<省庁交渉>物価高騰対策の強化を
【経産省中企庁】中小業者が生き延びられる支援を 新借り換え保証を周知
経済産業省・中小企業庁では①コロナ禍と物価高騰の影響を受ける中小業者への支援拡充②中小業者の賃金引き上げに対する直接支援の実施③金融支援の柔軟化と拡充―を要請。インボイスが実施されれば、廃業を検討する中小業者が少なくないと伝え、財務省などに実施中止を働き掛けるよう求めました。
直接支援について、省側は「成長をめざす事業者を支援する補助金制度がある」と回答。参加者は「コロナ禍や物価高は、自力では打開できない。地域経済を支えてきた中小業者が生き延びられる支援を」と改めて訴えました。
中企庁金融課は「民間ゼロゼロ融資の返済が今夏から集中するため、新たな借り換え保証制度を創設した。金融機関の伴走支援と経営行動計画書が必要だが、事業者に寄り添うよう金融機関に求めている」と述べました。
参加者は「インボイスで優秀な技術者が廃業を検討している」「大量廃業につながれば、日本経済はさらに低迷から抜け出せない。それでいいのか」と姿勢をただしました。
【財務省 国税庁】「税務相談停止命令制度」撤回を 憲法上の権利は順守する
不当な反面調査の指摘に「誠実に対応する」
財務省では、憲法違反の敵基地攻撃能力を保有するための防衛増税は中止し、中小企業予算を増額すること、「命令制度」創設の撤回、消費税を5%に引き下げ、インボイス実施は中止せよと求めました。
命令制度について、省側は「SNSなどで脱税や不正還付を不特定多数に指南した者に、税務相談の停止命令を機動的に行うため」と説明。参加者が「納税者同士が学び合い、自主申告するのも処罰対象か。『結社の自由』を脅かすもの」と抗議すると、「憲法で保障された権利は順守しなければならない。税制などを学び合う自主的な取り組みは該当しない」と答えました。その上で「税理士法は、税理士以外が『税理士業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談)』を行うことを禁じている。個々の行為が、税理士法に抵触しているかどうかは個別に判断する」との回答に終始しました。
国税庁でも、参加者が「納税者が申告・納税するために学び合う活動は自由なのか」とただしましたが「学び合う内容が漠然としているので回答できない」と拒否しました。
沖縄の代表は、反面調査の連絡があった沖縄民主商工会(民商)の会員が、元請けとの取引が分かる帳簿書類5年分を提出したにもかかわらず、元請け以外との取引資料を求められた問題で「目的範囲外の書類提出の要求は違法であり、本調査先と関係ない資料提出を求めないこと。反面調査は中止すること」を求める請願書を提出。庁側は「担当課に渡し、誠実に対応する」と回答しました。
【内閣府】臨時交付金の継続拡充を 大変な状況は共通認識
内閣府では、「地方創生臨時交付金」を増額・強化するとして昨年9月に措置された「価格高騰重点支援地方交付金」(6千億円)を2022年度(3月末)で終了せずに継続実施し、さらに予算を拡充することなどを求めました。
参加者は「京都市では『中小企業等物価高騰対策支援金』ができ、助かっている。他の自治体でも実施できるよう後押ししてほしい」(京都)、「『ゼロぜロ融資』の期間延長を」(同)、「子どもが未来に希望を持てる社会を」(大分)などと訴えました。
府側は、地方創生臨時交付金について「物価高対応分についてはほとんど予算がなくなり、今後は未定」と回答。一方、「コロナ対応の融資措置が切られるなどし、中小業者の皆さんが大変な状況にあることは共通認識だ」「物価高騰対策は全国的課題で、政府全体で考えないといけない」と述べました。
【公正取引委員会】インボイス巡る不正対策を 調査し、広報も積極的に
