危機乗り切る資金繰り 心に余裕、仕事に専念 全商連第8回オンライン経営対策交流会|全国商工新聞

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司会を務めた全商連の牧伸人事務局長(左)と中山眞常任理事

 「危機を乗り越える資金繰り対策」をテーマに、全国商工団体連合会(全商連)は12日、第8回経営対策交流会をオンラインで開催。各地の民主商工会(民商)など204カ所で視聴されました。全商連の牧伸人事務局長と中山眞常任理事が進行を務めました。

 第1部は、本紙8面「発想の転換」などでも、おなじみの経営コンサルタント、弥永巧児さんが「資金ショートの打開策~やるべきこと、やってはいけないこと」と題して学習講演しました。資金ショートを生む「収入∧支出」が発生する原因として、資金管理がおろそか▽予想外の事態の発生▽支出の増加・売り上げの減少―があると指摘。「やるべきこと」として、資金繰り表に基づく現在と未来のキャッシュフローをつかんで不要な経費を減らし、借り入れなど資金調達や売り上げ向上、商品値上げなど多角的なアプローチを呼び掛けました。一方、「やってはいけないこと」として、無計画な借り入れや不必要な投資、信用の失墜などを挙げ、「ちゃんと『もうける』ためには、計画に基づく経営を行うことが重要」と強調しました。
 第2部の経験報告では、長崎・東彼、広島・福山、東京・豊島文京の3民商から4人が発言しました。

資金にゆとりで前向きな経営を
長崎・東彼民商事務局長 朽原明浩さん

 東彼民商の朽原明浩事務局長は「借り入れは、資金繰りに困っている場合だけでなく、資金にゆとりをつくり、前向きな経営をするためにも有効」と役員会などで訴え、日本政策金融公庫などの活用を促してきたことを紹介。「提出書類と併せて、経営理念や自社のセールスポイント、地域への貢献などを別紙として添えることで融資実行となったケースが多い」と述べました。

単価の合わない仕事断りやすく「福田石膏製型所」
東彼民商 福田奉文さん=波佐見焼石こう型製造

 波佐見焼の石こう型を製造する「福田石膏製型所」を営む同民商の福田奉文さんは、朽原事務局長から「運転資金に余裕があると、お金のことは気にしないで仕事に専念できる」とアドバイスを受け、運転資金300万円を公庫に申請し、満額が実行されました。地域の同業者が減る中で、発注者の要望に応え、年々取引先を増やしてきたことに触れ、「単価の合わない仕事を断ることができるのも、手元資金に余裕があるから。あの時、アドバイス通り、借りて良かった。民商に入っていて良かった」と実感を込めました。

条件変更をして経営を立て直す「協同精機㈱」
広島・福山民商 新川政夫さん=機械塗装

 ”人にも、環境にも優しい粉体塗装”を三十数年前から手掛ける「協同精機㈱」を営む、福山民商副会長の新川政夫さん=機械塗装=は、多重債務から商売を立て直した経験を報告。知り合いに紹介されて民商に相談し、特定調停なども活用して、約170万円あった毎月の返済額を十数万円にまで圧縮し、銀行や保証協会を毎日訪れ、元金据え置きで利息のみ返済への条件変更も認めさせました。他社にまねできない技術を生かして商売を軌道に乗せ、今では社員40人を抱えるまでになりました。「”借りやすいところ”から借りるのは、絶対に駄目。払えないなら、条件変更して、毎月の返済額を減らすように交渉を。税金や社会保険料の支払いにも注意して」と助言しました。

コロナ打撃から融資受け余裕も「小林久間吉豆腐店」
東京・豊島文京民商 小林秀一さん

 創業111年の「小林久間吉豆腐店」の4代目、豊島文京民商の小林秀一さん(現会長)は、コロナ禍の一斉休校や飲食店の休業要請などで売り上げが4割減になったことをきっかけに、信用金庫から初の融資200万円を受けた体験を報告。不安もありましたが、全商連の経営対策部会に出席した民商役員から「良い条件の融資なら、負担にはならない」と聞いたことを思い出し、踏み切りました。資金繰りが楽になって気持ちに余裕が生まれ、いなりずしや総菜の販売に挑戦したり、店内の照明をLED化して省エネと明るさアップを実現。店頭販売も好調です。
 経験報告を受けて、弥永さんは「融資を受けることで、良いものを作るために頭をひねったり、新規顧客の獲得法を考えたり、余裕が生まれる。資金繰り表の精度を上げ、毎月のお金の流れや、決済ごとの入金スタイルなどを把握して”いつまでに、幾ら返すか”を具体的にしておくことが大切」とまとめました。

次回・8月22日 国保の負担軽減

 第9回経営対策交流会は8月22日(木)午後7時~、「国保料・税の負担軽減対策」で行う予定です。

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