倉敷民商弾圧事件 支援さらに広げ冤罪晴らそう 差し戻し審必ず勝利を|全国商工新聞

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 「禰屋さんは無罪!」「裁判で必ず勝利しよう!」―。岡山・倉敷民主商工会(民商)に対する弾圧事件(2014年1月)から9年半余り。広島高裁岡山支部が一審判決を破棄し、審理を差し戻す判決を言い渡してから5年7カ月間。ようやく開かれる第1回公判(7月4日)に向け、目標の30万人分に迫る署名運動や39都道府県での支援組織の立ち上げなど、支援の輪が広がっています。

 倉敷民商事務局員の禰屋町子さんは、「脱税ほう助」「税理士法違反」の濡れ衣を着せられて不当に逮捕・起訴され、428日も勾留されました。一審判決は有罪だったものの、広島高裁岡山支部が18年1月、一審が根拠とした「査察官報告書」を違法なものと認定して岡山地裁への差し戻しを決定。ところが、その後の5年7カ月間、検察官がまともな立証計画を立てられずに裁判が始められない異常事態が続いていました。
 一方、検察側は昨年11月、突如、「禰屋さんが関与した」とするI建設の「脱税」の根拠となる所得金額を850万円減額する「訴因変更」を主張。第1回公判では、訴因変更の可否などが争点になると見られます。
 倉敷民商弾圧事件と禰屋裁判は、今年3月に税理士法の一部「改正」で創設された「税務相談停止命令制度」による国民の自主申告権の制限、民商など中小業者団体の活動を弾圧・制限する狙いと呼応する中身を持っています。

署名30万人分を

 全国商工団体連合会(全商連)や日本国民救援会などで構成する「倉敷民商弾圧事件の勝利をめざす全国連絡会」は、無罪を求める署名を軸に運動を進め、当初目標の20万人分を突破。目標を30万人に引き上げ、6月6日現在、提出した署名は累計で26万6907人分に。あと3万人分余りで目標に届くところまで運動が前進しました。
 月2回の裁判所要請と宣伝は、7月4日までに125回実施。裁判官宛てのはがきは、4月末までに9272枚が届けられました。
 支援組織の輪も広がりました。民商や県商工団体連合会(県連)も加わる支援団体は、これまでに39都道府県で結成されています。差し戻し裁判の決定後、沖縄、栃木、茨城、三重、高知の5県(結成順)で支援組織が新たに立ち上がりました。

公判に向け全力 各地で宣伝、要請

 第1回公判に向けた各地の取り組みは―。

【兵庫】宣伝カーで現地へ

禰屋さんも招き、30団体100人が参加した「倉敷・兵庫の会」の第8回総会

 兵庫県連も加わる「倉敷・兵庫の会」は5月12日、30団体・100人が参加して第8回総会を開催しました。ニュースはこれまで、31回・約40万枚を発行。5月下旬以降、月2回の岡山地裁要請行動に2人ずつ派遣。
 第1回公判には宣伝カーで岡山入りし、約20カ所で全県一斉宣伝を計画しました。

【滋賀】5組織で毎月開催

県内5地域での持ち回りで街頭宣伝を続ける「滋賀の会」

 滋賀県連や国民救援会などでつくる「滋賀の会」は毎月、大津高島、草津甲賀、湖東、彦根、長浜の県内5民商の地域持ち回りで、街頭宣伝を続けてきました。

【北海道】吹雪にも負けずに

吹雪の中、禰屋さんの無実を訴える「北海道の会」

 北海道連も加わる「北海道の会」は、禰屋さん逮捕から9年目の今年1月21日、吹雪の中、JR札幌駅前で宣伝しました。

【高知】39県目の支援の会

「倉敷無罪の会・高知」の結成総会の参加者ら

 高知県では今年2月12日、高知県連や県内の民商、農民組合、国民救援会などから41人が参加し、「倉敷無罪の会・高知」を結成しました。県単位では39番目の支援組織で、「税務相談停止命令制度」悪用阻止の重要性を確認しました。

起訴理由変更に怒り 倉敷民商事務局員 禰屋町子さん決意語る

「私は無罪!」と訴え続ける禰屋さん

 支援していただき、本当にありがとうございます。
 普通のおばちゃんが逮捕され、428日間も勾留されました。裁判の差し戻しが決まったのに5年半以上も公判が開かれず、私も時々、愚痴を言いたくなります。そんな時、友達が「ばかなこと言いなんな。あんたを支援してくれる人や弁護士が付いているし、家族もいる。こんな恵まれた被告人はいないよ」と励ましてくれました。
 長期勾留は、本当に精神的にこたえました。警察や検察は私を追い込み、自白させようとした。でも、皆さんの支援と温かい力で頑張ってこれました。
 いま一番腹が立っているのは、検察官による訴因変更です。逮捕・起訴から9年半。今ごろになって起訴理由を変更する。ものすごい怒りを覚えます。そのことを裁判でも訴えます。
 裁判所に対する要請は125回に及び、あと3万人で署名も目標の30万人分に届きます。その力を支えに裁判に臨みたい。私の人生、後悔したくない。ご支援をよろしくお願いします。
 差し戻し審が開かれた7月4日は、ちょうどアメリカの独立記念日でもあります。私も勝利への第一歩を踏み出します。

納税者権利守る 弁護団 則武透さん

則武弁護士

 迅速な審理が求められる刑事裁判で、5年半以上も公判が開かれない―。こんな異常な裁判は、あまり例がありません。岡山地裁での差し戻し禰屋裁判では、公判が開かれないまま裁判長が次々と交代し、いま3人目です。
 第1回公判では、これまでの記録をどう引き継ぐかを決める弁論の更新手続き、検察が求めている「訴因変更」の扱いが焦点です。
 広島高裁岡山支部は、一審が依拠した「木嶋査察官報告書」の違法性を認めました。弁護団は、新しい証拠に基づく裁判のやり直し(覆審)を求めます。
 検察は、5年半もの年月を費しながら、領収書など原始資料にさかのぼる検証さえ放棄しています。そもそも、「逋脱(脱税)のほう助」など存在せず、国税局、警察、検察は、冤罪づくりの“泥舟”に乗り、裁判所も検察側に“助け舟”を出した。今ごろ起訴理由を変更するなど、もっての外です。
 事件が起こったのは、消費税が5%から8%に引き上げられる直前でした。増税に反対し、物申す民商をつぶすのが目的でした。来年4月に導入される「税務相談停止命令制度」を先取りする謀略事件でした。
 禰屋裁判での勝利は、納税者の権利を守り、攻撃をはね返す力になります。全国の皆さんが「自分のこと」として禰屋裁判を応援していただければ幸いです。
 公開の法廷でたたかえないことに、もどかしさを感じてきました。
 ようやく迎えた第1回公判で、弁護団も全力を尽くします。

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