インボイス廃止へ共同広げ 実害や混乱、フリーランスら告発|全国商工新聞

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 消費税インボイス(適格請求書)制度が、昨年10月に強行されて9カ月余り。懸念された通り、免税事業者への登録強要や取引先・顧客からの値下げ要求、取引排除、煩雑な事務作業、新たな消費税負担など、深刻な打撃と混乱が中小業者やフリーランスを襲っています。各地の税務署は、インボイスに登録したものの、消費税申告をしていない17万人余りの事業者を「お尋ね文書」で狙い撃ちしています。こうした中、インボイス制度を考えるフリーランスの会(「STOP!インボイス」)をはじめとしたフリーランスと、各地の民主商工会(民商)は共同して、粘り強く「インボイスは直ちに廃止!」の声を広げています。

署名59万3千人分提出 「STOP!インボイス」財務省・国税庁に要請5万人分を追加

国会議員(右側)に署名を手渡す「STOP!インボイス」のメンバー

 「STOP!インボイス」は6月14日、衆院第2議員会館で、財務省・国税庁、衆参の野党国会議員に、「インボイス反対署名」計59万3307人分を提出しました。
 同会が呼び掛ける「インボイス制度に反対する署名」はこの日までに、オンライン署名が58万2766人に達し、今年1月下旬から本格的に開始した紙の国会請願署名は4カ月余りで1万541人分が寄せられました。
 署名提出集会では、フリーランスの映像編集者、文筆家らがインボイス導入後に生じた実害を報告。「インボイス制度によって、手取りが減ることを実感している。この物価高の中で逆行している」「原稿料は引き下げられ、事務負担も増える。気付かないうちに、血をじわじわ吸われているような気分だ」と訴えました。
 「インボイス制度の中止を求める税理士の会」の平石共子税理士は「インボイス制度で、事業者に免税か課税かの二者択一を突き付け、”どちらに行っても地獄”というやり方は、憲法が要請する応能負担や生計費非課税といった本来の課税の在り方とは全く違う。”弱いものいじめ”だけの税金になってしまう」と指摘しました。
 STOP!インボイスの小泉なつみさんは、「インボイス開始以降、オンライン署名が4万人分も上積みされ、紙の請願署名も1万人分超が寄せられた背景には、それまで危惧されていた取引排除や一方的な値下げ、事務負担の増加、廃業といった実害が、フリーランスや事業者に降りかかってきたことにあるのではないか」と指摘。「国が進めようとしているクールジャパン戦略も、フリーランスなどの作り手の生活が安定しなければ、海外に売り込めるものなどは作れない。まずはインボイス制度をやめて、私たちの仕事と生活を守ってほしい」と訴えました。

周知徹底せず導入を強行 消費税無申告17万人「お尋ね」も

 消費税インボイス(適格請求書)制度に登録したものの、今年の確定申告で消費税申告をしなかった業者に対し、各地の税務署が「お尋ね文書」で狙い撃ちしています。
 大阪・河内長野民商では、シーリング業を営む男性が「税務署から『消費税の確定申告書の提出状況についてのお尋ね』が届いた」と、回答期限の6月10日に民商事務所に来所。相談を通じて、民商に入会し、対応していくことになりました。
 同・浪速民商では、税務調査で入会した建設業者の相談に応じる中で、この方がインボイスに登録したけれど、消費税申告ができていないことが発覚。調査への対応と併せて、消費税申告の準備も進めることになりました。
 国税庁が5月に発表した「インボイス発行事業者の消費税の申告状況」によると、「免税事業者からインボイス発行事業者になった者」104万8千人のうち、2023年分の消費税を申告した人は87万5千人。約17万3千人(約17%)が無申告になっています。
 国がインボイス制度の周知を徹底しないまま導入を強行したため、「消費税申告が必要だと知らなかった」「取引先の言われるまま、何も考えずに登録した」などの中小事業者やフリーランスが多数いると考えられます。

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