1日に発生した能登半島地震から20日余り。民主商工会(民商)会員の被害も明らかになりつつある中、石川県商工団体連合会(県連)は10日、亀﨑正藏副会長=建築=と能登民商の中村光男副会長=左官=ら3人で、被害が特に甚大な輪島市内で義援金と支援物資の配布を行いました。11日は3人に加えて県連の井上英明事務局長も同行しました。会員に被災状況などを聞き取りながら水・食料、衣類や衛生用品などを届け、「断水が続く中、水や食料の支援は助かる」「全国の仲間に感謝したい」と喜ばれました。全国商工団体連合会(全商連)や全国の県連・民商からは、支援物資や義援金が寄せられ、復旧をめざす仲間に勇気を届けています。
義援金と物資を配布 石川県連 被害甚大な輪島市内へ
約200軒焼失
能登民商事務所(かほく市)を朝7時半に出発し、輪島市に到着したのは午後2時。大規模火災が発生し、約200軒が焼失した朝市通り近くでは行方不明者の懸命の捜索が続けられていました。
会員の被害が集中している輪島支部。会員48人のうち、47人と連絡がつき、人的被害は報告されていないものの、家屋・事業所の多くが全・半壊しています。
10、11の両日、吉田正さん=農機具販売=が提供してくれた店舗の倉庫で支援物資の配布を行いました。吉田さんは「出先から車で輪島に戻る途中で地震が起きて、山が崩れて道が通れなくなった」と言います。自衛隊が作業して深夜に通れるようになって、市内に入りましたが、目にしたのは大火災でした。幸い店は延焼しなかったため、民商の依頼に応え、場所を提供しました。
「近所のつぶれた家から『助けてくれ』という声が聞こえて、通報して、1人は助けられたけれど、助けられなかった人が何人もいる。災害への備えが全くできていなかった」と壮絶な体験を語り、「地震から2週間近くたっても、ほとんど景色も変わらない。県や市から今後の方針も発表されない。震災がれきの処分もままならない」と行政の対応の遅れにいらだちを見せています。「いま必要なのは、市民に再建のための勇気を与えること。少しずつでも復旧に向けて前に進まなければ心が折れてしまう」と、政府に対し、一日も早い復興計画の策定を求めました。
地場産業の危機
「水と食料をたくさんもらえて、これで一安心だ」と笑顔を見せたのは、奥田志郎さん=漆器製造・販売。「朝市通りからすぐの、一人で暮らす自宅兼工場は、火災は免れたが、揺れで、もう使えない。中はひどい状態」で、現在は市内の避難所を出て、自宅前に停めた軽乗用車で避難生活を送っています。避難所では「朝は、あんパン一つ、昼は無しで、午後に炊き出しがあるくらい」と現状を明かし、「備蓄が全く足りていない。避難所で、しっかりした食事が取れるようにすることが何より大事だ」と改善の必要性を感じています。地場産業である輪島漆器の未来について、「それぞれの事業者の規模が小さすぎて、再建する体力が残されていない。もともと衰退していたところに、今回の地震がとどめを刺したようなもの」と表情を曇らせました。
迅速支援に感謝
全商連は6日、中山眞常任理事ら3人が東京から車で7時間かけて、能登民商事務所に義援金と支援物資を届けました。兵庫県連からも事務局員2人が、食料やカセットコンロなどを満載した車で到着していました。小松民商には、東京・清瀬久留米民商の渡邊恵司副会長が自ら調達した水をワゴン車で届けました。小松民商はLINEで会員に物資提供を呼び掛け、32人から支援が寄せられています。
能登民商の橋本庄平事務局長は「輪島支部には48人の会員がいるが、いまだに連絡がつかない人も残されている。火災が起きた朝市通りでは、会員1軒が全焼した」と被害状況を報告。
県連の宮田保広会長=鉄工=は「迅速な支援はありがたい」と感謝を述べ、「県内でも南部の加賀地域は被害が少なく、物流も元に戻っている。被災がひどい能登地域でも状況は日々変わっていくので、情報をつかんで時々に必要な支援を継続したい」と述べました。
兵庫県連の畑田貴昭事務局次長は「今は断水が続いていて水が足りないが、ライフラインが復旧すれば、水は必要なくなるなど、被災者の要望は日々変化する。あれもこれもは難しいので、今できる対応に全力を尽くすことが大事だ」と、東日本大震災などの被災地支援の経験をアドバイスしました。
全商連の中山常任理事は「5日に全商連が行った金融庁と国税庁ヒアリング(>>詳細はこちら)の結果を知らせ、手形決済の期日や、年末調整の納税・申告について、気にすることなく生活再建に集中してもらうよう伝えることで安心してもらうことが大切だ」と述べ、ニュースを発行し会員に届けることを提案。「加賀地域では店も開いているし、必要なものは調達できる。求められているのは募金活動だと思う。全国にも呼び掛けを強化したい」と、今後も支援を継続することを約束しました。
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