10月27日総選挙 業者要求をかなえる審判を|全国商工新聞

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 「景気回復のためにも、消費税を減税し、インボイスは廃止に」「自民は脱税、庶民は増税。裏金議員を落としたい」「社会保険料の負担軽減を」―。27日投開票で総選挙がたたかわれています。中小業者は、物価上昇分を価格転嫁できず、最低賃金引き上げへの対応や、それに伴う社会保険料負担の増大で、苦境に立たされています。それなのに自公政権は消費税減税に背を向け、社会保障を削減する一方、軍事費には5年間で43兆円をつぎ込むなど、逆立ちした政治を続けています。「地域経済の主役である中小業者を守る」政治への転換は待ったなしです。私たちの選択をどうするのか、六つの争点で考えます。

争点①物価高騰・被災地支援
地域守る施策こそ 石川・能登民商 Mさん=印刷

 元日の震災で、輪島の朝市近くの事業所も、機材も全焼しました。商売の再建に向けて動き始めていた矢先の豪雨被害で、本当に何と言えばいいか…。
 各種補助金の活用をめざしていますが、例えば、なりわい補助金は、元々が借家だった場合、建物再建に使えないなど、使い勝手がイマイチです。行政はもっと柔軟に対応してほしい。
 輪島では、投票所が減らされ、投票時間も短縮されます。被災者が、しっかり投票できる環境を整えるのは当然です。いま、地方が見捨てられるような政治が行われています。地域を大事にする政治家を選ばなければ、と切実に思います。

解説 直接支援策を

 東京商工リサーチの発表(8日)によると2024年上半期の全国の倒産件数(負債額1千万円以上)は前年同期比18%増の5095件。14年上半期以来の5千件超えを記録しました。
 コスト増加分の価格転嫁が進まず、新型コロナ対応の「ゼロゼロ融資」の返済なども負担となっています。
 政府の責任で、物価高騰分を補填する直接支援や最賃引き上げ分の補助、コロナ融資の返済猶予の延長、借り換え無利子融資の創設などを行わせ、地方創生臨時交付金の大幅増額で、自治体独自の支援の創設・拡充を実現させましょう。石川・能登半島では元日の地震に続く、9月の豪雨という二重被災に「心が折れた」と悲痛な声が。生業の再建へ、直接支援の充実は欠かせません。中小企業淘汰を推進する政治から、「地域に存在すること自体が社会貢献」と奮闘する中小業者を応援する政治への転換が必要です。

争点②消費税減税
インボイス廃止に 熊本・宇城民商 Nさん=紙裁断

 パンストの中に入れる台紙の裁断をしています。単価は1枚当たり10銭から30銭の世界です。加工賃は、この3年は変わらないのに、光熱費や機械の修理代など、経費だけが増えています。10月からは、中小業者への直接支援がないままに最低賃金が952円に上がりました。インボイス導入で毎年、課税業者になりました。3年間の軽減措置が無くなれば、どうなるのか。息子が事業を承継する時にはどうなっているのか不安です。インボイスは直ちに廃止すべきです。消費税を無くせば、多くの中小業者は楽になり、景気も良くなるでしょう。

解説 不公平を正せ

 自民党政治の下で、年間所得が1億円を超えると、所得税の負担率は逆に下がる「1億円の壁」は是正されず、その一方で、年間所得240万円の中小業の4 人家族は、税と社会保障の負担率が47・5%と重く、のしかかっています。
 法人税は大企業ほど軽く、その負担率は中小企業の約半分です。赤字の中小業者にも納税を強いる消費税は、物価高の下で税収を伸ばし、税目の中でトップに。消費税インボイス(適格請求書)制度で、個人事業者の消費税申告件数(2023年度)は197万2千件と過去最高になりました。一方で、トヨタ自動車など輸出大企業20社に、2兆円を超す消費税の輸出還付金が支払われています。
 消費税減税、インボイス廃止、大企業優遇の不公平税制の是正、税務相談停止命令制度を撤回する政治が求められています。

争点③裏金・統一協会問題
こんな不公平ない 東京・八王子民商 Oさん=建設 機械修理

 私が住む衆院東京24区(八王子市)は、自民党・旧安倍派の重鎮で、大臣を歴任し、5年間で2728万円もの裏金をため込んだ萩生田光一氏の地元です。
 私たち業者は、1円、2円単位で税務署の税務調査を受けます。岡山の倉敷民商弾圧事件では「脱税ほう助」容疑で不当逮捕された禰屋町子さんが428日も拘束された。なのに、裏金議員は、逮捕も、起訴もされず、堂々と選挙に立候補する。こんな不公平なことって、ありますか。
 萩生田氏は、統一協会の選挙協力も受けていた。裏金や統一協会に関わった候補者全員を落選させたい。

解説 脱税に審判を

 大争点の一つは「政治とカネ」です。自民党派閥の政治資金パーティーで捻出した”裏金”を政治資金収支報告書に記載しなかった議員の行状が次々と明らかに。使途も示さず、所得を申告しない行為は、明確な脱税行為です。今年2月、”裏金議員”の追徴税額を全商連が試算したところ、85人だけでも1億3500万円余りに達していました。
 怒りをかわすため、自民党は”裏金議員”の一部を「非公認」「比例との重複立候補禁止」に。ところが、石破首相が所属していた「水月会」でも裏金が判明。まさに組織的な「大政治犯罪」です。
 信者の家庭を崩壊させる献金強制や霊感商法など反社会的・謀略的活動を続けてきた世界平和統一家庭連合(旧統一協会)との癒着も深刻です。裏金議員などに審判を下し、政治の刷新が求められています。

