最寄りの民商に相談を
「市役所から国民健康保険(国保)の『短期保険証の交付廃止に関するお知らせ』が届いた。『特別療養費』の対象となり、医療費を窓口で、いったん10割分をご負担いただくことになるとあるが、どういうことか?」―。昨年12月2日に健康保険証の新規発行が停止されたのに伴い、民主商工会(民商)に、こんな相談が寄せられています。
「特別な事情」あれば10割負担にならない
全国商工団体連合会(全商連)は12月9日、この問題で厚生労働省に確認。厚労省は、一律・機械的に「特別療養費」に切り替えるのではなく、3カ月に1度は通知で納付勧奨を行い、電話や訪問などで接触を図って「特別な事情」がないか確認するよう各自治体に呼び掛けている▽「特別な事情」がある場合は、10割負担には切り替えない―と回答しました。
「特別療養費」とは、国保料・税を滞納して「短期保険証」や「資格確認書」を交付された被保険者が、病院や薬局の窓口で、いったん全額(10割)を自己負担し、後から「特別療養費」として申請することで、保険診療分(7割または8割)が支給される制度です。ただし長期の滞納がある場合、戻される金額を滞納保険料に充当する自治体もあります。
「特別療養費」に切り替えるには、滞納した国保料・税について「納付勧奨」や「特別な事情」の聞き取りが必要です。それらが実施されていない場合、特別療養費への切り替えは無効です。
しかし、一部の自治体は、12月2日に短期保険証の交付が廃止されたことに乗じて「納付期限から1年を経過した国保料・税の滞納が残っている場合、『特別療養費』の対象となる」などと一律・機械的に適用し、徴収を強化しようとしています。
こうした動きに対して、省側は「法改正で『納付に資する取り組み』を要件にして、機械的に行わないように通知している」とし、「『複数回、納付を求める書面を送ったが、反応がなかった』などを理由に、ただちに『特別療養費』に切り替えてよい、というわけではない」と回答。病気やけが、事業の休廃業や所得の減少など「特別な事情」がある場合には「『特別療養費』の対象とはならない」と明言しました。
一方的切り替えは「問題」と厚労省も
一部の自治体が「短期保険証」を廃止し、一方的に「特別療養費」に切り替える旨の文書を送付している事例のように「『特別な事情』を確認せずに『特別療養費』に切り替えることができるのか」とただすと、省側は「事前に納付相談の機会など納付勧奨が設けられていなければ、問題がある」と答えました。
全商連は、医療費の全額自己負担をいったん求める「特別療養費」制度は「保険料の納付状況にかかわらず、国民が医療を受ける権利を保障した憲法25条の受療権・生存権を否定するものだ。滞納者を医療から遠ざけ、”受診控え”につながる。高過ぎる国保料・税負担の軽減を行うべき」と強く求めました。
特別な事情
「特別な事情」とは①災害、又は盗難にかかったとき②病気にかかり、又は負傷したこと③事業を廃止し、又は休止したこと④事業につき著しい損失を受けたこと⑤前各号に類する事由があったこと―により、国保料・税の納付ができないと認められる事情のことです。④について厚労省は所得の減少を含むと全商連に回答しています。