全国商工団体連合会(全商連)は9月29日、国税庁ヒアリングを行い、インボイス発行事業者公表サイトの運用についてただしました。
全商連はデータ一括ダウンロードについて見直しがされた点を確認。庁側は「さまざまなご意見が寄せられ、誰でも一覧でダウンロードできないようにした」とし、9月26日から「個人の全件データファイルに限り、個人事業者の氏名、屋号、通称・旧姓など10項目を削除した」と説明しました。一方で、「インボイス対応の会計ソフト利用者に対しては引き続き、全ての登録情報を提供している」としました。
全商連の牧伸人常任理事は「番号を大量に取り扱うろうえい企業などから情報漏洩が起きかねない」と懸念を伝え、個人情報保護の観点から問題が残っていることを指摘しました。
取引先からインボイス登録を求められ、応じない場合に消費税分を値引きされた場合の見解をただすと、庁側は「独占禁止法に違反する恐れがある」としました。
【解説】「本名バレ」に一定歯止め 情報漏洩の危険性残る
今回、国税庁が個人の情報を削除したのは、本店または事業所の①所在地②所在地都道府県コード③所在地市区町村コード④日本語(カナ)⑤氏名または名称、資産譲渡(商品や製品の販売)に係る事業所などの⑥ 所在地⑦所在地都道府県コード⑧所在地市区町村コード⑨主たる屋号⑩通称・旧姓―の10項目です。法人の情報は④~⑧の項目が提供され、全件一括ダウンロードができます。
これまで同サイトでは、登録事業者の登録番号を入力すれば、法人の場合は法人名や事業所の所在地、個人の場合は本名が公表され、その情報は全件一括でダウンロードができ、商用利用も可能でした。
全国商工団体連合会(全商連)は、登録事業者の情報を営利目的のITやソフトウェアなどの企業に利用させることを批判し、国際比較の調査(国会図書館調べ)なども示して「個人情報がだだ漏れになる日本のインボイス事業者公表サイトは諸外国に比べてもあまりにも異常」と問題にしていました(9月5日号既報)。
税理士やフリーランス、俳優、アニメ関係者などを組織する6団体も「インボイス制度の個人情報の公表・商用利用に抗議する声明文」を発表し、「フリーランス・個人事業主のプライバシーを侵害する国税庁の本件措置に強く抗議するとともに、かかる方針を直ちに撤回し見直すこと」を求めていました。
同庁が今回、個人の情報提供を見直したのは、「インボイス制度で“本名バレ”する」という批判の高まりに押されたものです。
しかし、同サイトの「登録番号を検索」「ダウンロードWeb―API」では「登録番号指定」(まとめて最大10件)、「取得期間指定」(最大50日)、「登録番号と日付指定」の三つの機能で、10項目を含めた情報がダウンロードできるようになっており、情報が漏洩する危険性は残されています。
現在、登録事業者数は99万4317件です(8月末現在)。現在、課税事業者は315万者、フリーランス1557万人のうち事業者との取引があるのは853万人と推定され、合わせて1168万者のうち、登録事業者数は8・5%ほどに過ぎません。
来年10月1日の実施予定まであと1年と迫っていますが、自治体の意見書採択も大きく広がっています。実施中止・延期を求める世論と運動をさらに広げることが必要です。