自民・公明両党は12月20日、2025年度「与党税制改正大綱」を決定しました。いわゆる年収の「103万円の壁」について、所得税の基礎控除と給与所得控除の額を、それぞれ10万円(合計20万円)引き上げ、25年分の所得から適用するとしました。
大学生など19~22歳の子どもを扶養する世帯の税負担を軽くするとして、子どもの年収上限を103万円から150万円に引き上げ。特定親族特別控除(仮称)を創設し、150万円を超えても親の控除額を段階的に減らす仕組みを盛り込みました。
軍拡増税の押し付け 牧全商連事務局長が談話
全国商工団体連合会(全商連)の牧伸人事務局長は12月23日、
「基礎控除の抜本的な引き上げに背を向け、軍拡増税を国民に押し付ける与党税制改正大綱に抗議し、生活費非課税、応能負担の税制実現を要求する」との談話を発表しました。基礎控除と給与所得控除の各10万円の引き上げは「まったく不十分」と指摘し、「求められているのは生活保護基準を下回る所得にも課税する重税政策を一刻も早く是正すること」と強調。「総選挙で多数派となった野党議員の多くが掲げた消費税の減税とインボイス制度の廃止を無視していることは重大だ」と指摘し、消費税に当たる付加価値税を減税する動きが広がる一方で、ロシアやイスラエルは「軍事費を賄うために付加価値税を引き上げている」とし、「大増税を招き、国民の生活を圧迫する大軍拡の中止こそ決断すべき」と強調しています。
与党が問題にする基礎控除の引き上げや消費税減税・廃止に必要な財源は「大企業・富裕層を優遇する不公平な税制を是正すれば十分賄うことができる」としています。
ゆがんだ税制たださず 不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
課税最低限は低いままで 富裕層や大企業優遇続け
「103万円の壁」は、給与所得者の課税最低限のことです。憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」としており、税金の面でいえば、最低生活費には課税してはならないということを意味します(最低生活費非課税の原則)。それを保障するために、所得税においては基礎控除があるのですが、現行48万円と、日本は国際的にも極端に低い水準にあります。
政府の資料でも、イギリス180万円、フランス124万円、ドイツ111万円(2016年4月現在)です。ドイツでは1992年に憲法裁判所が「生活保護基準を下回る課税最低限は憲法違反」と判決し、基礎控除が引き上げられました。ですから、基礎控除を170万円程度に引き上げるのは当然のことです。「大綱」の言う58万円は最低生活費に遠く及びません。
中小企業は苦しみ
昨年の総選挙では、裏金問題や物価高に対する無策に審判が下り、自公過半数割れとなったにもかかわらず、「大綱」は、消費税減税、インボイス廃止には一言も触れていません。消費税は生活費に食い込む、最低生活費課税です。
自民党政権は財界の要求で「直間比率の是正」と言って消費税を導入しました。その後、法人税と所得税は大幅に引き下げられ、消費税は3%から10%まで大増税となりました。大企業と富裕層は潤い、庶民と中小企業は増税に苦しみ、格差が広がりました。
「大綱」は、法人税減税が「意図した成果をあげてこなかった」と、昨年に引き続き、その失敗を指摘しました。しかし、莫大な減税の恩恵を受けながら、相応の法人税を支払っていない大企業の法人税率アップは具体的に決めていないのです。富裕層優遇の「1億円の壁」(金融所得課税強化)についても不問です。これらを「『是正すべき』と言っていたではないか」と問われた石破首相は、「税負担の公平性が極めて大事」と言いながら「貯蓄から投資へという流れにさおさす(誤用だが、逆らうの意で使用)ようなことはしたくない」と拒否しました(12月16日、参院予算委)。
税金は能力に応じて負担すべきものです(応能負担原則)。消費税導入後、ゆがんだ日本の税制を、公平にただす気のない「税制改正」なのです。
戦争準備で大増税
一方で「大綱」は「わが国の防衛力の抜本的な強化を行うために安定的な財源を確保する」として、軍事費拡大の増税を具体化しました。2023?27年度の5年間で43兆円の予算、そのためには17兆円の追加財源が必要とされています。これを歳出改革などと合わせて、新たな増税で賄おうとしています。「大綱」は、法人税とたばこ税を26年4月から増税するとしました。所得税増税については決定を先送りし「引き続き検討する」としました。
軍拡増税は、庶民と中小企業の暮らしと営業をつぶし、戦争を準備するものです。大軍拡計画をすぐに撤回させなければなりません。