全国業者婦人の実態調査2022年(3)自営業の女性の健康・医療と社会保険制度、労働と生活|全国商工新聞

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安心して商売できる環境整備が必要

業者婦人の健康状態

 業者婦人は、営業以外にも家事、育児と多忙な日々を送っています。体調が「よい」と答えた人は51%に過ぎず、2人に1人が体調の悪さに悩んでいます。健康診断を年1回受診している人は全体で70.1%ですが、39歳以下の若年層の受診率は61.9%で、60歳代の73.2%と比べると10ポイント以上も低くなっています。婦人科検診の受診状況では、未受診者と定期受診者との二極化が目立ちます(図1)。

加入している医療保険

 「国民健康保険(国保)」が61.2%で、「協会けんぽ」が20.7%、「組合健保など」が9.1%でした。支払い状況を見ると、国保料・税で94.5%、社会保険料の事業者負担分で97.2%の事業者が納付しており、厳しい経営の中でもきちんと社会的責任を果たしています。

出産前後の休暇取得

 産前休暇は「休めなかった」が20.8%で、5人に1人が休めず、特に事業主では26.9%と高くなっています。産後休暇は「6週間以上」が53.4%の一方、「休めなかった」「1週間未満」は合わせて15%に上ります。新生児と母体の保護のため、十分な休養は当然であり、所得保障も必要です。国保にも、傷病手当や出産手当の創設が急がれます。

働いた分の報酬

 家業で働いた分の報酬(給料)について、46.9%が受け取っておらず、特に「個人の白色」では63.4%が、ただ働き状態です。「法人」での無報酬労働25.3%と比べると大きな格差があります。
 報酬が認められないことによる不利益や差別を半数が感じており、最も多いのは「自分の自由になるお金がない」22.5%でした。「融資面」5.7%、「保障面(保険、保育園の入所など)」3.8%、「資格取得面(銀行口座開設など)」1.5%のほか、「人格を認められない」も3.9%ありました。
 家族従業者の働き分(自家労賃)を経費として認めない所得税法第56条の弊害が、不利益の実態として示されています。日本のジェンダー差別の根幹に関わる問題であり、廃止に向けた運動がますます大事です。

家業でのやりがい・課題

 「自営業で良かったこと」では、二つのタイプに分けられます。「お客さんに喜んでもらえる」「納得のいく仕事ができる」など顧客対応・仕事の中身に関するものと、「年齢に関係なく働ける」「自分のペースで仕事ができる」という自営業ならではの働き方に関わるものです(図2)。
 営業と暮らしのための要望では、「消費税減税」が81.7%と飛び抜けて多く、コロナ禍や物価高騰などに対応する「緊急時貸付制度」が14.1%でした。「介護の支援策」15.6%、「医療の整備」11.4%、「子育て支援策」10.6%など、生活や健康への要望も課題として浮かび上がっています。

業者婦人と地域社会の関わり

 調査実施・分析にご協力いただいた駒沢大学の吉田敬一名誉教授は、業者婦人は「地域社会の人間的なつながりを維持・拡大していくネットワークの連接点としての役割を果たしています」「次世代の地域コミュニティの中心を担う若い自営業者の社会的存在意義の高さはもとより、人間関係のネットワークの密度は濃く、またその範囲は広くなるわけなので、高齢化した業者の営業の維持の重要性は、こうした社会的見地からも見直す必要があります」と指摘。「中小業者が安心して営業し、地域住民が個性豊かに暮らしていける地域社会を創り上げて」いくためにも、実態調査に基づき、業者婦人の力を結集することが求められます。

報告集の活用を
婦人部での学習や 自治体懇談の力に

 会内外の業者婦人8244人の回答を集約し、コロナ禍の影響や必要な施策を浮かび上がらせました。結果の分析と今後の運動への問題提起をまとめた「報告集」を、自治体の要請・懇談で活用してください。
◇B5判/122ページ
◇頒価/800円

「ひとこと」から

◎…人口減少、若者定住に対しての対策を(秋田・卸小売)
◎…どこの商店街もシャッター通りが多くなり寂しい。小さな商店でもやっていける街づくりを(福島・建設関連)
◎…県、市独自の小規模事業者支援の充実を。国は県、市への予算を拡充してください(茨城・卸小売)
◎…健康でなければ仕事できない。国保料は払える金額にしてもらいたい(静岡・その他)
◎…起業する若い人たちへの支援を。(所得税法第)56条放置のままでは、家業を継続する者がおらず、中小零細業者は衰退の一途をたどるだけ。生き生きと家業に励める対策を講じるべき(島根・生活関連サービス)
◎…教育費の無償化。医療費の成人までの無料化など、国民に寄り添った政治をしてほしい(鹿児島・その他)

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