収受日付印の押印を 「納税者の権利を守れ」 全商連も加盟3・13実行委国税庁に要請|全国商工新聞

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 国税庁は税務行政のデジタル化を口実に、納税者に対する確定申告書や納付書の送付を削減し、来年1月から確定申告書などに対する収受日付印の押印を廃止する方針です。全国商工団体連合会(全商連)も参加する3・13重税反対全国統一行動中央実行委員会は8月21日、国会内で国税庁に対し、「確定申告をめぐる税務行政に関する要望」を提出し、収受日付印の廃止を撤回し、押印を継続することなどを求めました。

収受印はサービスではなく義務だと主張する浦野税理士(こちら向き右から3人目)ら
要望書を手渡す農民連の藤原麻子事務局長

 要請には、全商連や東京商工団体連合会(東商連)、東京土建、年金者組合、農民運動全国連合会の代表らが参加。①「要望」に応じ、確定申告書や納付書を納税者に送付すること②確定申告書控えへの収受日付印の押印継続③3・13統一行動・集団申告の受け入れに関する税務署への指導④確定申告や税金の納付相談などに最寄りの税務署が親切に対応するよう税務署を指導すること―を求めました。
 国税庁は、確定申告書や納付書などが入手困難な場合、「要望に応じて、これらを送付する」と答えたものの、収受日付印の押印については「来年1月から取りやめる方針に変わりはない」と言い張りました。参加者が「納税者の求めに応じて押印すべきではないか」と強く求めたのに対し、「希望者には税務署名と収受日付の入ったリーフレットをお渡しすることとしている」と答えました。
 同席した浦野広明税理士は「収受日付印の押印は、80年近く続いた慣習であり、法律と同一の効力を持つ」と指摘(左の解説)。「収受日付印の押印は行政の義務であり、リーフレットを渡すくらいなら、はんこを一つ押せばいい」「憲法16条の請願権に基づく請願書の控えにも押印しないとすれば、憲法にも反することになる」と強調しました。
 収受日付印の押印廃止の理由を、「政府全体の事務の見直しの一環」「税務署が、収受印の押された控えと一緒に、正本も返却するリスクを減らすため」と主張する国税庁側に、参加者は「押印廃止は、納税者の利便に反する」「他の行政機関に対する証明としての機能をどう担保するのか」「押印廃止は、そもそも憲法尊重擁護義務に反する行為ではないか」などと口々に反論。押印継続を強く求めました。

申告書控えへの捺印は行政の義務 要請に同席・税理士 浦野広明さん
「自己決定権」ないがしろ国民の権利への対応は当然

 申告書等の控えに収受日付印を捺印することは、国や公共団体がやるべき義務である。国や地方公共団体は法律や条例にもとづき課税をして租税債権者となる(憲法第84条、租税法律主義)。つまり、租税債権は国や地方公共団体などが、納税義務者に対して、租税という名目の金銭の支払いを要求し得る法律上の権利である。一方で国民や住民は法律や条例にもとづいて租税債務者となる(憲法第30条、納税の義務)。

80年近い「慣習」で法律と同一の効力

 民法第486条第1項は、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」と規定している。税金に置き換えると、申告納税制度の下で、申告によって租税債務者となった納税者は確定した税金を納税(弁済)する義務が生じる。
 納税者が租税債務の支払いを行う行為が申告であり、それを受け取った課税庁が納税者に領収書として発行することに代わるのが収受印の捺印である。収受印の捺印は申告納税制度の下で80年近い歴史のある「慣習」である。
 法の適用に関する通則法第3条は、「公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する」と規定している。収受印の捺印は「法律と同一の効力を有する」と認めることになる。従って民法第486条第1項は、「課税庁は収受印の捺印をしなければならない」という意味である。
 納税者の権利の基本的観点は、自分のことは自分で決める権利、つまり自己決定権である(憲法第13条、幸福追求権)。申告納税制度は、納付すべき税額が納税者のする申告により確定する制度で、税金を支払う自己決定権である(国税通則法第16条第1項第1号)。権利と義務の関係は国家(国家は行政といってよい)と国民の関係であり、国民の権利の相手は国家・行政だから、国民の権利に対応するのは行政の義務である。
 収受とは、到達した文書がいつ、誰から誰宛てに来たものなのかを管理するため、処理を担当する組織が確認し、自分の組織の文書とする義務である。

新自由主義の下で国民の利益を軽視

 行政庁の租税収入金(公金)の管理義務は、納税義務者である個人または、その集団の利益のために行う義務である。従って、公金の管理を任されている行政庁は、納税者が納付すべき税額を申告により確定する権利行使である納税申告書の控えに収受印を押す義務が生ずるのは当たり前である。
 税務申告書等の控えへの捺印廃止は、財界最優先の新自由主義路線の下で「今だけ自分が儲かればよい、この世はカネがすべて」だとして、国民のことなど考えず、電子申告へ納税者を誘導する電子関連産業の利益を最優先とする発想である。
 憲法第15条第2項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と規定している。この規定の意味は、公務員が、国民の信託によって公務を担当する者として、国民全体の利益のためにその職務を行わなければならないということである。つまり、課税庁は奉仕者として収受文書に捺印する義務がある。

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