各地の3月議会で「インボイス制度の実施中止・延期を求める意見書」採択が広がっています。民主商工会(民商)が請願書や陳情書を提出し、保守の議員を巻き込んで、意見書採択を勝ち取っています。
高知県土佐清水市
「中止」に喜びひとしお 中村民商 役員会で議論を重ね
「インボイス中止を求める意見書が採択された」と笑顔が広がるのは、高知・中村民商。土佐清水市議会が3月24日、「消費税インボイス制度の中止を求める意見書」を賛成多数(賛成8人、反対3人)で採択しました。反対したのは自民、公明の両党と無所属の市議です。意見書採択は、担当する自治体では大月町に続く2例目。同町では「延期」でしたが、今回は「中止」。喜びもひとしおです。
民商は昨年9月、宿毛と四万十の両市に「実施延期」を求める陳情書を提出。船口千代松会長=左官=ら役員や橋崎律子事務局長が意見陳述を行いましたが、両市議会とも不採択に。制度の仕組みや問題点を議員に理解してもらう難しさを実感し、土佐清水市議会への陳情書提出に際しては、役員会で議論を重ねました。
その結果、陳情書の内容は「免税事業者だけでなく、地方ではむしろ課税事業者が困ること。顔の見える地域で、業者間の軋轢は、地域経済の衰退を招くこと」を重点に置き、問題点を具体的にイメージできるよう、全商連発行のリーフレット「あわてないで!インボイス登録申請」(21年9月)を資料として添付。意見書案は、民商会員でもある前田晃市議(共産)と相談し、申告仕上げの班会で会員の切実な声を集めることに。
「肉を卸している飲食店から『インボイスがないと、取引できない』と言われた」(精肉・70代)、「ふるさと納税に出品している。協会や市役所から、まだ何も言われていないが、どうなるのか?」(農業・70代)、「漁協との取引は『特例』になってインボイスはいらないが、任意の組合はどうなるのか?」(漁業・60代)などの声が寄せられました。
鉄本英志副会長=ガラスサッシ取り付け=は、前田議員にインボイスの仕組みと問題点を1時間かけて伝え、「始まると、現場は大混乱する」と強調。「延期」ではなく「中止」の意見書採択を求めることにしました。
2月27日、前田議員が提案者となって意見書案を提出。前田議員が各議員を回ると「左官業をしている親族が『インボイス制度は困る』と言っていた」などの声が聞かれ、7人(議員定数12人)が意見書案に賛同しました。
鉄本副会長は「今回の意見書採択を力に、これからも多くの業者や国民に呼び掛け、インボイス制度を中止させたい」と話しています。
埼玉県羽生市
県内初採択に確信深め 行田民商 さらに広げる決意
埼玉県羽生市議会は3月16日、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の延期を求める意見書」を賛成多数(賛成6人、反対5人)で採択しました。県内初の採択です。行田民商や埼玉土建羽生支部、同加須支部、埼玉農民連東部農民センターの4団体が請願書を提出していました。
斉藤万紀子市議(無所属)が紹介議員になり、3月9日の総務文教委員会で請願が審議されました。柳沢あきら市議(共産)が「周知が進んでいない中での実施は混乱を招く。中小企業はコロナ禍や物価高で大打撃を受けており、実施は時期尚早。延期すべき」と請願に賛成。一方、野中一城市議(公明)は「中小企業への影響は懸念されるため、趣旨は理解できる。インボイス制度の実施はDX(デジタルトランスフォーメーション)化促進の機会になる。趣旨には賛成できるが、請願採択には反対」と表明しましたが、請願は賛成多数(賛成3人、反対2人)に。本会議では反対討論は行われず、請願が採択され、意見書が国に送付されました。
今西高也副会長=建築=は「県内で初めて意見書が採択されて良かった。コロナ禍や物価高騰で中小業者は厳しい状況に追い込まれている中で、インボイスが実施されると、事業を継続できない業者が続出する。さらに自治体採択を広げたい」と話しています。