物価高騰に伴う急激な仕入れ値上昇が長期化する下、従業者規模5人以下の小企業者の収益低迷が続いている実態が、全商連付属・中小商工業研究所が10月20日に公表した「2023年下期(9月)営業動向調査」で明らかになりました。仕入れ経費の増大に見合う単価・マージンの確保が十分でなく、価格転嫁の困難性が、収益低迷の要因とみられます。国・自治体による直接支援や資金繰り支援が緊急に求められています。
全商連付属・中小商工業研究所 2023年下期営業動向調査
同調査は、従業者規模6人以上と5人以下の小企業者で比較分析。23年下期の「売上DI値」は、6人以上が9.7に対して5人以下は▲42.5、「利益DI値」は6人以上が▲7.3に対して5人以下が▲52.1(図1)。5人以下は、経営困難な状況から脱しきれずにいます。
物価高騰に伴い、「原材料・商品の仕入値DI値」の上昇(87.5)と「経費の増大」(35.1%)が長期化しています。こうした中、中小商工業者は「経費節減」(38.2%)や「販売価格(単価)引き上げ」( 32.1%)を中心とした経営努力を強めています。その反映として、「単価・マージンDI値」(11.1)は、3期連続で01年の統計開始以来の最高値を更新しています(図2)。「単価・マージンDI値」を比較すると、6人以上は30.7に上昇し、5人以下は7.3と初めてプラスに転じています。それでも、6人以上と5人以下との間で、売上DI値が52.2ポイント、利益DI値が44.8ポイントもの差が開いているのは、5人以下の小企業者においては、仕入れ経費の増大に見合う単価・マージンの確保が十分ではなく、価格転嫁の困難性が見て取れるからです。中小商工業者の実情に即した、国と自治体による直接支援や資金繰り支援が、緊急に求められています。
同調査には、「インボイス導入のタイミングで廃業する予定の年配の業者が、身の周りに増えてきた」(静岡、家具・木工・紙製品)、「50年近く仕事をしている。インボイス制度で、仕事を通じての人間関係が崩れていくように思う」(鹿児島、職別工事業)という切実な実態が寄せられています。インボイス制度は廃止すべきです。
DI値
ディフュージョン・インデックスの略語。企業の景況感などを「良い」「悪い」といった定性的な指標で数値化したもの。「良い」と回答した企業割合(%)から「悪い」と回答した企業割合(%)を差し引き、プラスなら改善、マイナスなら悪化等と判断する。景気局面等の判定に用いる。
【2023年下期(9月)営業動向調査】
〈調査期間〉
23年8月17日~9月16日
〈有効回答〉
665人(調査対象モニター人数:47都道府県1158人、有効回答率57.4%)
〈回収方法〉
郵送記入
〈従業者規模別(事業主本人を除く従業者数)〉
従業者5人以下83.9%、従業者6人以上16.1%
〈業種構成(新6業種分類)〉
建設業(建築設計含む)29.1%、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業9.9%、金属製品・機械器具製造業14.0%、流通・商業20.2%、宿泊・飲食業8.1%、サービス業18.7%
〈事業形態〉
個人60.4%、法人39.6%