現行の健康保険証を12月2日に廃止し、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」に一本化することを、昨年12月22日に閣議決定した岸田政権。しかし、マイナ保険証の利用率は12月時点で約4・29%にとどまり、「健康保険証の存続を求める意見書」などを採択した自治体は110を超えました(1月5日時点)。各地の民主商工会(民商)も意見書採択に力を合わせています。
埼玉・秩父民商など 皆野町 尽力実り全会一致で採択
埼玉県皆野町は12月13日、本会議で「改正マイナンバー法を見直し健康保険証の継続を求める意見書」を全会一致で採択しました。秩父民商も加わる秩父社会保障推進協議会(社保協)が11月10日に請願書を提出していたもの。民商の小林昇会長=精肉販売=は「行動すれば、結果につながる。みんなの力で勝ち取ることができた。要求が実り、とてもうれしい」と語りました。
社保協は9月から、意見書の採択に向け、全12人の議員を訪問。日本共産党の常山知子町議と新社会党の内海勝男町議の賛同は得られたものの、他の10人とは「私にも考えがある」「仲間がいるので勝手に行動できない」「勉強中」などの理由で会えませんでした。そこで、「マイナ保険証」の問題点をまとめた資料と各地の自治体で意見書が採択されたことを伝える新聞記事、11月時点での採択自治体一覧表(91自治体)を郵送し、賛同を求めました。
常山町議は、請願書が付託される総務教育厚生常任委員会(定数6人)の常任委員長を務めていることから紹介議員になれず、内海町議が紹介議員を引き受けました。
12月13日の同委員会では内海町議が「多くの国民が不安を抱え、患者も医療機関も望んでいないマイナ保険証への一本化を見直し、現行の健康保険証を残すよう求める」などと趣旨説明しました。委員からも「意見ありません」「賛成」との回答が得られ、全会一致で可決。同日の本会議でも、常山常任委員長の報告に異議がなかったため、全会一致で採択されました。
新潟・新発田民商 聖籠町 役員会で議論重ねて
新潟県聖籠町は12月14日の本会議で「健康保険証の廃止をしないよう求める意見書」を賛成多数で採択し、同18日に衆参両議院などに提出しました。新発田民商が同1日に請願し、国への提出を求めていたもの。
採択を受け、民商の聖籠支部長も務める中村登会長=建築=は「三役会や支部の会議のたびに、健康保険証が無くなったら困るよねという話が出ていた。町議の多数が賛同してくれて、うれしい」と喜びを口にしました。
採択に向けて、民商の婦人部長でもある中村恵美子町議(共産)が議員を訪問し、資料を配って説明。自民、無所属の町議2人が紹介議員を務めてくれました。
請願が付託された厚生産業常任委員会で、中村町議は「マイナ保険証では、お年寄りなど顔認証や暗証番号の入力が難しい人もいる。高齢者施設の人も管理が大変だと聞く。『マイナ保険証にしたくない』という人には、現行の健康保険証を残すべき」と賛成意見を述べました。「国が進めていることだから」と反対意見も出ましたが、賛成多数で可決。本会議でも賛成多数で採択されました。
青森・五所川原民商 五所川原市と鰺ケ沢町 与党議員にも賛同求め
青森県五所川原市と鰺ケ沢町は12月14日、「健康保険証の廃止をしないよう求める意見書を政府に送付することを求める請願書」を各議会で採択しました。いずれも、五所川原民商が11月21日に提出していたもの。坂本正輝会長=保険代理=は「現行の健康保険証を無くして、トラブル続きのマイナ保険証だけになったら、混乱を招くだけ。役員会で話し合って、請願運動を進めてきたので、採択されてうれしい」と喜びを口にしました。
五所川原市議会では、日本共産党の花田勝暁市議が紹介議員となり、会期が始まる前に開かれた与党議員のミーティング終了後に請願内容を説明し、賛同を求めました。12月7日の民生文教常任委員会では可否同数となり、委員長決済の結果、可決に。
12月14日の本会議で花田市議は「他人の医療情報が誤って、ひも付けされた事例も相次いでおり、生命にかかわる問題として不安が広がっている」「全ての市民に必要不可欠な健康保険証の廃止は、マイナンバーカード取得は『任意』と定めたマイナンバー法に反する『強制』だ」と賛成意見を述べました。
自民公明クラブなどが「政府が決めたこと」と反対しましたが、12対9で賛成多数となりました。
鰺ヶ沢町議会では議会運営委員会で討議。12月14日の本会議へ議案として提出され、採決なしで原案可決となりました。
坂本会長は「全ての人が安心して医療を受けられるよう、担当する2市5町1村に現行の健康保険証存続を求める請願書を提出した。全自治体での採択をめざしている」と話しています。