「2・7全国中小業者決起大会」に先立って、参加者は、経済産業省・中小企業庁など8省庁と公正取引委員会に要請書を手渡し、交渉しました。物価高騰の影響を受ける中小業者への直接支援や能登半島地震からの復旧・復興策の拡充、税や社会保険料の強権徴収の是正などを要望しました。
<国会議員要請>業者の要求を政治に届け
【新潟県】やりたい放題の政治変えよう
国会議員要請には、北海道や新潟、神奈川、大阪など全国から約150人が参加。地元選出議員に「消費税減税とインボイスの廃止を」「自民党の裏金事件の追及を」などと訴えました。
新潟県からの参加者は、地元選出の国会議員15人のうち、議員7人と面会し、要望書を直接手渡しました。
井上哲士参院議員(共産)は商売の状況を丁寧に聞き、「業者にはインボイス増税を押し付ける一方、裏金作りでやりたい放題の自民党政治を変えよう」と握手を交わしました。菊田真紀子衆院議員、打越さく良参院議員(ともに立憲)は写真撮影にも応じ、要望を丁寧に聞き取り、「裏金事件を徹底追及する」(菊田議員)、「インボイスは大変だと思う」(打越議員)などと応じました。
【宮崎県】業者の体力を奪った消費税
宮崎県からの参加者は、地元の渡辺創(立憲)、長友しんじ(国民)の両衆院議員と、福島みずほ参院議員(社民・比例、宮崎県延岡市出身)に、全中連の要請書と二つの国会請願署名(「ガソリン税凍結、消費税減税、インボイス制度廃止を求める」請願927人分、「現行の健康保険証を残してください」国会請願395人分)を携えて懇談、要請しました。
福島議員は消費税減税について触れ、「消費税導入から30年余りの歴史は、中小業者の体力を奪った歴史そのものだ」との訴えに「まさにその通り。今度の国会質問で使いたいフレーズ」と応じました。
参加した40代の建築業者2人は、物価高騰の影響や「現場はあっても、職人が足りずに、海外から労働者を雇用せざるを得ない」現状を訴えました。
渡辺議員が保険証の請願で、福島議員が消費税・インボイス署名で紹介議員を引き受けました。
<省庁要請>苦境の業者へ支援迫る
【経産省・中企庁・資源エネ庁】物価高・被災支援を インボイス負担増訴え
経産省・中企庁・資源エネルギー庁では、能登半島地震からの再建をめざす中小業者への直接支援や物価高騰の下での資金繰り支援、消費税インボイス制度を理由とした不公正取引の規制、電力大手各社が行う太陽光発電などの再エネ事業者への出力制御の中止などを求めました。
札幌市の尾谷幸子さん=スナック=は「新型コロナが感染症法上の5類に引き下げられても、ススキノにはお客が戻らず、今度は物価高騰で本当に大変だ。各種給付金や『ゼロゼロ融資』は助かったが、今は返済がきつい」と実情を訴えました。中企庁は「借り換え保証制度を活用し、元本返済を先延ばしする間に、収益力を改善させてほしい」と述べるにとどまりました。
長崎市の徳永隆行さん=電気通信工事=は「仲間の太陽光発電事業者は、月に12万円の売り上げがあったが、九州電力の出力制御で2万円に落ち込んだ。これではローンが払えない。小規模な再エネ事業者が商売を続けられるようにしてほしい」と求めました。資源エネルギー庁は「電気の需給バランスを見て調整しているが、制御量を減らせるようにしたい」と応じました。
インボイス制度や電子帳簿保存法によって実務量が増えた実態も伝え、関係省庁に見直しを働き掛けるよう迫りました。
【国税庁】違法な調査をするな 「予納は納税者の判断で」
予納申出書で1550万円を一括納付させられ/民商退会を強要
国税庁には、違法・不当な税務調査の是正や、4月に始まる税務相談停止命令制度を拡大解釈して納税者の学び合いの活動に介入しないことなど9項目を要請しました。
沖縄県の参加者が「税額が確定しない段階で、調査官が作成した予納申出書により1550万円を一括納付させられた。根拠も示さず返還にも応じない」と告発。庁側は一般論としながらも「予納は納税者の判断で届け出て行うものであり、過誤納があれば還付することもある」と答え、事実経過を調査し、是正を求める個人請願を受け取って「関係局に伝える」ことを約束しました。
