上がり続ける物価に、消費税のインボイス(適格請求書)増税、重い税と社会保険料負担が中小業者を苦しめています。昨年10月、岸田政権がインボイスを強行実施して10カ月。連日の猛暑が続く7月下旬、各地で「消費税は減税、インボイスは直ちに廃止」と求める”熱い”集会や宣伝が行われました。
税金から平和を考え 愛知県連などシンポジウム 街頭でスタンディングも
「税金から平和を考えるシンポジウム」が7月28日、名古屋市内で開かれました。主催は、愛知県商工団体連合会や県内の各民主商工会(民商)、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」(STOP!インボイス)愛知支部などでつくる実行委員会。全国商工団体連合会(全商連)の太田義郎会長をはじめ県内の民商会員ら約150人が参加し、シンポジウム後に市内へ繰り出し、「インボイスいらんがね!」とスタンディングで訴えました。
森雅欣・実行委員長(名古屋西部民商会長=溶接)が開会あいさつ。「消費税インボイス制度が昨年10月、中小業者に十分な説明もないまま強行された。岸田政権は私たちにインボイス増税を押し付けながら大軍拡を進めている。諦めずにインボイス廃止の声を上げ続けよう」と訴えました。
第1部では、愛知県平和委員会の矢野創事務局長が講演し、「県内の軍需企業しきが製造した12式誘導弾や高速滑空弾などのミサイルが、世界の戦場で使われることになる」と告発。「岸田政権の大軍拡は”米軍の、米軍による、米軍のための軍拡”だ」と指摘し、「国民に大増税を強いる軍拡をストップさせよう」と呼び掛けました。
消費税をなくす愛知の会の岸野知子事務局長は、「戦争ではなく平和、大企業への応分負担や消費税減税こそ世界の流れだ。平和と民主主義を守り、私たちの暮らしを良くするたたかいに性根を据えて取り組もう」と提起しました。
第2部では、STOP!インボイス発起人の小泉なつみさん=ライター=と同愛知支部の廣瀬仁亮さん=IT関連、生田恵子さん=グラフィックデザイナー=の3人が「わたしが活動を始めたきっかけと経験」をテーマにトークセッションしました。
シンポジウム後、参加者は会場に隣接した大津通に繰り出し、通行人や買い物客に、「増税もう無理」「インボイスは直ちに廃止」「インボイスいらんがね」「消費税は5%に減税を」などと訴えました。
会場で寄せられた感想文には、「改めて日本の軍事費の使い方に怒りを覚えた」「アメリカのお古の兵器を爆買いしている現実が本当に腹立たしい」などの声が。インボイス制度に対し、「何も分からずに始まったインボイス。本当にやめてほしい」「小さな商売がつぶされるようなインボイスは絶対にやめさせたい」との怒りが寄せられました。
「STOP!インボイス」のメンバーに「若い人たちの勇気に感動した」「一緒にたたかってくれてありがとう」との思いもつづられていました。
「消費税引き下げて」 消費税廃止大阪連絡会 シールボードで対話弾み
大阪商工団体連合会(大商連)も加わる消費税廃止大阪連絡会は7月24日の夕方、生野民主商工会(民商)や天王寺民商とともにJR桃谷駅前(大阪市天王寺区)で毎月定例の宣伝に取り組み、「消費税減税、インボイス廃止」を訴えました。参加者は、「消費税を引き下げてインボイスは今すぐ廃止!」と書かれた横断幕を掲げ、通行人にアピール。署名を呼び掛け、「消費税の増税インボイスどう思う?」「消費税が減税されたら○○したい!」と書かれたシールボードを使って対話しました。
蒸し暑い中の宣伝でしたが、税理士の男性は「インボイスは中止」にシール投票。「親が自営業者」と話す中学生は「インボイス制度が始まってから、親がしんどそう。インボイス制度は、自営業者の逃げ道を奪う制度やと思う」などと署名に応じました。1時間の宣伝で署名8人分が集まりました。
STOP!インボイス トークで経験交流
名古屋市内で開かれた「税金から平和を考えるシンポジウム」第2部での「STOP!インボイス」の小泉さん、生田さん、廣瀬さんによるトークセッションの要旨を紹介します。
生田恵子さん「各自が得意分野で奮闘」
廣瀬仁亮さん「政治を自分たちの手に」
小泉なつみさん「一人の運動がみんなに」
インボイスを登録すればどれだけの税負担を強いられるかを知り、それぞれ”愕然とした”と語った3人。「1カ月分の生活費にも当たる過重な負担を、このままではそれを避ける道がないことに気付き、何とかしなければと火がついた」(小泉さん)。
2021年12月に立ち上げた「インボイス制度に抗議する」オンライン署名は、1週間で3万人分も集まりました。「『みんな声を上げたかったんだ』と、権力に立ち向かう”怖さ”が、うれしさに変わった瞬間でした」(小泉さん)、「そこが大きな運動のスタートラインだった」(廣瀬さん)と語りました。
「実は、生田さんにリアル(現実)で会ったのは、今日が初めて」と話した小泉さん。「活動の”主戦場”はオンライン上です」と語った廣瀬さんに、生田さんは「動画編集やデータ分析、チラシのデザインなど各自が、それぞれの得意分野、やり方、場所を生かして頑張っている。それは『インボイスを止めたい』という熱意があってこそ、やっていける」と力を込めました。
大きな組織も、後ろ盾もない中で成功させた東京・日比谷野外音楽堂での集会(2022年10月)や国会前での「全国一揆」(23年6月)。こうしたフリーランスらの活動は、やがて国内のオンライン署名で史上最多の54万人分超を集めるまでに広がりました。
しかし、こうした声を踏みにじって、岸田政権は昨年10月、インボイス制度を強行実施しました。かねてから「STOP!インボイス」のメンバーが訴えていた懸念は現実に。「制度実施後、7千人超から集めた実態調査では、フリーランスらが被る不利益の実態が明らかになった。回答者の9・19%が制度の見直し・中止を求めました」(小泉さん)
3人の思いは、「今の政治を変えたい」という思いに変わっていきます。「都知事選では、多くの市民が『ひとり街宣』に立ちました。私も立ちました」(小泉さん)、「名古屋駅でも『ひとり街宣』をしていた人も。『インボイス』や『ガザ停戦』を求める取り組みもそうですが、最近は若い人が一人で動き始めている」(生田さん)廣瀬さんは「今の政治を”自分たちの手に取り戻したい”と、背中を押されている気がする」。生田さんは「私たちが行う街宣も『怖い』と感じる若者もいる。のぼりやバッジなど、当たり前と思っていること一つ一つを工夫した方がいい。そうすれば、もっと若い人たちにも広がる」と語りました。
小泉さんは「STOP!インボイス」の活動を振り返り、「運動は一人から始まるけれど、始まった運動はみんなに広がって、つながっていきます」と呼び掛けました。