大企業などがコストの増加分以上に価格を引き上げて利益を増やす一方、賃上げにはほとんど回さない状況が明らかとなり、社会問題になっています。物価高騰に便乗した企業の値上げの取り分が多過ぎるとして、「強欲インフレ」と呼ばれています。
全商連付属・中小商工業研究所が4月に公表した2024年上期の営業動向調査では、売り上げや利益の動向を示す指標が、ともに減少傾向となりました。中小業者は、原材料・商品の仕入れ値が長期にわたって高水準となっており、単価・マージンの景況感を減らしています。ひとこと欄には「材料がコロナ前と比べ5割くらい上がっている」(職別工事)、「主力商品が20~50%の値上げとなった。開業して20年、ここまでの値上げは初めてだ」(小売り)などと、悲痛な声が寄せられました。民間信用調査会社の帝国データバンクの調査では、24年1~6月期の物価高倒産は484件も発生し、比較可能な18年以降、半期として最多となりました。
政府が発表する、輸入物価の変動が反映されない物価指数(GDPデフレーター)では、15年から22年までの7年間で、前年比2%の小幅でしか増減しませんでした。しかし、23年1月以降は前年比4~5%も上昇。国内で大企業が輸入物価上昇分以上に、価格を引き上げたことが分かります。物価指数が変動する要因は、企業収益と賃金の増減が主ですが、日本政策投資銀行は、そのほとんどを企業収益の伸びが占め、賃上げに回った分はわずかだったと指摘。事実上、もうけのための便乗値上げ=大企業による「強欲インフレ」が明らかとなりました。賃上げを上回る物価上昇によって賃金は目減りし、実質賃金は26カ月連続で減少。一方で大企業は内部留保を24.6兆円も増やし、537.6兆円もため込みました。
物価高騰が暮らしを直撃し、国民が困窮する大きな要因は、大資本の強欲さにあり、大企業の横暴を正さなければなりません。大企業の内部留保への時限的な課税を財源に、中小業者への直接支援や労働者の最低賃金を引き上げるなど、「強欲インフレ」から中小業者や労働者を守る施策が求められます。