争点④社会保障 紙の保険証を残せ
福島・須賀川民商 Hさん=段ボール加工

 物心がついた頃から今まで、社会保障が良くなった実感はありません。当社は、従業員3人が社会保険に加入しており、私が経理を担当しているので、保険料の重さは身に染みています。多くの会社が物価高騰分を価格に転嫁できずに苦しむ中、社会保険料が払えなくなる企業が出るのも当然だと思います。そもそも中小業者には重過ぎる保険料負担の軽減や減免制度などが必要ではないでしょうか。
 紙の健康保険証の廃止も困ります。マイナ保険証はトラブルが多く、国民からの信用を全く得られていないのに、一方的に押し付けないでほしい。総選挙では、各党の態度を注目しています。

解説 負担軽減策を

 憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」(第25条)を実現し、中小業者が安心して商売に打ち込める環境を整備することは待ったなしです。
 「払いたくても、払えない」国民健康保険(国保)料・税や、「社保倒産」が社会問題となった社会保険料の負担軽減が求められます。
 米国兵器の「爆買い」など大軍拡をやめ、約1兆円の公費を投入すれば、国保の均等割や平等割を無くし、大幅引き下げは可能です。コロナ禍で一部実現した傷病手当金や見舞金の創設も必要です。
 社会保険料は、小規模企業振興基本法が成立した時(2014年6月19日)に採択された付帯決議にある通り、小規模事業者の負担軽減策を早急に具体化すべきですが、石破茂首相は「慎重な判断が必要」と及び腰です。
 石破首相は、自民党総裁選で「納得しない人がいっぱいいれば(「マイナ保険証」と紙の保険証の)併用も選択肢」と発言しましたが、所信表明演説では、だんまり。マイナ保険証のごり押しはやめ、紙の保険証を残すべきです。

争点⑤平和と憲法
基地でなく平和を 沖縄・宮古民商 Kさん=農業

 この間、自衛隊は米軍の指揮下に入り、中国を仮想敵国とした日米一体の軍事訓練を展開しています。
 政府は有事の際、宮古、八重山、与那国の住民を6日間で九州と山口県に避難させると言います。「島を捨てろ、後は自分たちで生き延びろ」という、とんでもない計画です。
 沖縄戦の教訓は「軍隊は住民を守らない」「基地は攻撃の対象」です。島々に基地を造り、ミサイルを配備することは、自ら敵をつくり、戦争を呼び寄せているとしか思えません。
 平和な未来を子どもたちにつなぐには、憲法9条を生かしてアジアの国々との平和外交を進め、戦争しない日本を堅持しなければなりません。
 政府は、国民の暮らしを削り、防衛費に43兆円も注ぎ込むのはやめ、地域経済や国民の暮らしのために使うべきです。総選挙では、憲法9条を守り、生かす政治家を増やしたい。

解説 平和外交こそ

 石破茂首相は4日、所信表明演説で「日米同盟」を基軸に抑止力・対処力を一層強化すると力説し、岸田大軍拡路線を継承すると表明しました。その狙いは、米国に従属する「戦争する国」づくりです。そのために、辺野古新基地建設の推進や首相在任中の改憲発議を期待するとも表明しました。
 自民党総裁選で石破氏が主張していた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」や「核共有」などは、中国などとの軍事的緊張を高め、日本を戦争に巻き込む恐れを強めるものです。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、軍事同盟に頼らず、年間1500回余りもの徹底した対話を積み重ね、ベトナム戦争をはじめ戦火が絶えなかった東南アジアを平和の共同体に変えました。各国の共通の思いは「戦争をすれば、経済発展が止まるから、域内では戦争させない」ということでした。
 それは、民商・全商連運動の信条である「平和でこそ商売繁盛」そのものです。戦争のない東アジアと世界を築くため、憲法9条を生かした平和外交を広げる政治が求められています。

論点⑥ジェンダー平等
小さな声も拾って 大阪・河内長野民商婦人部 Mさん=建材販売

 セメントやブロックを工務店などに販売しています。結婚を機に商売に携わり始め、30年がたちました。
 所得税法第56条廃止の署名を国会に提出しても、自民党は動いてくれません。婦人部の先輩方の運動を継承し、長い間、訴えているだけに取り残されていると感じます。
 もっと平等に全国民を、中小業者の生活を見てほしい。市民の声を聞き取る議員や、小さな声を拾ってくれる共産党の議員を増やせば、国会でいろんな意見が取り上げられ、56条にもスポットライトが当たるのではないかと思います。この思いを選挙にぶつけていきたいです。

解説 56条の廃止へ

 家族専従者の働き分を経費として認めない所得税法第56条など、明治時代の家父長制を温存する法律を廃止し、ジェンダー平等社会を早期に実現する政治の転換が求められています。
 「働き分」が認められることは、業者婦人らの労働を正しく評価し、男女賃金格差の解消など、女性労働者への賃金差別の是正にもつながります。
 現在、各国の男女格差を数値化したジェンダーギャップ指数で、日本は146カ国中118位と、世界でも低ランクです。政治分野は120位、経済分野は113位と遅れが目立ちます。
 それなのに、石破新政権の女性閣僚は19人中わずか2人で、岸田内閣の5人より後退しました。政府は、衆議院議員の女性候補者比率を2025年までに35%にすると定めています。今こそ、選択的夫婦別姓や同性婚の実現など、時代に応じた多様な声を尊重する政治が必要です。

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