消費税インボイス制度 「緩和」でなく「中止」に フリーランスの会など、全商連も賛同 署名18万人分を提出 「一歩も引き下がれない」|全国商工新聞

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 「STOP!インボイス」―。消費税インボイス制度に大打撃を受ける当事者たちが13日、手をバツにして強い意思を示しました。アニメ制作者や声優、出版関係者、ライブハウス経営者、映像クリエーター、八百屋店主らが累計18万人分を超えるオンライン署名を衆院第2議員会館で財務省に提出し、「インボイス制度見直しを求める業界横断記者会見」を行いました。テレビ局や一般紙も取材するなど注目を集めました。

インボイス制度の実施中止・延期を求めるフリーランスなど「業界横断」の人たち。「STOP!インボイス」の意思を示しました

 署名提出では、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」の発起人でライターの小泉なつみさんが「2020年12月から取り組んだ『《#STOPインボイス》多様な働き方とカルチャーを衰退させるインボイス制度に抗議します』のオンライン署名は開始から1週間で3万人を超え、13日時点で、その6倍の18万162人から賛同が寄せられた」と報告。参加者から歓声と大きな拍手が沸き起こる中、小泉さんは「インボイス制度に私たちは傷ついている。その声を、しっかり受け止めてほしい」と訴え、財務省の担当者に手渡しました。
 「“緩和措置”でなくインボイス制度の“中止”を求める声明」には個人6081人と30団体が賛同。全国商工団体連合会(全商連)も名を連ねました。
 小泉さんらライター有志が手探りで始めた運動は、アニメや声優、映画・演劇、出版などの各業界をはじめ、弁護士や税理士、マスコミ関係者、音楽家、労働者、農民、一人親方、フリーランスらに大きく広がりました。

負担軽減措置で問題解決しない

 記者会見では6人が登壇。
 小泉さんは「この1年で100人を超す政治家に陳情したが、もろ手を挙げて賛成の人はいなかった。負担軽減措置では問題は解決しない。『STOP!インボイス』に向けて一歩も引き下がれない」と語り、活動を共にするライターの阿部伸さんは「都道府県と20政令都市宛てに『お手紙大作戦』に取り組み、インボイス実施延期・見直しを求める陳情書を提出する」と報告しました。
 「公正な税制を求める市民連絡会」共同代表の宇都宮健児さん(弁護士)は「インボイス制度は仕入税額控除ができる権利を奪うもので、税制改革法10条2項に違反する」と指摘。パートタイムで経理部長を務める経営士の堺剛さんは「インボイス発行事業者を確認するのに1社当たり3分かかり、仕入れ先が100件と仮定すると、300分が必要になる。電子帳簿保存では請求日や社名、金額など国税庁の指定ファイル名に書き換えて保存する必要がある。これも1件3分、100件の仕入れ先で300分かかる。併せて10時間もの付加価値を生まない業務が発生する」と告発しました。
 「税理士から『対策を考えて』と言われたが、手の打ちようがない」と話したのは、「草木堂野菜店」代表の甲田崇恭さん。農家から毎日、新鮮な野菜を仕入れています。仕入れ先は年間80件にも及び、9割が免税事業者です。「少なくとも3年間は農家にインボイスを求めず、当店で消費税を負担する。インボイス制度の廃止を望みます」

エンタメ業苦境 売り上げ8割減

 ライブハウス・ロフトプロジェクト社長の加藤梅造さんは「コロナ禍でエンタメ業界全体で売り上げは8割減といわれ、飲食や旅行よりも被害は大きい。この国は、文化芸術を商売としてしか見ておらず、守り、育てることを考えていないように感じる」と抗議。
 映像クリエイターのブンサダカさんは「このまま制度が始まれば、私は日本を捨てると思う」と激しい口調で語りました。「業界の76・2%がフリーランスで働いている。消費税が上がるたびに値下げを強要され、半ば脅迫されながら頑張ってきた。日本のやり方は世界で一番嫌いだが、日本の文化は世界で一番好き。こういう人間を逃していいのかと言いたい」
 ヨガ・インストラクターでフリーランスユニオン共同代表の塙律子さんは「契約先から『インボイス登録をしないなら減額する』と言われている。減額されれば、あり得ないほど低い年収になる。昨年も100万円に届いていない。パワハラや一方的な不利益強要に苦しんでいる上、さらにインボイス!? あり得ない。今一度、考え直してほしい」と声を張り上げました。
 記者会見に先立ち、「インボイス問題検討・超党派議員連盟第4回会合」が開かれ、全国青年税理士連盟から、インボイス制度が与える影響や実態などを聞き取りました。

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