「税理士でない者が行う税務相談を財務大臣が厳罰で停止させる」―。こんなとんでもない「税務相談停止命令制度」の創設を岸田政権が狙っています。23日召集予定の通常国会に税理士法「改正」案として提出される予定で、国による自主申告運動への介入を許さない世論と運動が急務です。
税制改正大綱に盛り込み 厳しい罰則が科される
岸田政権は12月23日、閣議決定した「2023年度税制改正の大綱」(納税環境整備)に「税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等」を盛り込みました。
政府が創設しようとしている「命令制度」は、税理士でない者が反復して税務相談を行って脱税や不正還付を指南して納税義務の実現に重大な影響を及ぼし、防止のための緊急措置が必要と財務大臣が判断した場合、税務相談の停止や、停止させるための必要な措置を命令できるというもの。税務相談を行った者に対して、命令すべきか否かの調査の質問検査権を国税庁長官・税務署に与えます。
命令違反には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を、国税庁長官・税務署の質問検査の拒否や虚偽答弁は30万円以下の罰金を科すなど、厳しい罰則で取り締まろうとしています。
自主申告の弾圧やめよ 全商連が談話、財務省要請
全国商工団体連合会(全商連)は与党税制調査会が「大綱」を発表した翌12月17日、「自由な自主申告運動を弾圧する『納税環境整備』に断固反対し、阻止するたたかいへの共同を呼び掛ける」との岡崎民人事務局長談話を発表。12月26日には日本共産党の小池晃参院議員、田村貴昭衆院議員が行った財務省へのヒアリングに同席。問題点を明らかにし、大綱の内容を法案に盛り込まないよう要求しました。
省側は「命令制度」創設の背景について「コンサルタントを名乗り、SNSやインターネットでセミナーを開き、不特定多数に脱税や不正還付の方法を指南して手数料を取るなどの事例が散見される。納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす相談活動を防止するための措置が必要」と説明。
小池議員は「『大綱』からは、対象を限定しているとは受け取れない。中小業者や建設労働者など、さまざまな団体が税務相談を行っていることも対象になるのではないか」と懸念を示しました。省側は「税務相談が税理士業務に当たるかどうかは、個別に判断する」と答え、否定しませんでした。また、「停止させるための必要な措置」について、「顧客名簿の破棄や営業広告の停止を求める」ことを示しました。
全商連の中山眞常任理事は「インターネットやSNSで脱税指南を行うことが問題なら、そう明記すべき。納税者同士が教え合う民主商工会(民商)が停止命令を受けた場合、会員名簿を破棄しろ、チラシは配るなということか。処分対象を限定しなければ、歯止めがかからない。『重大な影響』『緊急措置が必要』との判断基準も曖昧で、恣意的に解釈されるのではないか」と抗議しました。
「倉敷民商弾圧事件」を例に、「納税者同士が教え合って申告することまで税理士法で禁止されないという判決が確定している。どう考えるのか」と迫ると、省側は「判例は尊重する」と答えました。
今回の強権的な処置について、政府税制調査会では議論されていないことを指摘すると、国税庁から出された要望であることが明らかになりました。
小池議員は「申告納税制度の根幹を骨抜きにするものだ。国民同士が税金の問題で真面目に相談活動をすることは納税者の権利だ。このまま法文化されると、税に関するさまざまな取り組みを委縮させ、弾圧につながる危険性がある」と指摘し、法案に盛り込まないことを強く求めました。
「緊急署名」を広げよう 全商連ホームページからダウンロード
全商連はこうした緊迫した事態を踏まえて、緊急集会と緊急署名(個人・団体)を呼び掛けました。
緊急署名は①納税者が行う税金相談に国が介入できる規定を創設しないこと②納税者権利憲章を制定し、納税者の権利を擁護・発展させること③インボイス制度の実施を中止し、消費税を5%に引き下げること―の3項目です。署名用紙等は、全商連ホームページ「会員ページ」の「署名・要請書」からダウンロードできます。
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