高過ぎる国民健康保険(国保)料・税の減額が今年度、多くの自治体で実現しています。財務省、厚労省は、社会保障費削減の一環として国保の保険料水準の都道府県統一化を推進していますが、広島県や沖縄県など、今年度からの統一(準統一)を見送る動きも相次いでいます。こうした背景に何があるのか、国保制度に詳しい神奈川県自治労連委員長の神田敏史さんに聞きました。
小さい自治体の反発が強まって
厚生労働省は、「保険料水準統一加速化プラン」(2023年10月18日)を作成し、保険料水準の統一化を進めようと躍起になっていますが、現場の動きは厚労省の思惑通りにいっていないのが現実です。
国がめざす今の統一化では、”医療費が少なく、保険料の収納率が高い”比較的小さな自治体が損(=保険料・税”医療費が多く、保険料の収納率が低い”大きな自治体が得(=保険料・税が安くなる)をするということに必然的になります。このことに対する小さな自治体からの反発が強まり、保険料水準の統一が進んでいないのです。
物価高で減額をせざるを得ない
一方、生活必需品や資材価格の高騰で、暮らしと営業が厳しさを増す中、「高過ぎる国保料・税」が国民や業者の暮らしを圧迫しています。こうした中で、多くの自治体が、何らかの形で国保料・税の減額や実質減額を実施せざるを得ない状況になっています。多くの自治体が今年度、国保料・税の減額措置を実施しているのは、厳しい状況にある国保加入者の実態を反映したものと言えるでしょう。
国保の保険料水準の完全統一化が進められれば、市町村は、独自施策として保険料・税を引き下げることができなくなります。市町村の国保特別会計上の基金を活用した保険料の引き下げもできなくなります。ところが、準統一(納付金レベルの統一)の段階では、保険料を引き下げることに規制がかかりません。
今回の国保料・税の引き下げ(実質引き下げ)には、統一化の流れの中で、基金が活用できなくなる前に、それらを活用して保険料を減額しようとする市町村の考えがあるのかもしれません。さらに、統一化を見越して、茨城県のように県が音頭を取って財源も補助し、子どもの均等割の減額を図るところもあります。
しかし、たとえ統一化を見越した動きであっても、国保加入者にとっては、保険料・税が引き下げられることには変わりありません。
各自治体の国保料・税の引き下げの方法を見ると、保険料・税を直接、軽減するのではなく、いったん加入者が国保料・税を納めた上で、均等割分などを給付するという手法を用いている自治体も目立ちます。こうした手法は今後、統一化が進んだとしても、有効な手立てになるでしょう。
引き下げの願い実り始めている
今回の動きは、「高過ぎる国保料・税を引き下げてほしい」という住民の願いが、各地で実り始めていることの表れと言えます。保険料水準の統一化の流れの下でも、国保改善は実現できるということです。
さらに言えば、統一化の方向であったとしても、”住民の願いがかなう方向での統一”が実現すればいいのです。引き続き、国保改善の要求を都道府県や市町村に突き付けていきましょう。