全国業者婦人の実態調査2022年(1)コロナ禍の営業への影響|全国商工新聞

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 全商連婦人部協議会(全婦協)はこのほど、「2022年全国業者婦人の実態調査」(回答数8244人分)をまとめました。3年ごとに行っているもので、今回は、コロナ禍の影響が色濃く表れました。売り上げ・利益などの決算状況をはじめ仕入れ・経費の動向、消費税転嫁の実態を明らかにし、健康と医療、働き方の実態などから、商売に携わる女性たちの姿が浮き彫りになっています。3回にわたってポイントを連載します。

使い勝手の良い支援制度が急務

売上減が急増 赤字が4割弱

アンケートに記入する大阪・西成民商婦人部

 売り上げ状況は、前回調査(19年)と比較すると、「横ばい」の割合が大きく落ち込んだのに対し、「減少」割合が急増しました。「3割減」と「半減以下」を合わせると56・6%と半数を超えています。
 急激な円安傾向が仕入れ・経費の動向に大きな影響を与え、「非常に上がった」割合は9・8%から19・8%へと10ポイント増加。業種別では運送、料理飲食、製造・販売、宿泊への影響が際立ちます。
 コロナ禍での仕入れ・経費高騰と売り上げ減退という厳しい経営環境は、決算面で赤字営業の増加に結び付き、前回の28.9%から37.5%へと一挙に増えています。
 今回の調査は、ウクライナ危機や異常円安が営業に影響を及ぼし始めた段階であり、売り上げ動向や決算面などの結果は、23年以降に表面化し始めることを念頭に置く必要があります。今後、さらに悪化企業の増加が予測されることから、内需拡大政策の推進と中小業者への適切な支援策が急務です。

営業所得では生活できない

 回答者の半数近くが、営業所得200万円以下で「営業で生活を賄えない」と答え、不足分を補填するための手段は「年金」「貯金の取り崩し」「他の家族の収入・援助」が上位を占めています。
 家計を圧迫している要因は「各種税金」が65.2%と飛び抜けています(複数回答)。「国保料(税)・年金」41%、原燃料高騰と円安による「水光熱費」27.2%は、自営業者にとって営業面と生活面での圧迫要因として複合的に悪影響を及ぼしています。
 大企業・富裕層に対する担税力に応じた税負担と消費税率の引き下げなど、税制面の抜本的改革が緊急課題となっています。

仕事と客減り 仕入れ値上昇

 コロナ禍については、「影響が継続している」と答えた人が48.4%で、「影響はない」は10.8%にとどまり、依然としてマイナス影響が続いています(図)。

 持続化給付金や営業自粛に対する協力金などの支援策を「受給した」は65.5%に及びますが、その内容の満足度は「不十分だった」が54.2%で、「十分だった」41.5%を上回っています。
 営業上の困り事は、「仕事・顧客の減少」46.9%と「原材料・商品の仕入れ値の上昇」44.8%が双璧をなしています。これだけでも大変というのに、「消費税」21・6%と「税金・公的保険料」21.3%が業者の営業と暮らしの悪化の度合いを深めています。こうした下での経営対策のトップは「経費節減」31.9%。次いで「補助金の活用」25.4%や「融資の利用」13.6%と緊急避難的な措置が続いています。
 借入金返済状況では「順調に返している」が53.8%を占め、苦しい中でも、やり繰りして返済している状況がうかがえます。借入先の構成では、「日本政策金融公庫」の割合が19年調査より11.1%も上回っています。これは、コロナ対策の金融支援融資の影響と考えられます。融資の返済がこれから本格化する中、使い勝手の良い支援制度や返済免除などを迫ることが求められます。

寄せられた「ひとこと」から

◎…自分がコロナ感染すれば家族の生活が止まってしまうし、家族が感染すれば家業も止まってしまうことが心配(岩手・その他)
◎…物の値段が上がって、今は受注があるが、この先が心配。従業員の給与を増やしてあげたいが社会保険料が高い(長野・建設関連)
◎…コロナ禍で収入がなくなっても、税金、生活費は変わらずにかかる。子育てにかかる費用に回せなくなり、高校・大学と進学できるか心配(静岡・建設関連)
◎…一人で頑張ってきたけど、コロナ禍でもう限界。店を開けてもお客さまゼロの日も少なくありません。以前のにぎやかさと楽しい会話がほしい(岐阜・料理飲食)
◎…コロナ感染拡大にロシアのウクライナ侵略など生活に大きな影響がある。一時的な支援では、本当の支援とは言わない(滋賀・下請け加工)
◎…子どもが、コロナ禍で生活リズムが崩れて、不登校を経験した。収入が減り、習い事をやめさせたことなども原因となった。家の中も仕事も大変だった(京都・生活関連サービス)
◎…保育園が休園になると、店で3歳の子どもの面倒を見ながら仕事しなければならないので、とにかく大変(福岡・料理飲食)
◎…ウィズコロナで保障がない。売り上げが出ない日が続いていますが、支援がないため、貯金を切り崩しています。税金の免除をお願いします(長崎・卸小売)

2022年全国業者婦人の実態調査

 2022年6~7月、全国の民商婦人部が訪問対話や小集会などでアンケート用紙に記入しました。目的は①業者婦人の営業と暮らし、健康の実態と政策課題を明らかにする②要求を掘り起こし、集まって話し合うことで元気になり、婦人部活動の活性化につなげる―です。
 回答者の年齢層は30~70代で、「家族従業者」52%、「事業主」32%。業種別では「建設関連」約30%、「料理・飲食」約15%、「生活関連サービス」「製造・販売」「卸・小売」が、それぞれ約10%。従業者規模は5人以下が90%を占め、申告形態別は「法人」25%、「個人の青色」26%、「個人の白色」46%。


 >> 全国業者婦人の実態調査2022年(2)中小業者と消費税

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