値引き、取引排除も横行 2819人分を集め記者会見
消費税インボイス(適格請求書)を登録した自営業者のうち、これまで免税事業者だったのは66.9%、うち「取引先やお客に求められたから」が72.8%―。大阪商工団体連合会(大商連)は5日、インボイス制度の影響調査アンケートの集計報告と、同制度中止を求める記者会見を大阪府庁で開きました。
アンケートは、インボイス実施後の昨年12月から今年3月末までの4カ月間、府内の民主商工会(民商)の班会や学習会、商店訪問など対面で、自営業者2819人から集めたもの。多くの事業者が、取引上の力関係からインボイスに登録せざるを得なかった実態が浮き彫りになりました。
インボイスに登録したことで「消費税の負担が発生する」60.2%、「制度が複雑でよくわからない」50.9%、「事務作業や費用の負担が大きい」32.3%と答え、免税事業者から課税事業者になったことで、重い負担が生じていることが分かります。
利益を削られ
免税だったがインボイス登録した事業者のうち、「自分の利益や貯金などを削って払う」と答えたのは50.4%。「廃業する・廃業を検討している」も9.5%に上りました。インボイス制度が廃業を加速していることが明らかに。
インボイス登録しない事業者では、「取引がなくなった・減らされた」「単価を下げられた・消費税分を下げられた」が計11.2%に上り、下請法などの規制を受けないように黙って取引から排除する「サイレント取引排除」と考えられる事例も見られました。
記者会見では、当事者3人が実態を告発。守口民商の原陽子さん=建築美装=は「課税事業者だった時は、貯金を取り崩して消費税を納税していた。売り上げが下がり、免税事業者になってホッとしたのに、インボイスで再び課税事業者に。元請けのゼネコンから明言されなかったが、登録しないと仕事が来なくなるので、やむを得ず登録した。仕事を続けたいので、インボイスは廃止してほしい」と訴えました。
門真民商の赤木賢次さん=大工工事=は「昨年8月に上請けから要求され、登録せざるを得なかった。単価の引き上げも、下請けへの負担も求められず、消費税を自社でかぶることに。2月決算では、昨年10月からの5カ月間で消費税額が30万円増え、来年はおよそ80万円になる。もう廃業するしかない」と苦しい状況を語りました。
堺東民商の中村啓太さん=事務機器リース=は「ファイナンス会社から消費税分を勝手に値引きされて入金されるようになった。見積もりに新規分と残債分を分けて記載するように言われたり、客先から『一つの契約なのに明細が二つ届いている』と不信感を持たれたりと、仕事がしにくくなっている」と報告しました。
独禁法研究会に所属する2人の弁護士が調査結果を踏まえ、「消費税収が上がっているが、苦しいところに負担を押しつけている実態がよく分かる」「これだけ廃業を選択する事業者が出ているのは衝撃だ。経過措置がなくなるとさらに追い込まれる人が増えるだろう」などコメントしました。
6社が取材に
会見には、共同通信、毎日、朝日、産経、NHK、赤旗の6社が取材に訪れました。
大商連の藤川隆広会長(全商連副会長)は「私たちは、消費税が小規模業者に重くのしかかる不公平税制であることを長年訴えてきたが、今回の調査結果からも、インボイス廃止の声がどんどん上げられている。メディアでも、大いに知らせてほしい」と、まとめました。
自由記述欄から
○インボイス登録をしたが、どうしていいのか分からず、泣き寝入り。収入と生活支出の収支バランスがおかしい。生活できているのが不思議。親にたくさん助けてもらわないと厳しいです。(サービス、30代)
○物価高騰などで家庭への負担が増し、その上、インボイスが始まり、さらに家計に負担がかかっている。一人親方・個人事業に追い打ちが来ている。(建設・60代)
○得意先から消費税分を減額されて支払われることになって、収入が減って、しんどくなった。(運送、50代)
○黙って取引を停止された。物価高騰のため、節約しようとして、しわ寄せが来ている。(その他、40代)
○国会議員は領収書なしでも認められるのに、なんで我々はきっちりそろえんと認められんのや。(料飲、年代不明)
○国も、自治体も、もっともっと底辺のことを深刻に考えてほしい。月15万円で生活できるか体験してほしい。(運送、60代)