また、名護民主商工会(民商)の会員に対する税務調査の中で、「国税事務所から民商をやめろと言われた」「脱会した証明書がないと調査が終わらない」と署員に迫られ、退会を余儀なくされた事例を告発。「憲法21条の結社の自由を踏みにじり、公権力が民商をやめろと迫ったのは大問題だ。真相を明らかにし、謝罪せよ」と追及しました。
庁側は「当局が退会を強要することはない。退会証明書を調査終了の要件とすることもない」と回答し、出された請願書に対応すると述べました。
そのほか、「税務署が推奨するコンビニ納付で消費税の中間納付を行った民商会員が、補助金の申請に必要な納税証明書を求めたら『3週間かかる』と言われ、申請に間に合わなかった」「任意調査の説明がなく、通帳を用意しておけと一方的に押しかけ、調査する前に“あなたは悪質”だからと1千万円の追徴をほのめかされた」「順守すべき税務運営方針を見たことがないという調査官がいる」など、違法調査の実態を告発し、納税者の権利を尊重する税務行政の実現を求めました。
【財務省】今すぐ消費税減税を 「検討せず」と要望に背を向け
財務省では、インボイス制度の廃止や消費税減税、納税者の権利憲章の制定を求めました。
省側は「複数税率の下で、インボイスは必要。2割特例による税負担の軽減や、免税事業者との取引でも6年間は仕入れ税額を控除できる措置がある。その間に価格交渉などの対応を」「消費税は社会保障財源であり、減税は検討していない」などと回答し、要望に背を向けました。
参加者は「軍事費に膨大な税金が使われ、暮らしや社会保障の予算が犠牲になっている」「大企業には優遇税制で内部留保が積み上がっている。消費税ではなく、大企業にこそ応分の負担を求めるべきだ」と重ねて要望しました。
【金融庁】資金繰り支援を求め 「柔軟な対応を要請」
金融庁では、物価高騰に直面する中小業者の要望を踏まえた、きめ細かな資金繰り支援を行うことなどを要請。全商連の「物流2024年問題」の事業者アンケートを示しながら、運送業者の資金繰りの要求に十分に応えることなどを求めました。
庁側は、中小業者の現状について「物価高騰や人手不足の厳しい状況にあると認識している。新規融資や条件変更について、最大限柔軟な対応を行うよう累次にわたり要請している。現場レベルで浸透するよう、万全を期す」と回答。能登地震の被災事業者の支援については「災害救助法の適用がなされた地域については、被災者の立場に立ったきめ細やかな対応をするよう『金融上の措置要請』を発出している」と述べました。
金融機関のコロナ借り換え保証制度の伴走支援の強化については「積極的に提案し、事業者に寄り添った対応を徹底するよう金融機関に要請している」としましたが、参加者は「この1年で何人も申し込んだが、成功しなかった」と現場の実態を伝え、「5年先の計画が必要など、小規模事業者にとっては使いにくい点がある。活用されない実態をつかみ、改善してほしい」と要望しました。
【厚労省】診療報酬引き上げて マイナ強制に抗議
厚生労働省では、医療の診療報酬の引き上げを求め、利用者負担増をやめるよう要望しました。「診療報酬は0・88%しか引き上げず、3~5%の賃上げを求めている一般水準と乖離している。低く見積もり過ぎだ」(保団連)と批判。「後期高齢者医療についてアンケートを実施し、保険料が高いという声が78%もあった」(千葉県)などの発言が相次ぎました。
国民健康保険では、「滞納に対し、“差し押さえありき”の対応が横行している。指導すべきだ」(群馬県)という現場の声に対し、「省として個別の対応は難しいが、丁寧に接していきたい」との返答も。「国保会計の法定外繰り入れをやめるよう国から市町村に圧力をかけるのは、やめるべきだ」とも求めました。
