「消費税のインボイス(適格請求書)の強要はしない」―。10月1日からの実施が狙われるインボイス制度に対し、大企業が対応方針を相次いで発表しました。
鹿島建設は5月17日、「インボイス制度対応方針」を発表。①インボイス非登録を理由にした、発注取りやめや消費税相当額を支払わない行為をしない②課税事業者になった業者の価格交渉に応じず、一方的に従来の単価を据え置いた発注行為をしない③インボイス登録の強要をしない―を明確にしました。同社は取材に対し、「インボイス制度が開始するからと言って、取引自体は従来と変わらない姿勢を示すため、安心して取引していただけるように対応方針を策定した」と回答。
大林組は5月31日、「大林組のインボイス対応方針」を発表。①インボイス登録依頼の強要はしない②インボイス非登録を理由にした一方的な取引打ち切りや消費税相当額を支払わない行為の禁止③課税事業者になった業者の価格交渉に応じず、一方的に従来の単価を据え置いた発注行為の禁止―を掲げました。
住友不動産グループは昨年12月13日、他社に先駆けて「住友不動産グループのインボイス制度対応方針」を公表。①インボイス登録を強要しない②インボイス非登録を理由にした一方的な取引打ち切りや消費税相当額を支払わない行為をしない③取引先から自主的に消費税相当額の減額の提案があっても決して受諾しない―としました。
【解説】取引先の不安を反映 大企業だから可能とも
鹿島建設の広報担当者は、同方針発表の背景について「取引先の中には、当社との今後の取引に不安を感じている業者がいると思う」と答え、具体的には、消費税相当額の減額や発注取りやめによる仕事の減少を挙げました。
大手企業が相次いで対応方針を発表せざるを得なかったのは、制度そのものの問題点が明らかになり、中小業者とフリーランスらに与えるさまざまな悪影響が可視化されたから、と見ることができます。
鹿島建設は業界の売上高3位、大林組は同4位を誇ります。住友不動産は業界3位です。
インボイス制度実施で、取引業者が免税事業者のままでいた場合、仕入れ税額控除ができず、自社が消費税負担を強いられても、「当社への影響は軽微」(鹿島建設)といえる大企業だから取れる対応とも言えます。
インボイス制度は、登録して課税事業者になった免税事業者は新たに消費税負担を強いられ、課税事業者にならなかった場合、取引業者が、その分の消費税負担を強いられます。取引する側もされる側も、中小業者の影響は甚大です。
全ての業者が救われる対応方針は、インボイス制度の10月実施を中止・延期させ、消費税を減税させることです。