲・杉尾秀哉参院議員秘書)、「議員も同じ方向で頑張っている」(立憲・吉田はるみ衆院議員秘書)など、地元の中小業者の声を聞く姿勢を示す対応が目立ちました。
一方、自民・公明の与党議員の事務所では、参加者の訴えにも、「野党が力を合わせればいいのでは」(自民・高木啓衆院議員秘書)などと、冷たく突き放す対応が多く見られました。
参加者は「7月の参院選で、与党を少数に追い込み、中小業者の願いがかなう政治に切り替えよう」と決意を新たにしていました。