各地で広がる有機フッ素化合物(総称PFAS)の水道水への混入について、国が全国調査を行いました。有害性が指摘されるPFOSとPFOAの合計で国の「暫定目標値」の水道水1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)を超える例はありませんでしたが、昨年まで大幅超過の地点もあり、住民に不安が広がっています。
PFASに該当する化学物質は1万種類以上あり、水や油をはじき、熱に強い性質から、防水スプレーや食品の包装紙など幅広い製品に使われています。全てのPFASに毒性があるわけではなく、フッ素加工のフライパンなどに使われているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などでは発がん性は確認されていません。
PFASのうち、特に人体や生物に対する毒性が確認されているのはPFOS、PFOA、PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)です。これらは現在、国内でも使用などが規制されていますが、すでに使用されてきた泡消火剤などに含まれ、深刻な汚染被害を広げています。
PFASは、環境中で分解されにくい特徴があります。PFOSなどの使用を禁止しても、すでに環境中に放出された物質が残り続け、水源などを汚染する懸念があり、汚染源が不明とされていることも相まって不安を広げています。排出の可能性が指摘される在日米軍や自衛隊基地、ダイキンなどの大企業に忖度するようなことがあっては被害を広げ、解決を遅らせます。かつての公害の教訓に学び、検査結果を公開し、汚染源の早い特定が重要です。
石破茂首相は水道事業者に対して検査・公表の義務化を表明しましたが、十分ではありません。検査などの対策は当然ですが、暫定目標値を超えた地域では、住民の血液検査や健康調査を公費で行うことが必要です。
日本は豊かな水に恵まれ、水道水を直接飲用できる数少ない国です。そこから作り出される食も、世界に誇れる文化です。安全でおいしい水は、中小業者の経営にも欠かせません。
必要な検査体制の確保と情報開示、汚染源の特定と公費による対策などを含め、住民の健康不安に応える責任ある対応が求められます。