「民商と一緒に、日本年金機構に粘り強く要請し、社会保険料の滞納分5千万円が、4年間の納付の猶予(分割納付)に!」「差し押さえを解除させ、換価の猶予での分納に」「当面、希望する月額での分納が認められた」―。各地の年金事務所が、中小業者を「社保倒産」に追い込むような違法で強権的な徴収を横行させる中、民主商工会(民商)は相談に応え、大きな成果を勝ち取ってきました。力になったのは、全国商工団体連合会(全商連)がこの間、日本共産党国会議員団と連携して国会で引き出してきた財務相や厚労相からの答弁でした。
5千万円が納付猶予に 岩手・北上民商会員倒産免れ民商に感謝
「花巻税務署や日本年金機構に諦めず要請し、やむを得ず滞納した消費税1800万円も、社会保険料5千万円も納税や納付の猶予を勝ち取れた。民商に感謝です」―。こう語るのは岩手・北上民商の川村広志さん=サービス=です。先ごろ、本紙4月8日号、同29日号で紹介された滞納処分に関する国会質疑での大臣答弁を活用して粘り強く要請し、花巻税務署と日本年金機構に「納税緩和措置」の適用を認めさせました。
消費税も分納で
2003年の開業以来、浮き沈みはあったものの順調に売り上げを伸ばし、従業員60人を抱えるまでに成長させてきました。一方で、東日本大震災や東京オリンピック関連の特需が終わって以降、業況は急激に悪化し、昨年の消費税1800万円、社会保険料5千万円を、やむなく滞納することに。5月1日に花巻税務署から「連休後に全額を納付しなければ、売掛金を差し押さえする」との予告を受け、「これで会社も終わりだ」と絶望した川村さんでしたが、以前も消費税の滞納で相談したことがある北上民商を思い出し、わらをもすがる思いで事務所を訪れました。
相談を受けた民商の伊藤裕二事務局長は翌2日、川村さんとともに税務署に出向き、前出の本紙を示しながら「国会で大臣が事業を継続できないような滞納処分は行わないと答弁している。絶対に処分は行わないように」と強く求めました。
川村さんと徴収担当者との話し合いは1時間にも及びましたが、結論は「猶予は認めない」。伊藤事務局長は、総務課長に対し「なぜ猶予を認めないのか。60人を抱える会社をつぶしていいのか」と詰め寄ると、総務課長が「私の責任で、差し押さえはさせません。署長にも、その旨を伝えます」と約束しました。後日、徴収統括官から川村さんに「4年の納税の猶予を認めます。分納額の相談をさせてほしい」と電話があり、月50万円の分納が認められました。
態度を一変させ
川村さんは、消費税の相談を続けながら、社会保険料の滞納についても相談。滞納金額が大きいことから、取り扱いが日本年金機構本部に送付されており、伊藤事務局長は本部に電話。「川村さんから滞納処分を行う方向だと聞いた。国会で『社保倒産』が問題になり、厚労相も丁寧な対応をする旨の答弁をしているのに、あくまでも処分するのか」とただしました。
本部の担当者は「川村さんの会社を訪問し、聞き取りを行う」と約束。5月半ばの1度目の交渉で、担当者は「直近の保険料を一括で納めてもらった上でなければ、話し合いに応じられない。応じたとしても、2年の猶予しか認められない」と主張。川村さんは「払わないのではなく、払えない。一度に解決することが難しいことは、税務署も認めている。実情に合った対応を」と訴えましたが、平行線に終わりました。
6月14日の2度目の交渉で、担当者は「4年の猶予を認める方向です。納付計画を提出してほしい」と態度を一変させ、消費税と同様の月額50万円での分納が認められました。
川村さんは「民商のおかげで、倒産を回避できた。可能な納付額の試算を、しっかりと示したことも良かったと思う」と笑顔に。「税務署も、年金事務所も、最初から丁寧に話を聞いてくれればいいのに、全く聞く耳を持たなかった。民商や、国会質問の力を実感した。いま困っている人は多いと思うが、民商に相談すれば、助かるはず」と確信を深めています。