公正取引委員会では、価格転嫁やインボイス登録を巡る不公正取引への対策、コンビニなどフランチャイズ本部による加盟店への優越的地位の乱用を防ぐことなどを求めました。
長崎から参加した内装業者は、資材メーカーの横並び値上げを告発し「カルテルに当たるのでは」と、ただしました。委員会側は「共謀して値上げしているなら、一般的には問題となる行為と考えられる。申告窓口に申し出ていただければ、調査する」と回答。「交渉で告発があったことを担当部署に伝える」との約束も得ました。
価格転嫁問題では「2021年12月の『転嫁円滑化パッケージ』に基づき、独占禁止法(独禁法)の適正な運用を進めてきた。昨年12月27日公表の『独禁法緊急調査』では、価格転嫁状況を11万者から書面調査し価格協議を行わなかった13社・団体を公表した。23年度も、元請け企業に対する働き掛けを継続する」と述べました。
インボイスについて「免税事業者への一方的な減額や課税事業者に対する不当な価格据え置きなど、下請法に基づく調査を通じ、実態を把握していく。商工会議所や中小企業中央会などを通じ、広報を積極的に行う」と述べました。
【厚生労働省】カード未取得に資格確認書 根拠や運用方法は所管外
厚生労働省では、国民健康保険(国保)料・税のコロナ特例制度や、高齢者医療・福祉、個人番号(マイナンバー)制度などについて要請しました。
国保特例減免では「昨年度、保険料を免除されたが、今年度は却下された。国の方針によると説明された」(北海道)との告発を受け、「所得がマイナスでも、国保料が発生する仕組みは、おかしい」との声が。省側は、均等割や平等割などで所得が無くても保険料が発生する仕組みを認めつつ、「窓口で適切に対応するよう指導したい」との回答に終始しました。
後期高齢者医療で、昨年10月から2割負担が一部導入。全国保険医団体連合会の調査で「受診控え」が17%もあると指摘すると、省側は「今後、影響を注視したい」と応じました。
健康保険証を廃止し、マイナ保険証を事実上義務化することは、本来の「申請主義・任意取得原則」からの逸脱を引き起こします。「役所の手続きミス」でカードに一体化された場合は「解除」される一方、保険証廃止後、カード未取得者に対しては「資格確認書」を発行すると説明。マイナ保険証の具体的な発行根拠や運用方法は「デジタル庁が所管」と、無責任な回答を繰り返しました。
雇用保険や健康保険の各種申請で、個人番号が書かれていない場合の対応は「未記入の理由が示されれば、受理する」としました。
【国土交通省】バス許可「残高証明」やめよ 間違った運輸局は指導
国土交通省では、貸切バス事業者の許可更新制度の見直しなどを求めました。
財務状況が債務超過で、直近3事業年度が赤字の場合、「宣誓書」と「残高証明書」を求められることについて、省側は「残高証明書でなくても、事業継続が客観的に証明できる資料であれば対応している。地元運輸局が残高証明しか受け付けないのであれば、間違っているので指導する」と回答。制度が開始された2017年以降、約700事業所が更新していないことが明らかに。山形からの参加者は「コロナ禍で経営が厳しく、更新を断念する事業者も出かねない。丁寧に説明を」と訴えました。
貸切バスの運賃が地域一律の問題では、「観光バスと部活動などの送迎バスでは役割が違う。住民に合わせた料金にしたい」と要望。省側は「公示価格の上・下限を超えても、運輸局で審査が通れば、設定は可能。学校と年間契約すれば、ディスカウントできるので、検討を」と応じました。
署名13万人超を提出 全中連 運動の重点を確認
全国中小業者団体連絡会(全中連)は2月20日、参院議員会館で総会に当たる幹事会を開き、44人が参加。「消費税率を5%に引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止を求める請願」など全国から寄せられた署名13万6730人分を国会に提出しました。
