「税金の民商」本領発揮 納税者権利守る運動を 全商連 第21回税金問題研究集会|全国商工新聞

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 全国商工団体連合会(全商連)は7月23日、東京都内で第21回税金問題研究集会(税研集会)を開きました。昨年4月にオンラインで開催して以来の1年3カ月ぶりで、リアル開催は2017年以来、6年ぶりです。

一堂に会して学ぶ

6年ぶりリアル開催の税研集会で、あいさつする太田会長

 10月の消費税インボイス制度の実施強行まで69日、来年4月には税務相談停止命令制度(命令制度)が施行されるという下で開かれ、45都道府県から参加した307人は「10月に実施すべきは、インボイスではなく消費税減税」「『税金の民商』の本領を発揮し、納税者の中に打って出よう」の思いを新たにしました。
 太田義郎会長が主催者あいさつ。安保3文書の閣議決定や敵基地攻撃能力の保有、軍需産業支援法など、岸田政権の大軍拡を批判し、「今後、狙われているのは大増税だ。憲法の立場に立ち、納税者の権利を守るために、学び合おう」と呼び掛けました。
 日本租税理論学会事務局長の望月爾・立命館大学教授が、「納税者の権利保障と税務援助をめぐる世界の動向」をテーマに講演。主要各国で納税者権利憲章が制定されている状況を紹介し、「日本の税務行政は、いまだに納税の義務を一方的に課す立場を堅持し、国際的な潮流から大きく遅れている」と指摘しました。「日本でも、国際的な“ミニマムスタンダード”である納税者権利憲章の制定・導入が急務だ」と強調しました。
 中山眞常任理事が報告と問題提起を行いました。「自公与党と維新、国民民主が、平和国家を戦争する国へとつくり変えようとする中で、消費税増税を招くインボイス制度に反対し、税制や税務行政の民主化を求める民商などを弱体化させようと命令制度が強行された」と警鐘を鳴らしました。
 ①消費税減税、インボイス実施中止の運動②厳罰化と強権化が進む税務行政とのたたかい③税務相談停止命令創設後の税務行政とのたたかい―の三つの運動を提起。「『10月実施はインボイスではなく、消費税5%への減税』の声を大きく広げよう」と述べるとともに、直面する対策として「インボイス実施中止の立場を堅持しつつ、営業を守ることを最優先に考えて対応しよう」と呼び掛けました。税務行政とのたたかいでは、①納税者の権利を守る運動の重要性をつかむ②納税者の権利と、それを守る民商などの存在を広く知らせる③ひるまず自主申告運動に磨きをかける―ことが重要だと強調しました。
 「今、多くの納税者が自分の悩みや苦しみに寄り添ってもらえる相談先を探している」と述べ、「全ての納税者に『税金の民商』を知らせることが求められている」と訴えました。
 インボイス制度を考えるフリーランスの会の小泉なつみさんが特別報告(下の別項に要旨)を行い、5人が取り組みを報告しました(左の別項)。
 質疑・討論を踏まえ、浦野広明税理士が特別発言。「『税制改革法』(88年)は『消費税は、課税の累積を排除する方式によるものとする』としている」と指摘し、「納税者には、仕入れ税額控除をする権利があることを念頭に置く必要がある」と強調しました。
 服部守延税金対策部長が閉会あいさつ。「『税金の民商』の本領を発揮し、仲間増やしの取り組みを進めよう」と呼び掛けました。

インボイス中止に

 「世界の主要国で日本だけが納税者権利憲章が無いと聞き、恥ずかしくなった」と話すのは、長野民商の中山かおりさん=フリーランス。STOP!インボイスの小泉さんらの活動にも励まされ、長野市議会に要請に行ったものの、「全くインボイスを知らない。消費税は『預かり金でしょ』みたいな対応で、否決された」と憤ります。「インボイス実施まで2カ月ほど。マイナンバーカードのように、政府のやることは信用できない。早くやめさせたい」
 熊本民商の二宮久也副会長=グラフィックデザイナー=は開口一番に、「久々に一堂に会して、学び合えて良かった。このような機会を増やしてほしい」と満足そう。「フリーランスとしてインボイスは深刻な問題だ。会員も悩んでいる。学習会をもっと開き、問題点を伝えていきたい」と語りました。