負担軽減策図れ
伊藤事務局長は「『社保倒産』の原因は、大企業と中小企業の保険料率が同じところにある。政府は今後、社会保険の適用範囲を50人以下の事業所にも拡大する方向を示しているが、このままでは中小業者の営業は成り立たない。小規模企業振興基本法の付帯決議にもあるように、『小規模企業の負担軽減のためにより効果的な支援策の実現を図る』制度改革は待ったなしだ」と指摘しました。
1千万円を換価の猶予 東京・板橋民商会員 分納額引き下げ求め
東京・板橋民商には、社会保険料の深刻な滞納相談が次々と寄せられています。
会員の中山裕さん(仮名)=建設=は、1千万以上を滞納し、売掛金460万円が差し押さえられました。民商と一緒に板橋年金事務所に出向き、換価の猶予の適用を求め、差し押さえを解除させ、換価の猶予での分納を認めさせました。
売り上げの減少が続いていることから、分納額を引き下げさせるため、再度、話し合うことにしています。
林正夫さん(仮名)=建設=も560万円を滞納。板橋年金事務所の窓口の職員から「滞納分を一括納付しろ。借金してでも払え」などと脅され、事情を説明しても取り合ってもらえませんでした。
インターネットで民商を見つけて、相談。入会して、納税者の実情に沿った分納計画や窓口での暴言を改めるよう要請し、分割納付の相談を始めています。
差し押さえ処分を回避 名古屋北部民商会員 ネットで検索し相談
「社会保険料滞納相談」とネットで検索し、名古屋北部民商にたどり着いたのは、加瀬直之さん(仮名)=電気工事。コロナ禍以降、仕事の減少などで社会保険料を約2年分、約170万円滞納していました。
早速、入会して民商とともに、名古屋市内の中村年金事務所へ。担当者は「払っていただかないと、差し押さえに進むことになる」と、当初は事務的な態度でしたが、加瀬さんが「仕事が減って、妻のパート収入で生活している状況だ。払いたいが、現状では払えない」と粘り強く窮状を訴え。民商からも「この間、強権的な差し押さえによって、中小業者を廃業や営業困難に追い込んではいけないと、国会でも大臣が答弁している。経営の見直しを相談していくので、待ってほしい」と強く求めました。担当者は「もう少し早く民商に相談に乗ってもらえれば、良かったですね。来月また来てください」と述べ、差し押さえをいったん回避することができました。
加瀬さんは「役員報酬の見直しや個人事業への切り替え、債務整理など、経営の立て直しに向けて、民商と相談していく」と前を向いています。
希望額での分納で合意 山口・岩国民商会員 「民商が心強かった」
山口・岩国民商のSさん=サービス=は社会保険料の滞納分30万円を分納していましたが、月額の支払いが重く、年金事務所に変更を願い出ました。しかし、年金事務所から、「半年間の納付計画を守れなければ、差し押さえする」「これは国の決めたことなので、自分たちではどうしようもない」と誓約書を送り付けられました。
困ったSさんは民商に相談し、「国が決めたことではない」と説明を受け、民商と一緒に年金事務所に月額変更の要請を行いました。
事務所側は「月額は変えられない。今月が苦しいことは理解したが、不足分を他の月で補うように」と冷たい反応でした。Sさんが「決められた分納額では苦しいから、相談している。変更できなければ、行き詰まる」と粘り強く要請した結果、①基本月額は変更できないが、当面、希望額での分納を認める②9月時点で再度、納付計画を話し合う③半年分の納付金額に達しなくても、直ちに不履行扱いしない―ことで合意しました。
Sさんは「電話での対応とは明らかに違った。民商に同席してもらって、心強かった」と語り、今後の解決に向けて頑張る決意です。