太田義郎代表幹事(全国商工団体連合会会長)が開会あいさつ。「岸田政権による安保3文書改定で、日本全体が戦時体制にさせられようとしている。“平和でこそ商売繁盛”だ。中小業者が安心して商売できる社会にするため、中央省庁や地方自治体に声を届けよう」と呼び掛けました。
日本共産党の田村貴昭衆院議員が国会情勢を報告。「消費税インボイス実施中止を求める世論が広がり、国会でも質問が相次ぎ、大きな争点になっている。物価高騰にも岸田政権の無策ぶりは明らかだ。消費税減税とインボイス中止こそ必要」と強調し、国会の内外で連帯する決意を述べました。
岡崎民人事務局長が、前幹事会(2021年9月)以降の取り組みを報告。今後の運動の重点(別項)と新たな役員体制などを提案、確認しました。
討論では「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に合わせて、医療機関は4月からオンライン認証への対応が義務付けられる。地域医療の現場から『もう限界。廃業せざるを得ない』との悲鳴が上がっている」(全国保険医団体連合会)、「自主申告運動に国が介入する『税務相談停止命令制度』を断固阻止するため、議員要請などを強める」(愛知)、「日米合同演習が地元予告なしに行われ、臨戦体制が強化されている。安保3文書を撤回させたい」(大分)などの活動が報告されました。
【別項】確認された運動の重点
①大軍拡・大増税、改憲阻止
②消費税の5%引き下げ、複数税率・インボイス制度の実施中止、「税務相談停止命令制度」創設阻止
③医療体制強化、中小業者・国民の受療権を守り、国保料・税と社会保険料の負担軽減など社会保障の拡充
④新型コロナ・物価高騰による危機打開、中小業者の経営支援強化、小規模企業振興基本法を生かした地域循環型経済への転換、公正な取引ルールの確立
⑤健康保険証とのひも付けなど、マイナンバーの利用拡大阻止
⑥原発再稼働や沖縄・辺野古新基地建設の中止など民意に基づく政治と、核兵器禁止条約を批准する政府をつくる
国会議員要請 税務相談で罰則おかしい 野党共闘の議員らと懇談
国会議員要請では、15都道府県から77人が「インボイス中止」「大軍拡と防衛増税の中止」などを求めて、地元選出議員を訪ねました。
長野の代表は、県商工団体連合会(県連)の滝沢孝夫会長ら5人で衆参8人を訪問。野党共闘で当選した杉尾秀哉参院議員(立民)と約15分懇談し、「伝統工芸の『飯田水引』の製造業者は、ほぼ免税業者。インボイスで、つぶされる」と訴えると、「インボイスの超党派議連で、共産党などとも協力している。少なくとも延期させられるよう頑張りたい」と応じました。
愛知の代表は、森山行良県連副会長ら5人が衆参の32人を訪問。「『税務相談停止命令制度』が始まったら、仲間同士で税金の相談ができなくなる」と訴えると、牧義夫衆院議員(立民)秘書は「私たちも、税務相談に乗ることがある。罰則なんておかしい」と要請書を受け取りました。本村伸子衆院議員(共産)とは1時間ほど懇談。インボイスを巡り、政府・与党の“緩和措置”や、資源エネルギー庁が太陽光発電事業者に登録を求めるはがきを送り付けるなど「混乱が多発している」と訴えると、「インボイスも命令制度も、中止しかない」とキッパリ。
京都の代表は、倉林明子参院議員(共産)秘書と懇談。新型コロナの2類から5類への移行に伴い、国民健康保険(国保)のコロナ特例減免や事業主への傷病手当支援を2022年度で打ち切ろうとする動きを知らされ、「国の支援がなくなれば、傷病手当をやめる自治体も出てくる。ぜひ継続を」と要望しました。
山形の代表は地元で事前に、芳賀道也参院議員(国民)、20日は舟山康江参院議員(国民)と懇談。両議員とも「地域業者を元気にするためにも、インボイスには反対」との立場を確認しました。