高過ぎる国民健康保険(国保)料・税は、この春、実施される統一地方選挙(3~4月)の大きな争点の一つです。全国商工団体連合会(全商連)は、昨年11月の第3回常任理事会で「国保提言2022」を確認。高過ぎる国保料・税は、1984年に国保法が改悪され、国庫負担が1兆円削減されたことが最大の原因と指摘し、国庫負担の大幅引き上げや、自治体独自の公費繰り入れ継続などを求めました。「提言は、時宜にかなっている」と、昨年度、2005年の政令市発足以来、初めて国保料を引き下げさせ、23年度も維持させた静岡県浜松市の民主商工会(民商)でも、歓迎の声が広がっています。
浜松市 引き下げ水準を維持 市内3民商ら「よくする会」 署名4千人超を力に
浜松市は2023年度、国保料の引き上げを行わず、22年度に1世帯平均5千円引き下げた水準を維持する方向です。市の国保運営協議会が1月16日、“保険料率を据え置くよう”に求めた答申書を鈴木康友市長に手渡し、市長も「答申をしっかり踏まえ、生かしたい」と応じました。市内の民主商工会(浜松、浜北、天竜の3民商)も加わる「浜松・国民健康保険をよくする会」が昨年11月に市に提出した4千人を超える署名が力を発揮しました。
業者は4万円減
「2年連続の国保料引き下げとはならず残念だが、自治体の公費繰り入れ『解消』を、国がしつこく求めて値上げ圧力が強まる中、引き下げた水準を維持した意義は大きい」。こう話すのは、よくする会の代表世話人で、浜松民商会長の疋田朋広さん=デザイン=です。昨年の署名提出行動で民商として約1600人分の署名を届け、中小業者の要求と国保制度の改善を求めました。自身も「高過ぎる国保料に悩み、対市交渉に参加したことが民商運動に関わるようになったきっかけ」と話す疋田さん。「よくする会は、10年以上粘り強く、引き下げ署名を提出し、昨年、政令市になってから初めて国保料を下げさせた。市は、これまで国保基金をためる理由を『緊急事態の備え』と説明してきたが、いざコロナ禍のような事態が起こっても取り崩さなかった。昨年の引き下げは、行政を転換させる第1歩になったと思う」と成果に確信を持っています。市国保年金課の試算によれば、自営業者のモデルケース(図1)の場合で約4万円の引き下げが継続します。
まだ余力はある
「政府の国保行政の進め方が問題だ」と指摘するのは、2017年から2年間、国保運営協議会の公募委員を務めた民商常任理事の大石直裕さん=金属加工。「運営協は年4回ほど開かれ、国保会計の資料を基に議論する。国の指導で一般会計からの繰り入れもなくなり、加入者の高齢化で無収入者が増えている。国保制度は小手先ではどうにもならない状況がある。政府がしっかりと財政的に支援すべきだ」と憤ります。「国保提言は、時宜にかなっている。国庫負担の減額をやめて公費1兆円を投入すれば、全国で平等割と均等割を廃止でき、負担が約16万円軽減される。自治体の繰り入れ維持など提言の方向に進んでこそ、国保は社会保障制度として成立する」と歓迎しています。
元民商婦人部役員で、日本共産党市議の小黒啓子さんは、市議会で何度も高過ぎる国保料の問題を取り上げ、昨年度の引き下げにも尽力しました。
「中小業者の国保負担の重さは身に染みて知っている。引き下げが実現したとはいえ、市の1世帯当たりの国保料は政令市の中で最も高い(図2)。国保事業は21年度決算で35億8千万円の黒字、基金の21億円を合わせれば、まだまだ引き下げ余力はある」と指摘。「政府が重い腰を上げて子どもの均等割への補助を始めているが、市が独自に無料にするなど国保料のさらなる引き下げは可能だ。政令市の中には、資格証明書や短期保険証の発行を行わないところもあるので、制裁行政の中止も含め、民商をはじめ、よくする会の皆さんと一緒に求め続けたい」と力強く語っています。
市政の流れ変え
今春の統一地方選で、浜松市では市長選と市議選が行われます。疋田会長は「浜松は自動車メーカー・スズキの企業城下町で、以前は関連下請けもたくさんいたが、海外進出が進む下で、町工場が激減している。日本の強みである技術力を受け継ぐ小規模事業者が失われたら取り戻せない。国保制度を含め、社会保障の充実と中小業者の育成・支援を公約に掲げる候補者を支援して、市政の流れを変えたい」と決意しています。
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