「消費税は5%に引き下げ、インボイス制度は実施中止に」「物価高騰に苦しむ業者へ直接支援を」―。全国中小業者団体連絡会(全中連)は7日、経済産業省をはじめ8府省庁(国税庁は10日)と交渉しました。コロナ禍と物価高騰の苦境の下、消費税や社会保険料などの重い負担に苦しむ中小業者の実態を告発。支援策の拡充や来年10月からのインボイス実施中止などを求めました。「消費税を5%に引き下げ、インボイス制度の実施中止」を求める約10万人分の署名を提出し、地元選出の国会議員らに要請しました。
【経産省中企庁】融資返済の負担軽減を 借り換え保証など検討
経済産業省・中小企業庁では、コロナ禍の長期化と物価高騰で苦境に立たされる中小業者への直接支援制度や完全無利子融資の創設、フランチャイズ加盟店オーナーの人権を無視する本部との契約に対する改善指導などを求めました。
中企庁金融課は「実質無利子・無担保融資の返済が始まった業者の負担を軽減するため、新たな資金需要にも対応する借り換え保証や他の保証付き融資からの借り換えも可能とする案も検討している。モラルハザードの懸念から、完全無利子化は厳しいが、日本政策金融公庫の超低利融資も活用してほしい。金融機関には、条件変更などに柔軟に応じたり、貸し渋りや貸しはがしを行わないよう要請している」と回答しました。
一方、業者への直接支援は、10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」には盛り込まれていません。参加者は「持続化給付金などの直接支援は、多くの業者を励ました。超低利でも利息は負担になる。『ここをしのげば、何とかなる』と頑張り、地域経済を担う中小業者を支えてほしい」と、直接支援と完全無利子融資を改めて求めました。
【総務省】違法な滞納処分許すな 鳥取判決を踏まえる
総務省では、地方自治体による金融機関への預貯金照会はデジタル化の下でも本人確認を徹底することや、事業の継続や生存権を脅かす滞納処分は行わないこと、差し押さえ禁止債権等が振り込まれた預金口座は差し押さえを行わないことなどを要請しました。
宮崎県の浅井憲久さん(県連会長)は「家主が留守中に、縁側の窓から侵入してテレビを持ち去ったり、事業で使う車にタイヤロックをしたりする。こんな徴収が許されるのか」と、滞納処分の実態を告発しました。分割納付ができなくなったシングルマザーに、職員が「税金は子どもの学費より優先される。学費を払っている場合じゃない」と暴言を吐いた問題を訴え。省側は「児童手当が振り込まれた直後の差し押さえは違法と断じた鳥取県の判決もある。差し押さえ禁止財産と同一視されるものはそういう考えで、運用すべきもの。発言は適切でない」と回答しました。
【内閣府】翌年度に繰り越し可 交付金の活用を柔軟に
内閣府では「地方創生臨時交付金を活用した自治体施策が年度を超える場合、柔軟な対応」を要望。府側は「補正予算が成立すれば、2022年度の予備費や補正予算で措置したものを23年度に繰り越すことは可能」と回答しました。
臨時交付金の「推奨メニュー」が出されたことで、水道料金基本料の減免ができなくなった問題について、「生活者支援メニューで、低所得者世帯の水道料金を減免することは、全く問題ない」との見解を示しました。
商品券(地域振興券)に関わって「自治体をまたいで商品券を発行することは可能」「商品券を国民健康保険(国保)料の支払いに使うことも可能。生活困窮者を支援するため、交付金を活用して国保料の一部を減免する自治体もある」と答えました。
【国税庁】「慎重であるべき」 売掛金差し押さえをやめよ
国税庁交渉(10日)では、無予告での税務調査を行わないことや、強制捜査まがいの調査を中止すること―などを求めました。
富山県の参加者は、プラントメンテナンス業者への売掛金の差し押さえ事例を告発。所得税と消費税のコロナ特例での分納期間終了後、「新たな分納を提案しても、一括納付を求められた。売掛金の大半は従業員の給与。直ちに解除を」と訴えました。
