国連に声は届いてる 諦めず運動続けよう
政府回答に落胆するも
日本報告は10月17日に審議されました。女性差別撤廃条約の条文に沿って委員が質問し、日本の政府代表が回答するという約5時間の審議でした。日本語の同時通訳で、発言内容がリアルタイムで分かるので、助かりました。
56条に関する質問は、女性差別撤廃条約の13条「経済的及び社会活動の分野における差別の撤廃」に関わって、ナイジェリアの委員が「家族従業者に性差別要素があり、不利であると認識しているのか。日本は、法を改定することを考えているのか」と質問。日本政府は、女性活躍重点方針に地域女性活躍交付金や起業支援などを明記したことを強調し、56条について回答しませんでした。
政府は、岡田恵子男女共同参画局長を中心に、外務省、法務省などが分担して、事前の政府回答の内容を淡々と回答。建設的な対話とは、かけ離れた光景でした。議長から「簡潔に回答を」「もっと具体的に」と指摘される場面もありました。日本政府の姿勢を目の当たりにした、全婦協常任幹事の遠山京子さんの落胆ぶりは大きく、どうやって声を掛けようかと悩んでいた時、審議後の記者会見が始まりました。
日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)のメンバーによる「市民社会の声はCEDAW(国連女性差別撤廃委員会)に届いている。性差別を無くし、ジェンダー平等を前進させる意思を持った政府に変えることが必要だ。諦めずに行動しよう」という前向きな発言を聞いて、気持ちを立て直すことができました。
共同しながら一歩ずつ
JNNCは、今回の審議に向けて日本政府の女性差別の是正状況やジェンダー平等施策に対する評価表を作成。JNNCに結集する39の団体が、前回の勧告の実施状況や、それぞれが抱える差別の現状や課題、打開策を示すレポートをJNNCとして一つにまとめ、提出していました。
委員は事前レポートを読み込み、会期中のヒアリングやロビー活動で得た情報を基に、日本政府に迫っていました。日本審議で中心的役割を果たしていたネパールのラナ委員が「課題は多い。意思決定の場に女性議員が少なく、家父長制度が根強く残っていることが、ジェンダー平等を妨げている」と指摘したのには、驚きと共にレポートの重みを感じました。
日本審議の模様や事前レポートの役割などを「伝えること」が、代表として送り出していただいた私たちに課せられた使命だと感じています。
最後に、遠山さんの感想です。「56条問題を含め、人権問題に関わる差別は多種多様で、単純でないことを改めて実感しました。学習を深め、ジェンダー平等へ運動している団体同士が共同しながら、一歩ずつ進んでいく努力をしていきたいと思います」