牧伸人 全商連事務局長に聞く
「苦しい生活、裏金が怒りの引き金」(「毎日」10月30日)となり、自公は少数与党に追い込まれました。消費税の減税やインボイス(適格請求書)制度の廃止、能登半島地震の被災事業者をはじめとする中小業者への直接支援など、世論と運動を広げれば、業者要求を実現できる新しい政治状況です。2025年の民商・全商連運動を、どう進めるか。牧伸人事務局長に聞きました。
物価高騰から業者を守り
―新年を迎えましたが、物価高が大変ですね。
新年おめでとうございます。「めでたい」と言っても、中小業者は、物価高騰と消費低迷による経営危機で、いまだに出口が見えません。自民、公明、国民民主の3党は「手取りを増やす減税」を言いますが、生活と営業を本気で守るなら、全ての国民が潤う消費税減税こそ実施すべきです。消費税が免税される小規模な事業者にまで納税を強いるインボイスも、廃止が待ったなしです。
―庶民減税は必要でも、財源や実現の見通しは?
アベノミクスの金融緩和による低金利と異常円安の後押しを受け、大企業は過去最高の利益を上げ、株価もバブル期以来の高値を更新しました。しかし、2024年度補正予算は、半導体製造の大企業1社に1兆円を投入したり、不要不急の軍事費に過去最大の8268億円を計上しました。全国330万者の中小企業・小規模事業者向けの25年度政府予算案1695億円と比べ、すさまじい大企業優遇と軍事偏重です。
減税財源は、これら大企業、富裕層への応分負担と大軍拡ストップで生み出すべきです。
昨年の総選挙では「裏金」で怒りを買った自民、公明両党が衆院で過半数を割り、消費税減税、インボイス廃止を掲げる政党が伸長しました。消費税減税は野党各党が公約に掲げ、唯一掲げなかった立憲民主党も、全当選者の4人に1人が選挙中、消費税減税に言及しました。インボイス廃止は5野党が公約し、衆院で議員数は4割を超えています。インボイス制度の円滑実施を求めてきた埼玉県議会が推進姿勢を一転し、「早急に廃止」を求める意見書を年末に採択しました。国民世論で野党を励まし、消費税減税、インボイス廃止を実現する年にしたいと思います。
経営も税金も自主記帳で
―経営力を磨き、自覚を高める努力も必要では?
物価高騰を機に、経営力を磨く努力が進んでいます。昨年末の全商連第11回経営対策交流会で、夫とラーメン屋さんを営む”お母ちゃん”が報告。ネギも、小松菜も、チャーシューも、麺も上がって、経営はキツキツ。それでも「値上げすれば、お客さんが離れるのでは…」と心底悩んでいたそうです。民商の集まりで仲間から「上げたら、いい」と言われて決断し、値上げした後も「お客さんは来てくれている」そうです。全商連の営業動向調査の回答者になり「そのアンケートに記入することが商売を数字でつかむ動機になった」と自主記帳の大切さにも触れました。
”身を切る痛み”を数字でつかむことが、悪政や重税への怒りになります。いま中小業者は、国民の申告納税権を保障すべき国が、その責務を後退させる収受日付印の押印廃止や、税金や保険料の納付・差し押さえを不当に迫る強権的徴収行政など、切実な課題に直面しています。ラーメン屋の”お母ちゃん”の怒りは悪政を是正させる運動の力です。率直な話し合いの場を各地で持ち、経営にも、税金にも強い民商づくりを進めたいと思います。
平和憲法の理念を隅々に
―被爆80年、終戦80年の節目の年ですね。
ロシアやイスラエルによる国際法違反の侵略が続く中、内戦下のシリアで独裁政権が崩壊し、国際社会にさらなる緊張が走っています。核兵器使用の危機も高まる中、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞は大きな励ましです。「平和でこそ商売繁盛」の心意気で、平和運動の発展に貢献したいと思います。
韓国では「非常戒厳」を発布した大統領を弾劾し、圧政の危機を世論の力で防ぎました。
国内でも、国会議員の任期延長を行う緊急事態条項など「戦争する国づくり」に向けて、国民の主権制限を狙う策動を見逃せません。
今年は被爆80年、終戦80年の節目です。沖縄の辺野古新基地建設や南西諸島のミサイル配備をはじめ、各地で進む基地強靭化に反対し、平和憲法の理念を隅々に広げましょう。
総合力を発揮して前進を
―5月に全国会長会議を開くそうですね。
第56回定期総会から1年の折り返しとして、5月24日(土)~25日(日)、全商連第12回全国会長会議を開催します。参議院選挙目前の5月末までに「消費税減税・インボイス廃止を求める統一署名」を1会員5人以上に広げる目標を決め、2月5日の全国中小業者決起大会までに1会員2人以上を、と呼び掛けています。
会員加入率が安定的に8割を超えるよう助け合いを広げる共済会▽所得税法第56条に怒りを、経営交流に意欲を湧かせ、「『拡大ゼロ』をゼロに」と奮闘する婦人部▽業者青年の交流を広げ、活動を盛り上げたいと意欲を湧かせる青年部―各組織と連携して民商・県連が活気づき、組織の総力を発揮していきましょう。
その取り組みは①理念と方針を学び、民商の良さを工夫して知らせる②会内外に対話を広げ、班・支部をはじめ、集まって話し合う③週報・月報などで到達を適時・的確につかんで目標達成にこだわる―という点に日々留意して進めることが大切です。
全国会長会議では、商工新聞読者・会員で第56回総会時現勢からの増勢組織と署名目標の達成組織を顕彰します。署名と商工新聞で対話を進め、紹介を広げて仲間を増やし、前進の中で会長を送り出せるよう、全国の皆さんと力を合わせて頑張る決意です。