「廃業続出の危機」訴え 自交総連・東京地連 独禁法違反と告発
「任意のはずのインボイス登録を事実上、強制するのは、おかしい」―。地域住民の「足」となってきた個人タクシー事業者が、1日から始まった消費税インボイス(適格請求書)制度によって、存続の危機に立たされています。自交総連・東京地方連合会(東京地連)はインボイス実施直前の9月28日、国会内で記者会見を開き、免税事業者に対する個人タクシー事業協同組合の不当な圧力を告発。東京地連加盟の東京個人タクシー労働組合の秋山芳晴執行委員長は「このままでは、個人タクシー事業者の廃業が続出する」と危機感をあらわにしました。
都内で個人タクシーを開業する場合、新規に営業許可を取得することは困難なため、ほとんどのドライバーは全国個人タクシー事業連合会(全個連)=でんでん虫グループ(かたつむり形の「あんどん」)か、日個連事業協同組合(日個連)=ちょうちんグループ(同ちょうちん形)のいずれかに所属するドライバーから許可を譲渡・譲受されて開業します。
インボイス制度の実施に向けて、両グループは加盟の際に、インボイス登録を条件とするなど、ドライバーに対し、不当な圧力ともいえる強硬な手段に訴えています。
秋山委員長は「独占禁止法8条で、『会員事業者・組合員等の機能又は活動の不当な制限』を禁止している。今回の取り扱いは独禁法に抵触するのではないか」とし、①インボイス未登録者は、あんどん(かたつむり、ちょうちん)を使わせず、免税事業者を表す新たな表示灯(かまぼこ型)を使わせる②キャッシュレス決済機を貸与しない③タクシーチケットの決済を受け付けない(消費税分2%を手数料に上乗せする)―などの不当な取り扱いをやめるよう求めました。
東京地連の林悦夫書記長は「国土交通省はタクシーを公共交通機関だと言うが、東京都は認めていない。公共交通機関と言うなら、運賃3万円まではインボイス不要のバス・鉄道と同様に扱うべきだ。政府は経過措置で負担軽減と言うが、インボイスを中止する以上の支援はない」と強調しました。
登録をせずに営業を続ける
東京・足立東民主商工会(民商)会員で25年間、ちょうちんグループで個人タクシーを営業してきたNさんは、インボイス登録をせずに営業を続けています。「組合からは、ちょうちんを外すよう言われていますが、『かまぼこ』にはしたくありません。ちょうちんは信頼の証しだと思って営業してきたからです。外せと言われるのは心外で、どうしても納得できない」と怒ります。
仲さんの年間売り上げは400万円前後。地域の高齢者の病院の送り迎えなどがメインで、車両も車いすのままで乗り込めるユニバーサルデザインのワンボックスにしています。インボイス付きの領収書が必要な客はほとんどいません。「10月1日から2週間ほどたったけど、お客さんからインボイスを求められたことは一度もない」と言います。
「組合員の中には、インボイスを機に廃業した人もいる。本来、個人タクシーは自由な働き方ができることが魅力なはず。私も法人で15年働いて個人開業した時、何とも晴れやかな気持ちになったことが今でも忘れられない。まだ働ける人たちが、税制によって廃業せざるを得ないことが無念です」と語ります。
「ちょうちんも、かたつむりも、不当な取り扱いをやめてほしいし、そもそもインボイスが無ければ、こんなことにはならない。インボイスは即時廃止してほしい」