無予告で強権的な税務調査を受けた宮城県の自動車整備業者は、質問応答記録書で重加算税を課され、「7年分で所得税など2千万円弱の修正申告」と言われ、「震災で工場も家も全て無くなり、なんとか再建したのに、商売をつぶそうとしているのか」と怒りの声をぶつけました。
国税庁の担当者は「税務調査は納税者の理解と協力を得て行うのが基本。売掛金の差し押さえは慎重であるべき」と回答。それぞれの請願書を受け取り、「誠実に対応するよう担当課に伝える」と答えました。
全商連の中山眞常任理事は、インボイスの登録申請で、「マイナンバーを不記載でも受け付けるかどうか」を確認。庁側は「不記載でも受け付ける」ことを明言しました。
【金融庁】資金繰り支援を最も柔軟に 文書を示して交渉を
金融庁では、コロナ禍と物価高騰にあえぐ中小業者に、最大限柔軟な資金繰り支援を行うよう関係機関に働き掛けることなど7項目を要請。
庁側は「コロナ禍や物価高の影響を踏まえ、民間金融機関に事業者の資金繰りに応じるようフォローアップしていきたい」「民間のプロパー融資の返済期間延長については、9月9日に中企庁などとの連名文書を出し、事業者の状況を鑑みて提案するよう金融機関に要請しているので、窓口で文書の内容を示してもらって構わない。納得できない対応については問題があれば、指導したい」と回答。
「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則)」に関して、9月時点で240件の債務整理が成立していることを明らかにし、「引き続き、きめ細やかな支援対応を促す」と述べました。
東京都内で飲食店を営む参加者が「営業地域」を理由に融資を謝絶した金融機関の不当な対応を告発し、要請書を提出。庁側は、金融機関に伝達することを約束しました。
【国交省】免税業者排除の防止を 建設業者団体に周知
国土交通省では、物価高騰の影響を受ける事業者への支援や災害対策、インボイス制度で影響を受ける事業者の実態を示し公正な取引を、など9項目を要請。
物価高騰対策について、省側は「省エネ住宅の購入や改修の補助金を新たに創設する」と回答。参加者は「物価高騰、資材不足に苦しむ事業者への支援」を求めました。
インボイス制度実施によって、一人親方など免税事業者が取引先からの減額や買いたたきが危惧されている問題について、「建設業法に違反する行為であり、建設業団体に周知している。不適切な事業が認められた場合には指導を行う」と回答。参加者は「元請け事業者からインボイス発行事業者の登録を求められるが、制度の説明は十分にされていない」「消費税分の値引きが行われれば、免税事業者の収入減少につながる」などと訴えました。
インボイス無登録を理由に、個人タクシーを駅の乗り場から排除したり、取引排除につながらないよう求め、省側は「独占禁止法に抵触する恐れも考慮した上で判断するよう、タクシー業界や地方運輸局に周知を行った」と対応していることを話しました。
【厚労省】マイナ保険証導入するな カード代替策を検討
厚生労働省との交渉は、オンラインで行われました。
「公平性の担保の観点から、事業主にも国保の傷病手当制度の対象を広げてほしい」(北海道)、「後期高齢者医療の窓口2割負担導入によって、“受診控え”が生まれている」(保団連)、「高圧的な徴収行政が続いている」(宮崎)、「自治体では脅しに近いような窓口行政が行われている」(群馬)などの実態が示されました。
健康保険証を廃止し、個人番号(マイナンバー)カードに一本化する問題では、「法的に見ても、一本化は不可能だ」と批判。省側は、「カードがない人に対しては、“保険証に代わる何か”を提供することになるとしか言いようがない。今後、検討する」との説明に終始し、政府主導で突然浮上した「一本化」に対応し切れていない実態が浮き彫りになりました。
消費税5%に、インボイス中止を 財務省、業者の窮状無視 「中止は考えていない」
