訪問介護報酬の引き下げ 撤回し小規模業者の危機打開を|全国商工新聞

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 厚生労働省は3年ごとに見直される介護報酬の改定で、訪問介護事業所の基本報酬を2~3%引き下げようとしています。その根拠として「2023年度介護事業経営実態調査」で、全介護サービス平均の利益率(収支差率)が2・4%なのに対し、訪問介護は同7・8%と利益率が高いことを理由にしています。
 しかし、「しんぶん赤旗」が入手した同調査結果資料では、同じ22年度決算で、訪問介護事業者の37%が赤字だったと判明。20、21年度決算でも同じく41%が赤字で、約4割が3年連続の赤字経営でした。「利益率7・8%」も、当事者らは”サービス付き高齢者向け住宅などに併設された大手の収益率が高く、地域を回る従来型でも大手中心の回答だからではないか”と疑問を投げ掛けます。
 「老々介護」やヤングケアラーが社会問題化する中、「在宅介護」の崩壊につながりかねない基本報酬引き下げに、厚労省の審議会で「引き上げ」を強く求めた全国ホームヘルパー協議会や日本ホームヘルパー協会は異例の抗議文を提出しました。23年の訪問介護事業者の倒産は過去最多の67件で、うち96%が資本金1千万円未満、85%が従業員10人未満の小規模事業者です(東京商工リサーチ)。
 厚労省は、2000年4月1日に始まった介護保険制度を「高齢化や核家族化の進行、介護離職問題などを背景に、社会全体で支える仕組みが必要」と説明。家族介護に関わった中小業者からも、介護事業所の設立やホームヘルパーの資格取得などで地域で役割を担うなど、制度への期待が寄せられました。
 しかし、この24年間で、介護保険料は3倍以上に上昇。要介護1、2を保険給付から外すなど制度改悪が続き、「保険あって介護なし、国家的詐欺だ」「人材不足が深刻」など問題が山積しています。
 全国商工団体連合会は、国庫負担を増やすと共に、介護職員の賃上げや介護報酬に出来高払いを加えるなど、小規模介護事業者が「社会全体で支える仕組み」の一員として活躍できる制度改善を求めています。
 訪問介護の基本報酬引き下げを撤回させ、介護保険制度と介護従事者の処遇を改善せよの声を強めましょう。

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