業者は悲鳴廃止こそ
岸田文雄政権が10月1日から実施を強行した消費税インボイス(適格請求書)制度を巡り、混乱とトラブルが続発しています。各地の民主商工会(民商)は、中小業者に新たな増税を押し付けるインボイス制度に抗議し、廃止を求めるとともに、トラブル防止の活動に取り組んでいます。
「値引き」「取引中止」次々
「接待に使えない」と滋賀・長浜民商会員
滋賀・長浜民商には、インボイス導入以後、問い合わせがますます増えています。
あるスナックでは「接待に利用してくれている客から、インボイスに対応しているかどうかの問い合わせが相次いでいる」と話します。お客から「インボイスを発行していないと、接待に使えない」とはっきり言われることもあるため、「10月になってから、インボイスの登録申請をした」と述べ、「本当に小さい業者泣かせ。もうやめたくなる」と嘆きました。
会員の大工は「下請けの中で、インボイスを登録していないウチと、もう一軒だけにピタッと仕事が来ない。でも、登録しても、消費税なんて払えない。こんなひどい制度はやめるべき」と憤っていました。
「少額特例」が通じず 都内の小売り、飲食
「番号教えろ」激高
東京都内の事務用品販売業者には「買い物したものだが、お宅のインボイス番号を教えろ」との電話が。店主が「少額特例で、1万円以下ならインボイスは要らない」と応じると、相手は「そういうことではない、とにかくインボイス番号を教えろ」と激高。「うちはインボイス登録していない」ときっぱり伝えると、相手は電話を切りました。
「10%値引き」要求
東京・北区の飲食店では、近くの企業の常連客から、インボイス登録番号の入った領収書の発行を求められました。店主が「登録していません」と応じると、「インボイスを取っていないなら、飲食代10%の値引きを」と求められました。店主は「1万円以下なら、全額を仕入税額控除できる」と伝えましたが、近隣企業の会社員の利用も多く、毎回の説明が「大変だから」とインボイス登録しました。
お客の理解促す工夫も 大阪・住之江民商ニュースにステッカー
大阪・住之江民商は、民商ニュース「すみのえ」(下の写真)に、切り取って使用できる「インボイスステッカー」を掲載。「インボイス登録しない場合、店内にお知らせを貼っておくことでお客さまの理解がスムーズになります」と活用を勧めています。
きっかけは、民商が3月28日に行ったインボイス勉強会でした。参加した会員=飲食店=が、インボイスを登録しないと決断。学んだことを生かして、「領収書につきまして」と題する張り紙を自作し、店に張り出しました。
張り紙には「当店は、インボイス制度に登録しておりません」「登録番号の記載はございませんのでご了承ください」と明記。お会計が1万円を超えることが多いため、「消費税仕入控除には使用できません」「所得税所得控除には使用できます」と記しています。この張り紙を見た吉田豊事務局長が「これはいい!民商ニュースで紹介させてほしい」と取り組みを拡散しました。
ニュースの配布後、民商には「うちも張りたい」との問い合わせが来ています。インボイスの相談に訪れた会外の業者3人にもニュースを見せると、「これを張っておきます」との反響が広がっています。
登録申請書に「廃止を」 大分・豊肥民商
大分・豊肥民商は9月から、心ならずもインボイス制度に登録せざるを得なくなった会員に呼び掛け、鈴木俊一財務相に請願書を送付しています。
その中では、税務署に出すインボイスの「登録申請書」の参考事項欄に、抗議の一文を書く人が続出。「ぎりぎりまで待ったけど…」と悔しそうに登録申請を書いたNさん=建設=は、申請書の参考事項欄に「一刻も早く廃止を!!!」と思いの丈を記入しました。
当面は登録をしないことにしたIさん=農業=は、鈴木俊一財務相と岸田文雄首相に送る抗議はがきに、「やめてください!インボイスは必要ない!」と力を込めて書き込みました。
「ぜひ張りたい」喜ばれ 滋賀・湖東民商
滋賀・湖東民商は「STOP!!インボイス当店はインボイス対応しません。消費税は5%に減税を!」と書かれたステッカー(ラミネート加工したA4判の張り紙)4種類を作成。インボイス登録をしない会員の店頭や店内に張り出す取り組みを進めています。インボイス実施後に想定される、お客とのトラブルを避けようと考えてのもの。
ステッカーを張った店は10軒ほどになり、八日市エリアで理容業を営む会員は「お客さんが入って、張り紙を見てくれたら助かるよ」と歓迎。既にステッカーを張り出した会員からは「お客とインボイスが話題になる」と話します。
10月以降、スナックの会員から「インボイス登録しなきゃいけないの」との相談があり、少額特例などの経過措置を説明した後、「大丈夫、これを張っておいて」とステッカーを勧めると、「ぜひ張りたい」と喜ばれました。
「少額特例」の張り紙も 青森民商
青森民商は、民商ニュースで「インボイス関係の貼り紙差し上げます」と告知。インボイスを巡る客とのトラブルを避けるために、「『少額特例制度』について」「インボイス登録店」「インボイス未登録店」の3種類の張り紙の活用を呼び掛けています。
きっかけは、免税事業者である会員の飲食店が、お客から「会社の経費で落とすので、インボイス番号が書かれた領収書を」と求められたことでした。この時は、店主が少額特例について説明すると、「登録してないのなら、領収書はいいです」とお客は納得。正規の料金を払ってくれました。
その後、インボイス対応をお客に知らせる掲示物が欲しいとの提案を受けた事務局。さっそく張り紙を作成し、民商ニュースに掲載することになりました。