払いきれない社会保険料 納税緩和制度の活用を【Q&A解説】|全国商工新聞

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 コロナ禍で認められていた社会保険料の「納付猶予特例制度」が昨年2月に終了し、「社会保険料が高くて払えない」「一括納付を迫られた」「差し押さえ予告通知が送られてきた」などの相談が、各地の民主商工会(民商)や全国商工団体連合会(全商連)に殺到しています。保険料の滞納を理由に、年金事務所が売掛金などを差し押さえし、事業継続が危ぶまれる状況も広がっています。

Q1 社会保険とは?
A 社会保障制度の一つで公的な保険制度

 健康保険、厚生年金、介護保険の総称(狭義)です。社会保険への加入が義務付けられているのは常時従業員が働いている法人事業所または常時5人以上の従業員が働いている商店・事務所などの個人事業所です(理美容、旅館、飲食など加入義務のない業種もあります)。
 毎月の社会保険料は従業員の給料(4月から6月の平均)を厚生年金は32段階(等級)、協会けんぽは50段階(同)に分け、保険料率を掛けて算定します。事業主と従業員が折半し、事業所がまとめて年金事務所に納付します。

Q2 社会保険料が納められなくなった…
A 納税緩和制度の活用を

 コロナ禍の売り上げ減少が回復しなかったり、仕入れの高騰で経営が厳しくなり、社会保険料が納められなくなった場合は、国税徴収法や国税通則法に基づく「納付の猶予」や「換価の猶予」など、納税緩和制度が活用できます(図1)。

 災害や病気など「著しい損失等」で納付の猶予が認められると延滞金の全部または一部が免除され、安心して分納することができます。猶予期間は1年です(最長2年)。また、すでに差し押さえを受けている財産の換価(売却)が猶予される場合もあります。
 「換価の猶予」は保険料の滞納がなく納付期限から6カ月以内であれば申請可能(申請型「換価の猶予」)。納期限から6カ月以上経過した滞納がある場合は、民商の仲間と一緒に年金事務所の所長による職権型「換価の猶予」を認めるように交渉しましょう(図2)。

Q3 督促状が届いたら?
A 放置せず、「納付の誠意」を示そう

 年金事務所が納付の猶予制度などを適用するに当たって重視するのは、滞納者が納付について誠実な意思があるかです。納付督促や来所通知、差し押さえ予告通知などの文書が届いたときは、年金事務所に納付できない事情を説明し、相談をすることが大切です。
 毎月月末の納期限までに納付がない事業所に対して年金事務所は督促指定期限(翌月20日ごろ)を設け、その後も納付がない場合に滞納処分が開始されます。

Q4 分納を約束していたが一括納付を迫られた
A 年金事務所に抗議し、分納を認めさせよう

 事業者が納付の誠意を示し、滞納になった保険料を約束通りに分納しているにもかかわらず、突然、年金事務所から一括納付を迫られ、「できなければ売掛金を差し押さえる」と言われたなどの事例が各地から寄せられています。
 全商連が今年2月20日に行った厚生労働省への要請で、省側は「納付が困難になった場合でも、直ちに差し押さえるなどの対応を取るのではなく、事業者に連絡し、面談等を通じて状況を丁寧に聞き取り、分割納付、納付の猶予などを活用するよう(年金事務所に)指導している」と回答しました。
 年金事務所が差し押さえを行う場合、国税通則法や国税徴収法、通達・通知を準用しています。差し押さえができるのは「納付の誠意が全くない」などやむを得ない場合に限られます。生活や事業に支障を来すような差し押さえには断固抗議し、撤回・解除を求めましょう。

Q5 差し押さえ禁止財産とは
A 生活上、欠くことのできない財産

 国税徴収法では「一般の差押禁止財産」(75条)として、生活上、欠くことのできない財産の差し押さえを禁じています。
 給与(76条)は、差し押さえ禁止の基礎となる金額を月10万円とし、生計を一にする親族1人につき4万5千円(国税徴収法施行令34条)を加えたものとしています。
 老齢年金(77条)や生活保護費、児童手当、健康保険給付なども差し押さえが禁止されています。

Q6 保険料はなぜ、こんなに高い?
A 小規模事業者ほど負担が重い仕組みに

 厚生年金保険料は1カ月の給料(報酬月額)が63万5千円以上(32等級)、協会けんぽは135万5千円以上(50等級)になると、保険料はそれ以上、上がらず、例えば月収140万円の人と同3千万円の人の社会保険料は同額です。収入が低いほど負担率が高くなり、小規模事業者に重い負担となっています。社会保険料にも応能負担を適用し、小規模基本法の付帯決議にあるように国が「負担軽減のために、より効果的な支援策の実現を図る」べきです。


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