財務省では「消費税を速やかに5%に引き下げること」「インボイス制度は実施を中止すること」など4項目を要請。省側は「消費税は社会保障財源となっており、景気対策としての減税は考えていない」「インボイスは来年10月からの実施を予定し、中止は考えていない」などの回答に終始しました。
参加者は「物価高騰の影響で、今年すでに材料費値上げが3回あり、利益を削って対応している。消費税を減税してほしい」「コロナ禍で客足が戻らない中、インボイスで実務と税負担を迫られたら、商売を続けていけない」などと訴え。
省側が「簡易課税を選択すればいい」「消費者相手の事業に影響はない」と述べたことに対し、事業者の準備状況や影響などの検証を改めて行うことを求め、「インボイス実施は中止に」「税制で商売をつぶすな」と強く要請しました。
「市民に寄り添う政策を」 11・6に呼応 福岡・直鞍民商など 市民アピール集会
全中連の「11・6大集会」に呼応して福岡県直方市ではJR直方駅前にある車寄せ広場で「物価高騰対策、消費税減税とインボイス中止を求める市民アピール集会」を開催。党派を超え、70人が参加しました。主催は、直鞍民主商工会(民商)も参加する消費税廃止直鞍各界連絡会や直鞍革新懇、直鞍市民連合などで構成する「11・5市民アピール実行委員会」(代表=渡邉敦史弁護士)。市民の声を反映しようとしない岸田自公政権に怒りの声を上げました。
立憲野党から日本共産党筑豊地区委員会の新井高雄地区委員長、社会民主党直鞍総支部の太田信幸幹事、れいわ新選組の大島九州男元参院議員が激励に駆け付け、消費税減税・インボイス中止などに背を向ける政権を厳しく批判し、市民に寄り添った政策転換を訴えました。
市民のリレートークでは、介護職場や建設現場で働く人たち、婦人がマイクを握り、民商からは前原えり子副会長が発言し、コロナ禍と物価高騰での自営業者の経営の厳しさを告発。「消費税減税とインボイス中止のため共に頑張りましょう!」と呼び掛けました。
この日は「五日市」の大売り出しで駅前は大にぎわい。集会後のデモ行進で、買い物客や商店主に「消費税減税、インボイス中止」を訴え。シール投票では消費税を「廃止して」に75人中66人が投票。市民の生活の厳しさが浮き彫りになりました。
約10万人分の署名を提出
94人が参加し、9万8037人分の署名を提出。全商連の藤川隆広副会長があいさつし「消費税インボイスの実施中止や延期を求める声が業界や税理士団体など、ますます大きくなり、政府や与党内も揺れている」と指摘。「消費税の不公平性を追及し、インボイス中止を」と呼び掛けました。
日本共産党の宮本徹衆院議員が連帯あいさつ。「インボイスを中止に追い込むため、今が頑張り時だ」と激励しました。
「道内の5自治体で、インボイス実施中止・延期の意見書が採択」(北海道)、「駅で客待ちをする個人タクシー運転手20人と、商工新聞(10月31日号1面)で対話が弾んだ」(愛知)などと報告。岡崎民人事務局長が「省庁交渉や国会議員要請で切実な実態を伝え、要求実現を迫り、議員の対応を地元で知らせよう」と提起しました。
インボイス反対で共闘 議員要請
「消費税・インボイス制度の実施中止を求める請願」「中小業者の支援に関する要請書」などを携え、地元選出の国会議員らに要請しました。
北海道の参加者は、松木けんこう衆院議員(立民)と20分ほど懇談。「消費税引き下げやインボイス中止は大いに賛同する。署名も紹介議員になる」と快諾してくれました。岩渕友参院議員(共産)は、清掃や中古車販売の中小業者の実情に耳を傾け、「インボイス中止と消費税減税へ、頑張りましょう」と激励。
愛知県の参加者は、共産党の井上哲士参院議員、本村伸子衆院議員らを訪問。井上議員は「野党共闘で、インボイス反対のヒアリングを行う」と述べ、業者支援で意見交換しました。
「インボイスは反対」などと応じる立民の秘書が目立ち、「紹介議員になる」と答えた、れいわ秘書もいました。
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