各地の民主商工会(民商)は「新型コロナ感染で事業主だけに国民健康保険(国保)の傷病手当がないのは、おかしい」と声を上げ、事業主にも傷病手当等を実施する自治体が広がっています(表)。その一つ、岩手県陸前高田市の傷病給付金を活用した陸前高田民商の村上優一会長=漁業=のケースを紹介します。
8月末に新型コロナウイルスにかかった村上さん。体調が回復し始めた9月16日に民商の菅原正弘事務局長に相談し、「事業主でも受け取れる傷病給付金がある」と教わり、その日のうちに市役所で申請を済ませました。「保健課の職員が制度の内容や申請書の書き方を丁寧に教えてくれ、その場で申請できたほど簡単だった。審査を経て、新型コロナウイルス感染症対策国民健康保険(国保)事業者傷病給付金2万1000円が給付された」と言います。「私のように、制度を知らない仲間は多いと思う。感染した仲間には電話をかけて活用を呼び掛けています」
村上さんは発熱やせきの症状に苦しみ、保健所の指導を受けながら10日間、自宅で療養しました。「その間は海に出られず、収入はゼロなので不安だった。傷病給付金は1日3千円で、療養し始めた当初3日間を除く7日分が給付された。全商連共済会の入院見舞金や生命保険の給付も合わせて、まとまった金額になったので、本当に助かった」と一安心しています。
市保健課は、事業者傷病給付金を創設した経緯を「国の傷病手当金は事業主が対象外なので、戸羽太市長から『事業主が申請できる制度はないか?』と問われ、職員が要綱を見直し、2020年5月に完成させた。財源は国保の財政調整基金を使い、20年1月までさかのぼって申請できるようにした」と説明。
日本共産党の伊勢純市議は「東日本大震災以降、『住民の困りごとを解決しよう』と市長をはじめ、議員や職員が一丸となって住宅再建などの支援策を作ってきた。コロナ禍でも、商政課は1次産業で働く人にアンケートを取って、支援制度を作り、一人も取り残さないよう全事業者に郵送して知らせてきた。民商が活用を呼び掛けてくれ、助かります」と述べています。