中小業者の賃上げ対策 直接支援策と公正取引ルールを|全国商工新聞

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 「失われた30年」ともいわれる経済の長期停滞を克服するには、国内消費の底上げが欠かせません。その鍵を握るのは実質賃金の引き上げですが、仕入れ・経費の高騰に苦しむ中小業者が賃上げに対応できるような支援が求められます。
 全商連第56回総会の「私たちの要求」(案)では「中小業者の賃上げを可能にする直接支援を実施するとともに、適正単価と公正な取引ルールを確立すること」を提起しました。消費税減税や社会保険料の事業者負担の引き下げと併せ、労働者を派遣に切り替え、下請け単価を切り下げてきた大企業の身勝手を規制するよう求めています。
 仕入れ・経費の価格転嫁が進まない状況に、公正取引委員会(公取委)も取り締まりを強化し、違法取引の実態が明るみに出ています。3月には、下請法違反で日産自動車を勧告しました。「割戻金」などと称し一方的に減額した下請企業への支払いは、21年1月から23年4月までに約30億2400万円といわれます。同様の取引が数十年、続いてきた可能性もあり、被害はこれにとどまりません。会員制量販店コストコが「協賛金」名目で納入業者20社から商品代3350万円を値引きしていたことも勧告されました。近年5社前後だった勧告は、23年度は13社となる一方、下請法に関する公取委への相談は22年度に1万4千件に上り、明らかにされた違法・不当な取引は、氷山の一角に過ぎません。
 取り締まり強化の中、本田技研工業が、外注先の部品製造用金型への支払い方法を見直すと公表しました。現行の支払い方法は「慣例で24回の分割」というから驚きです。ダイハツ工業の車両の安全性などに関する認証試験不正の背景にも、親会社のトヨタ自動車からの異常な短納期圧力がありました。業界や系列を通じて小規模な事業者に、しわ寄せされることから、同様の被害は広く及ぶと見込まれます。
 「賃上げ・転嫁対策」にとどまらず、不公正取引を抜本的に解消するには規制強化が必要です。行き過ぎた減税で大企業がため込んだ内部留保も、国民生活や中小業者への支援などに還元すべきとの世論を広げ、公正な取引ルールの確立を求める運動を強めましょう。

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