多様性の破壊 許せない

インボイスを考えるフリーランスの会 小泉 なつみさん

 フリーランスは、もしもの不安を常に抱えながら仕事をしている。「好きな事をしているのだから」という、強い自己責任を感じさせられてきた。スキルが無くて、仕事が切られるのは覚悟ができている。でも、インボイス制度という請求書の“紙切れの問題”で切られるのは納得できない。
 消費税は付加価値に課税するものだが、私たちの仕事は創造性、無から有を生み出すのが付加価値だ。そういうクリエイティビティーにペナルティーを与え、多様性を破壊しようとする日本政府は許せない。
 インボイス実施まで70日を切っているが、自ら勉強会を始めるなど、反対に立ち上がる人が増えている。9月4日に再び行動を予定しているが、メディアの問い合わせも増えてきた。
 民商・全商連の皆さんが培ってきた、自己責任の対極にある運動の背中を追って、今後も連帯していきたい。

【活動報告】自主申告運動強め

 インボイス中止を求める自治体請願や、自主記帳・自主計算・自主申告の取り組みなど、5人が活動報告を行いました。

 高知県連の入江博孝事務局長は、県内の約6割の自治体でインボイス中止・延期の意見書採択を勝ち取った運動を報告。「議員に制度を理解してもらうため、県連や民商の学習会に参加してもらい、連携した。農業など事業を営んでいる議員への働き掛けが効果を発揮し、道の駅など地域経済にも大きな支障が出ると強調した。今年1月と3月、地元紙に学習会を知らせるチラシ28万枚を折り込み、会外から57人が参加した」と述べました。

 インボイス相談会で入会者を迎えている沖縄・北那覇民商の西中間武海副会長は「県内の全41自治体にインボイス中止を求める陳情を提出し、9自治体で採択された。各業界など県内212団体にも要請し、団体署名が多く寄せられている。『インボイス相談は民商へ』を徹底宣伝し、説明会には会外から156人が訪れ、入会が相次いでいる」と胸を張りました。

 会員同士で学び合い、教え合う自主申告運動を前進させてきた大阪・摂津民商の坂本雅義会長は「毎年、会員550人ほどの確定申告の相談を受けてきた。コロナ禍を機に、事務局員の個別対応から、予約制の相談会へと切り替えた。役員が参加を訴え、みんなで学び、教え合う活動に転換した。個別相談は2年前の300人から50人まで減り、3・13重税反対行動への参加者が3倍化するなど、会員の自覚が高まった」と発言しました。

 新潟・魚沼民商の須田光則事務局長は「“民商の請け負い体質の改善を図ろう”と総会で決め、4支部で毎月、パソコン記帳会に取り組んできた。若手専従者の要望からスタートし、参加者の入れ替わりもありながら続けている。民商の自主計算ノートで整理してから、パソコンに入力している。商売の情報交換の場ともなり、楽しい活動の中で、役員も生まれている」と、自主記帳の経験を語りました。

 岡山・倉敷民商弾圧事件をたたかう事務局員の禰屋町子さんは「7月4日に差し戻し審の第1回公判で改めて無罪を主張した。事務局として30年、会員の自主計算・自主申告をサポートしてきた。脱税したとされる建設会社は逮捕も勾留もされていない。差し戻しが決まってから5年半以上も放置されたことに怒りを感じる。さらに9年もたってから、訴因変更を採用したことも納得できない。消費税増税に反対する民商への弾圧に他ならない。傍聴や署名・はがき運動などへ協力をお願いしたい。諦めず、たたかい抜く」と決意を語りました。

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