「今やインボイス制度そのものを廃止することが最良の策であると言わざるを得ない」―。昨年末、埼玉県議会の本会議で可決された「国に対する意見書」は、こう明言しました。
昨年12月20日の埼玉県議会本会議で賛成多数で可決されたのは、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の廃止等を求める意見書」です。自民党県議団が提出しました。自民党、共産党、会派「民主フォーラム」などが賛成し、公明党と会派「無所属県民会議」は反対しました。都道府県では初の「インボイス廃止を求める意見書」となりました。埼玉県商工団体連合会(県連)も加わる「消費税の廃止を求める埼玉連絡会」(各界連)が400人を超える団体署名を添えて提出した「国に『消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)廃止の意見書』提出を求める請願」は継続審査となりました。
可決された意見書は、「(インボイス)制度導入から1年が経過したが、小規模事業者などからは、減収や税負担の増によって経営状況が悪化したとの切実な声が上がって(いる)」「インボイス制度に係る経理事務が過大な負担になっているとの訴えも噴出している」と指摘。物価高騰などで経営環境が悪化する下で「インボイス制度に係る負担を小規模事業者等に求めることができる状況ではない」と強調し、「今やインボイス制度そのものを廃止することが最良の策と言わざるを得ない」としています。
自民党埼玉県議団の白土幸仁政務調査会長は「県内の中小業者からインボイス制度で過大な事務負担が課せられ、新たな税負担も重いとの切実な声が寄せられている。経過措置がなくなれば事業継続が困難になるとの声も聞く。意見書は、こうした切実な現場の声を国に上げるものだ」と語ります。自民党県議団が、2023年6月議会でインボイス制度の「円滑な導入に向けた」意見書を主導した経過について「当時は、私たちのところには、(インボイス制度がもたらす悪影響について)それほど大きな声は届いていなかった」と釈明。「同年10月からの導入後の中小業者の状況を踏まえて判断した」と話しました。
意見書について「地方議会としての意見を示したものであり、”廃止する”かどうかは国の判断」としながらも「こうした動きが広がれば、インボイス制度を廃止させることができるのではないか。他県や他の市町村からも、同様の意見書が上がることを期待したい」と語りました。
声上げ続けた私たちの成果 埼玉各界連事務局長 中村稔さん
各界連の中村稔事務局長は次のように指摘します。
「各界連は2022年から『インボイス廃止の意見書』を求める請願を3回提出し、そのたびに、自民党県議らによって否決されてきた。今回の意見書可決は、インボイス制度が開始され、中小業者が深刻な状況に追い込まれるに至り、自民党県議らが中小業者の切実な状況にようやく気付いた、ということだ。私たちが一貫して声を上げ続けてきた成果に他ならない。他の都道府県でも同様の意見書を可決し、インボイス制度を廃止に追い込みましょう」