確定申告のワンポイントアドバイス⑧「社会保険料控除と医療費控除」|全国商工新聞

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 今回は、所得控除の中でも多くの皆さんに適用される社会保険料控除(図1の3項目)と、医療費控除(同4項目)について解説します。なお、配偶者控除などの人的控除については次の第9回で解説します。

 まず、「社会保険料控除」ですが、健康保険料や国民年金、厚生年金など年金事務所や市区町村に支払った保険料や年金で、2024年中に支払ったものが控除の対象となります。前年分や翌年分のものであっても、24年中に支払っていれば控除の対象となります。これらは「保険料」とも呼ばれますが「保険税」と呼ぶ自治体もあります。実質的には税金と同じ性質ですので、支払った税金は控除されると考えるとよいでしょう。
 後半に解説する医療費控除にも共通しますが、納税者と「生計を一にする」親族分も合算して控除を受けることができます。
 国税庁は、公的年金から天引きされているものについては”名義が年金受給者者に帰属するため、名義人からしか控除できない”との見解を示していますが、生計を一にしているという原点や、立法時に口座引き落としやカード決済などを想定していなかったことからすると、現行の所得税法の不備であり、現金で納めようが、年金から天引きされていようが、世帯の社会保険料控除として合算することを選択できるのは当たり前です。
 ここでいう「生計を一にする」とは、同居している場合だけではありません。別居していても、通常の生活費や学費を送金し、生活を支えている場合には「生計を一にしている」と言えます。
 次に、医療費控除について解説します。医療費控除も24年中に支払った医療費のうち、10万円を超えた部分について控除対象となります。ただし、総所得金額等が200万円未満の場合には、図2の計算式となりますので、医療費の合計額が10万円に達していないからといって医療費控除が受けられないと諦めないでください。

 注意点としては、高額医療費などで補填された金額は、その補填された対象となった医療費から差し引かなければなりません。
 医療費控除を受ける場合には「医療費控除の明細書」を作成して確定申告書に添付します。「支払い済み医療費の通知書」が送られてきますが、通知書に記載されていない薬局などでの医薬品の購入分などは、皆さんが改めて集計をする必要があります。
 支払ったものが医療費控除の対象となるか、悩むことが多いと思います。「医者の処方がある」「医療保険の適用があった」という場合には、ほとんど医療費控除の対象になると考えてよいでしょう。
 また、スイッチOTC医療品の購入やインフルエンザなどの予防接種などの支出があった場合に利用できるセルフメディケーション税制を選択することもできます。
 最後に、政府は昨年12月2日、現行の健康保険証の新規発行を停止しましたが、国民の利便性が目に見えて悪化しています。健康保険料を払っているのに保険証を送らなくなることは、憲法違反です。税と社会保障を人質にして国民監視を進めようとする政策には断固反対していきましょう。


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