社会保険料では、「渋谷区内の2万数千社のうち、7割が1人か家族経営だ。“保険は、ぜいたく”とならないような仕組みを」(東京都)と参加者が訴え、小企業の負担を減らす仕組みや直接支援制度がある諸外国の例を示し、環境整備を求めました。
個人番号(マイナンバー)カードの運用では、「現行の健康保険証の存続」を強く要請。「全国110以上の議会で保険証存続を求める意見書が採択された」と、マイナ保険証の取得強制をやめるよう求めました。
【総務省】強権的徴収をやめよ 「個々に把握せず」
総務省では、地方自治体の地方税の強権的な徴収行政の是正や政治資金パーティー禁止などを要請しました。
省側は徴収行政について、「滞納者の個々の事情を確認した上で、これまでの滞納実績などを踏まえて臨むことが基本」「毎年、地方税関連の事務執行に当たっての留意事項などを示した通知や地方税法の改正の施行通知(大臣通知)を発出し、適切な執行に努めるよう示している」と回答。参加者が「一括で払えなければ、売り上げを全額差し押さえると言われた」「納付の相談中に差し押さえられた」などの事例を告発すると、「そういう声は他団体からも聞いているが、個々の事案を把握する立場にない」との回答に終始。個別の事案を十分把握せずに通達を発出していることが明らかになりました。
政治資金パーティーについては「再発防止や個別事案を扱う立場になく、各党や各会派で議論し、立法府で対応することになる」と回答しました。
【内閣府】地方交付金拡充こそ 「切れ目なく支援」
内閣府には、①地方創生臨時交付金・重点支援地方交付金の抜本拡充②物価高騰の影響を解消する中小業者支援③大規模災害の被災者への支援を抜本的に強化する④大阪・関西万博を直ちに中止し、被災地の復旧・復興に全力を尽くす―ことなどを要請しました。
京都市から参加した宮村正人さん=塗装=は「材料費は2割以上値上がりしているが、価格転嫁し切れず、利益が減少している。全ての事業者に行き渡る支援を」と訴えました。
府側は「重点支援地方交付金の5千億円はまだ使い切っていない。各自治体に、地域の実情に応じた支援策の策定を求めており、引き続き周知を図る」とし、「切れ目のない支援ができるようにしたい」と述べました。
被災者生活再建支援制度の改善を求めると、「まずは現行制度の見舞金をしっかりと届けることに注力したい」とし、増額については「国と都道府県とで実施する制度であり、県からの要請がなければ難しい」と答えました。避難所の運営については、「発災当初は、想定以上に避難者がいたこともあって、物資の不足やトイレの不足などが起こったが、現在では解消している」と述べ、「災害救助法で定められた食費の基準も、物価の上昇なども加味し、自治体の要望もあり、増額もしている。引き続き、各省庁・自治体と協力しながら、被災者の生活環境改善に努めていく」と約束しました。
【公正取引委員会】インボイス不当な取引正せ 「厳正に対処する」
公正取引委員会では、価格転嫁やインボイス登録を巡る不公正取引への対策、コンビニなどフランチャイズ本部による加盟店への優越的地位の乱用を防ぐことなどを求めました。
インボイス制度に関連して、報酬から一方的に消費税分を差し引かれる事例や免税事業者に消費税分を返金するよう求められた事例など、不当な取り扱いが起きていることを告発。公正取引委員会の対応を強く求めました。担当者は「独占禁止法や下請法違反に当たる行為については厳正に対処する」と回答。
価格転嫁についてでは「実態調査でも、労務費の価格転嫁が進んでいない状況が明らかになっている。昨年11月に『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』を内閣官房と連名で公表した。中小業者の労務単価の確保につながるように、指針の周知や働き掛けを強める」と述べました。
>> 【全中連決起大会】インボイス廃止、消費税減税を 大軍拡やめ被災地支援に