物価高に苦しむ業者への直接支援 民商・県連が自治体要請で獲得|全国商工新聞

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岩手県 賃上げ支援 継続充実 県連「物価高騰に助成制度を」

要請書を岩手県に手渡す県連の関沢淨会長(右)
「原材料高騰に対し、負担軽減を図る」ことなどを求め、賃上げ支援の延長も勝ち取った岩手県連の要請

 「岩手県が2024年度に創設して好評だった中小・小規模事業者への賃上げ支援金(別項に民商会員の活用事例)を継続・充実できた!」―。こう喜ぶのは、岩手県連の関沢淨会長=自然エネルギー普及。県連は昨年12月26日、「地域経済の振興を図るため中小商工業者への施策拡充」を求めて7人が県に要請し、県側は岩渕伸也商工労働観光部長が応対しました。

6万円に増額し

 岩渕部長は、県連が事前送付した「原材料高騰に対し、負担を軽減する助成制度の創設」「商店・住宅リフォーム支援事業の実施と省エネ・再エネ回収を対象に加える」など6項目に回答。「物価高騰に対し、地域振興を図るために賃上げ支援金の継続支援が行われる」と、県独自の賃上げ支援金の継続実施と充実を明言しました。
 24年度に実施された県独自の賃上げ支援金は、従業員1人当たり5万円で、最大20人分。24年度補正予算で限度額を1万円引き上げ6万円に、支援人数も最大50人分へと拡充されることになりました。
 その他、要請項目に初めて盛り込んだ「所得税法56条は廃止に」について、関沢会長が「憲法違反の規定であり、人権侵害を含む法律があることが問題」と訴えると、岩渕部長は「そのような内容なら、所得税法56条の見直しは必要ですね」と応じました。
 県交渉に参加した県連役員が「県の滞納機構が警察を同行させて、強制的に地方税の徴収を行っている」など強権的な滞納処分についても告発。岩渕部長は「『社保倒産』など社会保険料の強引な徴収が全国的に問題になっていることは承知しています。県としても、税務諸機関との交流や指導が手薄なので、事実確認をして改善を図る」と答えました。
 県交渉と連動して、全県で進めている自治体キャラバンで、各自治体の担当者から「地域振興・業者支援には、国や県がまず施策を創設し、その後で各自治体の対応となる」との声が寄せられたことを紹介。「中小業者への支援を、さらに拡充するには、県の取り組みが一層重要だ」と指摘し、引き続き意見交換することを確認しました。

賃上げ支援金を活用 岩手・胆江民商会員 「継続は大歓迎」

「賃上げのいい機会」と県の支援金を活用した中目光好さん(右)

 岩手県の24年度の賃上げ支援金を活用した胆江民商会員からは感謝の声とともに、より一層の支援の拡充を求める声が上がっています。
 中目光好さん=自動車板金=は「以前から、従業員の給料をもっと出してあげたいと思っていた。周りでも賃上げは話題になっており、いい機会だと思った」と申請の経緯を語ります。
 一方で「当初の従業員1人当たり5万円の支援金では、引き上げた給与の半年分にしかならない。賃上げ支援金を活用して一度上げた給料は、その後の業績悪化があっても下げることが許されない。下げたら、支援金を返さないといけないので、対応するには、会社の利益を削らざるを得ない。本当に苦しい」と、支援金の増額と支援金制度の弾力運用を求めています。
 同じく支援金を活用した縫製業の会員も「業界は、どこも経営が厳しい。心苦しいが、従業員には最低賃金で我慢してもらっていた」と語ります。昨年10月に支援金を活用しましたが、今後も賃上げが必要になることを見越して、今年度の支援金の申請も行うことにしています。「制度の継続は大歓迎だ。また利用したい」と語っていました。

広島・安芸高田市 利子補給制度を創設 三次民商 「公庫以外にも拡大を」

創設された利子補給制度の拡充を求めた三次民商の安芸高田市との懇談

 「市が2025年度から創設する利子補給制度の対象を日本政策金融公庫(日本公庫)以外の金融機関にも拡大してほしい」―。広島・三次民商は先ごろ、安芸高田市に物価高騰への支援を求める要望書を届け、懇談しました。国重俊彦会長=農業、高田支部の植野修支部長=ミシン・家電販売=はじめ5人が参加し、市側は森岡雅昭産業部長ほか3人が応対しました。
 市が新たに実施する予定の日本公庫からの借り入れへの利子補給について、公庫以外の金融機関にも範囲を拡大することなどを提案しました。市側は「制度設計に時間がかかっている。申請書類の簡素化を図るなど努力している。市として初めてのことで、金融機関への支援までは未知数であり、検討させていただきたい」と答えました。
 広島県連が取り組んでいる「営業動向調査」から民商会員の状況を説明。参加者は「売り上げは横ばいだが、仕入れ、経費が上がり、利益が減っている。価格交渉はしているが、応じてもらえない」など、物価高騰が足かせになっている現状を訴え、「地元業者の声を政策に生かすために、裏付けとなる振興条例の早期制定を」と求めました。
 市は3月に利子補給制度の要綱などを公表する予定です。

愛知・清須市 「振興条例」制定へ 北名古屋民商 小規模事業者にも配慮を

清須市に対して、高過ぎる国保税負担など、業者の実態を伝えた北名古屋民商の懇談

 愛知・北名古屋民商は先ごろ、2025年度から「中小企業振興条例」を制定する方針を示した清須市と懇談し、橋本浩明会長=空調工事=はじめ5人が参加しました。
 清須市は、25年度からスタートする「市第3次総合計画」で、
 民商がかねてから要望していた「中小企業振興条例の制定」を盛り込みました。
 民商は、条例制定に向けた動きを評価した上で「中堅企業、中規模企業に偏らない、小規模事業者にも配慮された条例にしてほしい。条例に基づく審議会などには、民商の代表も参加させてほしい」と要望しました。
 市側は「条例を制定することで、きめ細やかな施策を実現できるし、予算も立てやすくなると考えている。市民ぐるみで地元の業者を支えていくイメージを持っているが、具体的な調査や施策などは、これからになる」と答えました。
 民商は今後も、実効性ある中小業者支援策を講じさせるため、業者要求に基づく具体的な提案を行うことにしています。

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