2024年度政府予算案を考える(下) 中小企業対策費11億円、0.6%減 大幅な増額と再建支援へ大胆に組み替えを|全国商工新聞

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一般会計歳出のわずか0.2%だけ

 2024年度予算案で中小企業対策費は1693億円で一般会計歳出の0.2%に過ぎません。前年度比11億円、0.6%の減額です(図1)。企業数の9割、雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者に対し、余りにも少な過ぎる予算額です(図2、3)。

 政府は、基本的な課題認識と対応の方向性として、①物価高や、構造的な人手不足等、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者に対する価格転嫁対策や資金繰り支援、省力化投資支援等に万全を期す②GX(グリーントランスフォーメーション)/D X(デジタルトランスフォーメーション)等といった産業構造転換の中、中小企業・小規模事業者の成長に向けた取り組みを予算・税等の政策手段を総動員して支援。これらを通じ持続的な賃上げにつなげる③事業承継、社会課題解決、工業用水道の整備の支援等を通じて地域経済の活性化を図る―としています

承継相談対策やGo―Tech

 当初予算では、日本政策金融公庫の融資金利引き下げのための補給金が147億円のほか、中小企業活性化・事業承継総合支援事業に146億円、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go―Tech事業)に128億円などが計上されています。
 中小企業活性化・事業承継総合支援事業は、商工会議所等の認定支援機関が、収益力改善や再生支援、後継者不在の中小企業等に事業譲受を希望する事業者とのマッチング支援や事業承継計画の策定等に関する相談を受け、解決に向けたアドバイスを実施するもの。近年、地方において承継相談が増えていることに対応するものです。
 Go―Tech事業は、中小企業が大学などの研究機関と連携して行う研究開発、試作品開発等を最大3年間支援するもので、補助上限額は単年4500万円、3年間で9750万円(通常枠)です。
 また23年度補正予算では、1000億円を手当てした中小企業省力化投資補助事業も実施されます。IoT(モノのインターネット)、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品をカタログに掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにするもので、中小企業庁は「簡易で即効性がある省力化投資を促進する」としています。補助上限額は、従業員数5人以下で200万円(賃上げ要件を達成した場合300万円)などとなっています。

小規模基本法の原則に立ち返れ

 政府はこの間、一貫して「生産性向上」を掲げ、生産性が”低い”事業者に対し、市場からの退場を迫る政策を続けてきました。能登半島地震で被災した小規模事業者、輪島塗の工房などは、生産性を基準にすれば、廃業を迫られることになりかねません。小規模企業振興基本法で「事業の持続的発展」を基本原則に位置付けたことに立ち返り、地域経済を支え、地域社会を形成してきた中小・小規模事業者の価値を再評価し、予算の大幅な増額と再建支援へ大胆に組み替えることこそ、求められています。

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